両開き・片開きドア

 日本の通勤電車のドア幅は、短い時間で大勢の乗客を乗り降りさせるために特急車両などより広く、1両あたりのドア数も多くなっています。また、新幹線や特急列車のドアは1枚の扉が片方に開く「片開き」なのに対し、JRの通勤電車私鉄地下鉄のドアは2枚の扉が中央から左右両方に開く「両開き」の構造が主流となっています。今日はこのドアの問題を取り上げます。

▲境線「ねこ娘列車」は「片開き」

 昔の電車のドアは「片開き式」ばかりでしたが、1960年代、通勤電車を中心に「両開き式」が普及しました。むろん、朝夕の混雑に対応するためです。高度成長期は、通勤電車が今以上に混雑し、「片開き」のドアでは、降りきれない人や閉まるドアにはさまれる人などが続出していました。そこで、「両開き式」が導入されたのです。中央から左右に開くため、乗降可能なスペースが広がり、開閉時間も「片開き式」の約半分に短縮されました。その分、乗降をめぐるトラブルが多少とも少なくなりました。さらには、乗降に時間がかからなくなった分、停車時間を短くできたこともあり、過密ダイヤに対応するためにも、「両開き式」が普及されることになったのでした。駅での停車時間を1秒でも短縮したい都市部の路線には欠かせない構造です。

▲通勤電車「Urara」も両開き式

▲山陰線のキハ47も両開き

 「両開きドア」の先駆けとなったのは、1954(昭和29)年に登場した営団地下鉄(現・東京メトロ)300形や1957(昭和32)年に登場した国鉄101系などで、以降の通勤電車は両開きが多勢を占めるようになります。通勤電車では、片開きよりも両開きにして乗降口を広くすれば、乗降時間が短くなり有利だということはすでに戦前から理解されていました。鉄道省は1941(昭和16)年に両開き3ドアのサハ75021を試作しています。しかしこのサハ75021は、1か所のドアに2台のドアエンジンを必要とするもので、左右の戸締めの同期が取れず動作が不安定でした。保守に手間がかかるばかりでなく車両価格も割高になってしまうことから、1両の試作だけで終わっています。

 戦後、首都圏の混雑が増してくると、再び両開きドアの導入が検討されます。前出の国鉄101系はサハ75021とは異なり、ドアエンジン1台で2枚の扉を操作することを可能としました。しかしこのドアは戸閉めの際、一気に勢いよくバタンと閉まり、現代の感覚だとやや恐怖を感じる閉まり方でした。変化が起きたのは101系登場から2年後、1959(昭和34)年に西武鉄道が451系に搭載した両開きドアでした。このドアはST式戸締機構といい、2の扉を鴨居の中に設置したベルトに連結し、1台のドアエンジンで2枚を完全に同期させつつ、ベルト駆動なのでドアの閉まり方もある程度調整ができるという優れたシステムでした。西武鉄道はこのシステムを、モーターや台車などの技術と引き換えに、国鉄へ提供したのです。そのためST式戸締機構西武鉄道の車両だけでなく、103系以降の国鉄電車や各私鉄の車両にも採用され、通勤電車の両開きドア化が一気に進むこととなったのです。

 標準的な両開きドアの幅は1300mm。この広さは大人3人が一度に乗り降りできる幅なので、4ドア車であれば1両当たり12人が一度に乗り降りできる計算です。一方で片開きの場合、ドア幅はおおむね1100mm程度。この場合は大人2名となり、4ドアにしても一度に8人しか乗り降りできません。多くの客の乗降がある駅ではこの差が停車時間に大きく影響してくるため、都市部の通勤電車はほぼ全てが両開きドアとなったわけです。

◆両開きドア
<メリット>                
●停車時間(乗降時間)を短縮できる。         
●開閉にかかる時間が短く済む。
●ベビーカーや車椅子も通りやすい。
●大都市圏の通勤電車に適している。
<デメリット>
●座席を配置できる面積が狭くなる。

◆片開きドア
<メリット>
●車体構造を簡素化しやすい。
●車内のスペースを広く使える。⇒座席数を多く確保したい長距離列車に向いている。
●小型車両や狭い車体に採用しやすい。
●保守が比較的容易な場合がある。
<デメリット>
●一度に通れる人数が少なく、乗降に時間がかかりやすい。
●混雑路線にはあまり向かない。

 このように、鉄道車両のドアは、用途や運用地域によってタイプや数が決定されます。最近は車両の標準化が進んではいるものの、それでもなお、ドアの枚数や形などは地域や用途によって差が生まれています。日本では現在、新造される通勤電車のほとんどが両開きドアです。これは、都市部では短時間で多くの乗客が乗り降りできることが重視されるためです。一方、片開きドアは比較的少ない地方路線や、車体幅が限られる車両で現在も使われています。♥♥♥

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