「特急ソニック」

 私の大好きな列車がJR九州「特急ソニック」です。もちろん水戸岡鋭治先生(ドーンデザイン研究所)のデザインによる大胆不敵な内外観の造形・色彩、その型破りな仕掛けで人々の注目を浴びた名列車です。「ゆとり、やさしさ、楽しさ、遊び心」をコンセプトに遊園地のような面白さを思いっきり表現した電車です。水戸岡先生は「日豊本線のイメージを変えるために、いまだかつて見たことのない車両」をデザインしようとしました。心地よい上品な派手さのあるデザインです。特急「ソニック」は、もともと日豊本線を走る特急で「にちりん」号を名乗っていましたが、1995年(平成7年)3月18日よりの883系のデビューに合わせ、883系運転の特急のみ「ソニックにちりん」号と名付けられました。九州各地の道路網が次第に整備されていく中で、1996年には福岡・大分間も高速道路で結ばれることになっていました。それに対抗するために、いち早くJR九州で新型車両が導入されたのです。1997年(平成9年)3月22日のダイヤ改正から、博多~大分間の特急が車両の区別なく「ソニック」号と改称し、「にちりん」号とは別系統の特急列車となりました。「鉄道友の会」が選定する「ブルーリボン賞」をはじめ、「グッドデザイン賞」「ブルネル賞」も受賞している名列車です。現在は日豊本線博多―大分間を30分間隔(32往復)で発着しています。日豊本線には、現在は885系の「白いソニック」も運行していますが(かつての特急「かもめ」の車両です)、私は、883系のこちらの青い電車が好きです(少し車両が古くなってはいますが)。昨年別府温泉に行った時も、往復この「特急ソニック」を利用しました。

 100%全て完全にオリジナルのプロダクトデザインです。時間と手間を惜しまず、ハンドルひとつ、ビス一本まで新しくデザインしたのですから、「ここまでやるか」とみんなに驚いてもらえる列車になったと自負しておられます。「ここまでしかやらない」と、それまでのやり方にこだわる人たちからは大きな反発・抵抗を受けましたが、水戸岡先生は押し切っておられます。

 ブルーの車体は軽量ステンレス製で、昆虫のバッタを思わせる先頭部はメタリックの塗装。実にかっこいい。車内は、乗降口と客室の間のガラス張りにした仕切り壁(写真上、本邦初で車両メーカーからは反発を受けた)が、開放的な空間を創出しているほか、愛称「ワンダーエクスプレス」の名前の通り、ネズミのキャラクターの耳を連想させるヘッドレストがついた座席が印象的です。床には天然木が使われています。荷棚も飛行機のような「ハットラック方式」です。半室構造のグリーン客車の運転席後部とグリーン客室の間には、楕円形のフリースペースの「パノラマキャビン」を設けて、そこの床、シート、テーブルを木製にしました。トイレの手洗いの天板にも木を使いました。モダンな乗降口も異彩を放っていますね。九州初の、そして営業用交流電車としては最初の振り子電車で、最高運転速度は130キロです。私は何度も何度も乗っている大好きな電車です。

dsc01301 私は西村京太郎先生の大ファンで、そのテレビドラマは全て録画して保存していますが、 最近、西村京太郎原作・渡瀬恒彦主演TBS系「十津川警部」シリーズ第44弾「特急ソニック殺人事件」が再放送されました。学校の授業も全て終わり、のんびりとちょっと時間もあったので興味深く見ました。

 謎に包まれたDVDが、連続殺人事件を呼ぶドラマです。宅配便の配達員が盗み見た「アイドルZ」のDVDには、アイドルどころか、「特急ソニック18号」や渡船を乗り継いで、北九州空港から洞海湾工業団地まで移動する行程と、見知らぬ男の顔が写っていました。それは殺人指令の画像だったのです。その数日後、DVDに映っていた男が現実に工業団地で射殺されます。一緒にDVDを見た友人も、東京の板橋で射殺されます。怖くなった配達員が警察に駆け込み、十津川警部らが捜査を開始して、九州へ向かいました。十津川は北九州空港で、暴漢に襲われた女性を偶然に救います。この女性は市議会議員の妻でした。真実を知るはずのDVDを発送した「小倉マーメード商会」の社長は、事件との関わりを完全否定。容疑者も、首を吊って発見されます。しかし、十津川警部は会社社長と最初に殺害された男、そして市議会議員が、偶然にもそれぞれ十年前に大きな転機を迎えていたことに疑問を持ちます。一方、亀井刑事はわずかな手掛かりから、十年前の意外な事実をつかみます。事件の関係者に共通する10年前の出来事と、事件の真相とは!?グイグイと引き込まれていく傑作です。

 ここで、私は一つ素朴な疑問が湧きました。看板タイトルにある「特急ソニック」は、バスや渡し船と同じ移動手段の1つでしかないという登場です。「特急ソニック」が今回のドラマに何の関係があるというのでしょうか?「特急ソニック」がドラマの中に出てきたのは、冒頭の白石に送った道案内のDVDの中、ほんの数分だけです(小倉から戸畑までは約5分)。車内で何一つ殺人事件も起きていません。別に「小倉殺人事件」でも「北九州殺人事件」でも「北九州渡し船殺人事件」でもよかったみたいです。ただ地元を走る特急列車名を小説のタイトルに据えることで、間違いなくその地域のベストセラーが狙えるというお家の事情だけで、タイトルがつけられたような作品でした。私はこの特急列車が大好きなので、もっともっと車内の様子が描かれていて欲しかったと思います。外観、内観ともに、それぐらい取り上げるネタに事欠かない素晴らしい電車です。『鉄道ジャーナル』1月号(2024年)で、「ソニック街道2024」としてソニックの歴史特集が組まれました。♥♥♥

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