stay woke

      最近、マスメディアでwokeというスラング表現をよく見るようになりました。“woke”は、「wake(動詞:目覚める・起きる)」の過去分詞形です。アフリカ系アメリカ人のコミュニティでは「awake(形容詞:目が覚めている・起きている)」の代わりに“woke”が使われています。ここから、「主に人種差別を始めとした社会問題について敏感でいる」ことを“woke”と表現するようになり、今では独立した形容詞・副詞として使われています。“woke”とは、「人種差別や社会問題に対して関心を持つこと、敏感でいること」を意味する英語スラングです。“stay woke”の形で使われ、「人種差別について関心を持ち続ける、社会正義に目覚めている」という意味になります。世界中で起こっている社会の不公正や不正義に意識を高く持ち、声を上げていくことが、今私たちに求められています。

The race riots that happen in Europe and the United States feel like somebody else’s business, but we all have to stay woke.(欧米で起きてる人種差別の暴動って、なんか他人事のような気がしちゃうけど、俺たちもみんな関心を持つべきだよな)

 「見えない差別や偏見のコードにも神経を研ぎ澄ましていること」を意味します。日本語の「意識が高い」「意識が高い人たち」といった表現の意味するところに近く、より挑発的なニュアンスが感じられます。

  少しこの表現の歴史に歴史を振り返ってみたいと思います。⇒詳しくはコチラをご覧ください

 「ウォーク」(woke)という表現は、1920年代前後から黒人の間で用いられ、1938年に発表された黒人ミュージシャン、レッドベリーの楽曲「スコッツボロ・ボーイズ」の最後に出てくる「目を覚ましたまま、彼らの目を開いたままにしておくのがベストだ」(”best stay woke, keep their eyes open”)というフレーズに直接的な起源を求める向きもあります。この曲は、1931年にアーカンソー州スコッツボロで黒人のティーンエイジャー9人が白人女性2人をレイプした罪に問われたことへのプロテストソングです。奴隷解放から70年近く経っても黒人への差別や偏見が執拗に続いていましたが、社会に潜む見えないコードへの警戒を怠るな、といったメッセージがそこには込められていました。

画像1: 「woke/ウォーク」ってどういう意味?

 古くは1940年代に遡り、1970年代にはアメリカの戯曲のセリフで使われるなど、徐々に市民権を得ていきました。“stay woke”というフレーズは、2008年のエリカ・バドゥ(Erykah Badu) の曲「マスター・ティーチャー」(Master Teacher)の中で、I stay wokeというフレーズを使ったことで一般にも浸透したとみられています。それがSNSで爆発的に使われ始めたのは、黒人の人権運動「ブラック・ライヴズ・マター」(Black Lives Matter)が過熱していた2014年のことです。全米で注目を浴びる契機になったのは、2014年にミズーリ州ファーガソンで起きた黒人青年・マイケル・ブラウン(Michael Brown)射殺事件。当時18歳だったブラウンさんは、丸腰であったにもかかわらず、白人警官によって射殺さました。wokeという言葉は、社会正義を追求する態度を示すポジティブな表現として、性差別や人種差別、環境問題などに敏感であることを表現します。アフリカ系アメリカ人が直面している不公平や人種差別に対して「目覚める」ことの重要性が強調され、しっかり認識してアクションを起こそうという意味で、“stay woke”というフレーズがツイートされ始め、それが他の事例にも使われるようになりました。イギリスでは、Black Lives Matter運動までは、“woke”という語はほとんど知られていませんでした。この“woke”OEDに追加されたのは2017年のことで、“being ‘aware’ or ‘well-informed’ in a political or cultural sense”と定義されました。ソーシャルメディアを中心にwokeから生まれた名詞Wokenessがメディアで多用されるようになりました。

 一方、Wokeismという新語が台頭してきました。保守的な人たちが進歩派を攻撃する時に使う言葉です。黒人が苦しんできた人種差別の歴史を、子どもたちに性格に伝えるべきだとする考えを、保守の一部はWokeism(やりすぎなWoke意識)だとして批判します。さらに、黒人が奴隷として苦難の道を歩いたことを題材にする書籍は、白人の子どもにとって愉快ではないので、図書館から除外するべきという主張さえするのです。アメリカの南部を中心に、政治・教育の場で、進歩派と保守派の対立はWoke/ Wokeismをもとにして、ますます激しくなりそうです。――旦 英夫『米語ウォッチ』(PHPエディターズグループ、2024年7月)

 「意識の高いやつら」といった感じでwokeがポジティブに使われることよりも、否定的な意味合いで用いられることも多く目に付くようになりました。ポジティブな意味でwokeが使われているケースを探すのがちょっと難しいぐらいです。保守派や銃規制反対派などの中には「社会的不公正、人種差別、性差別などに対して過度に意識が高すぎる」ことに反感を抱く人もいるのです。過度に配慮された感じでの映画やドラマ、作品、政策などに対して“woke”とはっきりとネガティブな意味で呼ぶ傾向が強まっています。政治的な正しさや社会正義を求めるあまり、過激な発言や提唱をする人々を揶揄するために、本来の意味ではなく「先進的だと気取って過激なことを言ったりやったりする危ない人」といったニュアンスでメディアやSNS上で使われています。♥♥♥

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