ムダ・ムラ・ムリ=「ダラリの法則」

 ここに、戦争中の軍人の命令の仕方がいかにバカバカしいものだったかを示すエピソードがあります。軍属の徴用工たちを集めて、軍曹殿が「ここを掘れ」という命令だけを下して、あっちへ行ってしまいました。数時間して、見回りにきて、首をかしげながら、そこら辺を歩き回って、やがてまた行ってしまいます。翌日も同じような情景を繰り返して午後になりました。相変わらず首をかしげて「おかしいなあ」とつぶやいている軍曹殿に、労働者の一人がたまりかねて、おそるおそる、「いったい私たちは何のためにここを掘っているのですか?」と聞いたら、「たしかにここいらにドカンが埋まっているはずだが」と言います。労働者はあきれて、答えました。「ドカンならとっくに見つかったんですが、こわすと悪いと思って、よけて掘ってるんですよ」全く笑い話のような非能率な仕事の進め方ではありますね。

 「ダラリの法則」の話を教室で生徒によくします。何事も「ム・ム・ムは禁物です。英単語の暗記において、自分で声に出して読まずにいくら単語を目だけで覚えようとしても、それはムダな間違った努力でしかありません。覚えてもすぐに忘れてしまいます。日頃の勉強を疎かにして、試験前だけいくら一夜漬けで頑張ってみても、それはムラのある勉強にすぎず、本当の力は身につきません。島根県で最も成績の悪かった普通高校に転勤してみると、1年生入学時からあの『ジーニアス英和辞典』(大修館)を使っていて驚きました。基礎・基本もできていない生徒がこんなムリな辞典を使ってもおよそ力はつかないでしょう。力相応どころか、数段階も上のムリな教材をやっている生徒もいました。背伸びをせずに力相応に教材は選ばなければいけません。当時島根県で最も英語の成績が良かっ(過去形!)松江北高では、1年生に入学してから5月までは高校教科書は一切使わずに、中学校の復習をしっかりとやっていました(独自の「橋渡し教材」も開発しました。写真下⇒コチラに詳しい解説が)。そして使う教科書は難しいものではなく、とても薄くて簡単な基礎的なものを何度も繰り返して「反復学習」をしていました。これが学年が進むにつれて物を言ってくるのです。上で紹介した学校では、そんなことはお構いなしに、入学式が終わるとすぐに教科書に入っていました。明らかにムリがありました。これではいけないと思い、中学校の復習を50項目に絞ってまとめたものが、北高での「橋渡し教材」のたたき台になりました。ここら辺から変えていこうというのが「ダラリの法則」です。「ム・ム・ムを排除して、勉強の仕方、時間の使い方の改善を図る必要があります。

▲松江北高の中学校の復習教材

 どんな仕事をするにしても、何のためにするのかという目的と、それを達成するための手段があります。目的よりも手段の方が大きいのを「ムダ」と言います。100円の仕事に1,000円の日当を払って人を使うのは「ムダ」です。目的に対して手段の方が小さいのを「ムリ」と言います。飛び上がっても届かないリンゴを取るためには、どうしてもそれを補足する手段を使わなければいたずらな骨折り損でしかありません。仕事には一時的に「ムリ」をしなければならない時も確かにあります。徹夜して頑張らなければならない時もあります。しかし、そのような「ムリ」は決して長続きしません。「ムラ」というのは、この「ムダ」「ムリ」がアンバランスに不規則に混在する状態です。昼間ブラブラしていて夜は残業というのは、「ムラ」の甚だしいものです。人、物、お金、時間が常時平均してバランスよく働いている状態が最も能率がよいのです。ムダ―ムリ―ムラ三ム追放」は、わが国の能率学の草分けで産業能率短大の創立者・上野陽一先生が唱えたことでした。♥♥♥

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