間違いを間違えない

プロ初先発の井上温大投手が力投するも、打線の援護なく初勝利ならず - スポーツナビ

 対中日戦の正念場で、巨人の井上温大投手(いのうえはると、25歳)はいつにも増して冷静でした。6回2死満塁、リードはわずか1点。昨年までの井上投手ならこういった場面で不用意な失投で一発を浴び、阿部慎之介監督から苦言を呈されていました。「とにかく低めを振らせて、何か起こそうと」。外角低めのフォークで石川昂のバットに空を切らせ、この日最大のピンチを切り抜け、堂々と、かつ、静かにマウンドを後にしました。7回3安打0封で今季7勝目。6月14日から続く連続無失点記録を20回1/3に伸ばしました。

 5種類の変化球を操る背番号97が、この日の武器に選んだのはスライダーでした。初回から積極的に投じています。「試合で投げていく中で、簡単に(ストライクが)入る球種だった。うまく使えて投手有利で勝負できた」。直球に次ぐ配球で相手をかわし、右打者がズラーッと6人並ぶ打線も「特に意識することなく」と、肝の据わった投球で8三振を奪いました。

 彼が大きく生まれ変わるきっかけがあったと言います。4敗目を喫した5月22日の阪神戦(東京D)。被安打10のうち右打者に8本を許し、4回を自己ワーストタイ7失点でKOされた後に、登板後向かった先は、定期的に指導を受けるメンタルトレーナーの元でした。みっちり話し合う中で、ある一つの考えに納得したと言います。「投球にも良い間違い方とそうでないものがある。たとえ調子が悪くても、なるべく良い間違いができるように」投げる球だけでなく、メンタル面も含めて強くなったと感じています。

 これまでは右打者の内角を突く球に完璧さを求めていました。失投を防ごうとするあまり、本来の腕の振りにならないこともありました。正解だけを求めるのではなく「良い間違いはOK」と発想を転換し、内角へボール気味にずれることを受け入れると気持ちがずいぶんと楽になり、真ん中寄りに入る投げミスが減りました。この日は4回2死から4番・細川の膝元をえぐる148キロ直球で見逃しK。「狙い所が増えた」。しっかり腕を振れるようになったことで、左腕はまた一つ強くなりました。2週連続の白星でチームトップの7勝目です。

 最近の井上投手の投球を見ていると、風格が出てきて、自信にみなぎっているように思えます。頼もしさを増す左腕にはマウンド上で変わらない姿勢も見られます。それが捕手のサインにほとんど首を振らないことです。〝イエスマン〟でありながら、勝負どころでは必殺仕事人のごとく、要求通りのボールを黙々と投げ込んできます。場面によってはサインに戸惑ったり、負担を感じたことはないのでしょうか?井上投手「首を振る時もあるけど、それは1年に数回あるかないかくらいのことだと思う」と振り返った上で、「キャッチャーも考えて出してるんで、それを首を振る根拠も別にこっちにはあんまりないですし。ベテランのピッチャー、勝ってるピッチャーは『そこではこの球はダメ』みたいにたぶん分かると思うんですけど、僕はまだキャッチャーがどういう意図でサインを出してるのかをくみ取って投げるのが大事だと思ってる」と明かしました。捕手への絶対の信頼を貫く投球スタイルは、この日も健在でした。今は巨人の左の大エースです。♥♥♥

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