大激戦と言われたアメリカ大統領選挙戦で(あっけなくトランプの圧勝でした)、カマラ・ハリス候補が相手のトランプ候補を批判して、“increasingly unstable”(ますます不安定に)とか“increasingly unhinged”(ますます錯乱して)とこき下ろしているのを聞いて、increasinglyに関する懐かしい思い出が蘇ってきました。
副詞 increasingly(ますます)は良い意味で使われる?それとも悪い意味で使われるのか?に関してはチョットした思い出があります。私がまだ30代の時に、Backlundという人の研究書で、「increasinglyは悪い意味で使われることが普通」という指摘に出会いました。本当にそうだろうか?と好奇心が湧いてきて、いろいろと調べてみてまとめてみたんです(「Increasinglyの語法」『研究紀要』第14号 島根県立松江南高等学校、1986年)。なるほど確かに、その当時読んでいたアメリカの新聞・雑誌などでは、マイナスの意味の単語と共起することが多かったように記憶しています。
『ライトハウス英和辞典』(研究社)の編集作業の中で、イギリス英語の立場からR.イルソン博士にこのことを伺ってみました。すると「そんなことはない。increasingly goodもincreasingly badもどちらも普通」との反応でした。一方、D.ボリンジャー博士は、アメリカ英語の観点から、次のような観察を示されたのです。「下の英文では、bの方がより普通。aの場合にはmore and moreなどを使いたく思う。ただ、英米差があるのかもしれないが…」と。
a. I’m increasingly delighted with his performance.
b. I’m increasingly dissatisfied with his performance.
このことを踏まえて、『ライトハウス英和辞典』(研究社)が初めてこのことを【語法】注記したのですが、主幹の竹林 滋先生(東京外国語大学名誉教授)のご判断で、今では削られています。現在では『グランドセンチュリー英和辞典』(三省堂)だけが「良くない意味に使う」と注記しています。機会があれば、大規模な語法調査を実施してみたく思っています。今なら大規模コーパスが利用できるので、正確な語法の実態が浮かび上がってくるだろうと思っています。良い意味、悪い意味どちらにも使うことが可能な語ですが、私は今でも悪い意味に使う方がしっくりくるんです。
ChatGPTによれば、次の様にありました。
「increasingly(増加して)」は、基本的には中立的な意味を持ちます。その意味は、何かが時間の経過とともに増加している、拡大している、または強化されていることを示します。そのため、良い意味でも悪い意味でも使用されることがあります。ChatGTPではこんな用例を挙げてくれました。
◎良い意味で使用される例:
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“She is increasingly confident in her abilities.”(彼女はますます自分の能力に自信を持っています。)
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“There is an increasingly positive outlook on the economy.”(経済に対する見方がますますポジティブになっています。)
◎悪い意味で使用される例:
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“Crime rates are increasingly becoming a concern in this area.”(犯罪率がこの地域でますます問題になっています。)
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“He is increasingly isolated from his friends and family.”(彼はますます友人や家族から孤立しています。)


