イラク戦争デック

 私は世界中から珍しいトランプを趣味として集めていますが、こんなものまで持っています〔笑〕。 「Iraqi Most Wanted Playing Cards(イラク最重要指名手配者トランプ)」は、2003年のイラク戦米国防情報局(DIA)が使用した、非常に有名な軍用のトランプです。単なる記念品ではなく、サダム・フセイン政権の幹部52名を兵士が顔と名前で識別するための「人物識別カード」でした。正式名称は Personality Identification Playing Cards です。兵士が高価値標的(HUT)を現場で即座に認識できるようにするための実用的軍事ツールでした。

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 2003年4月、米国のDefense Intelligence Agency(DIA)などが作成し、イラクに派遣された米軍・連合軍の兵士に配布されました。1枚につき1人のイラク要人が掲載され、写真、氏名、役職、その他の識別情報が記載されています。兵士は現場で要人と遭遇しても顔を知らないことが多く、カードで記憶を補助するのが狙いです。兵士が娯楽として普段から持ち歩くトランプに情報を載せることで、自然に覚えられるように設計されました。オーストラリア戦争記念館にも実物が収蔵されており、2003年製、54枚構成として記録されています。特に面白いのが「カードの強さ」と人物の重要度です。普通のトランプでは、A > K > Q > J >10……という順位があります。このデックでは、それを利用して、重要人物ほど上位のカードに割り当てられました。例えば、

カード 人物
A♠ サダム・フセイン
A♥ ウダイ・フセイン(長男)
A♣ クサイ・フセイン(次男)
A♦ アビド・ハミド・マフムード(大統領秘書)
K♠ アリー・ハサン・アル=マジード(「ケミカル・アリー」)
8♠ ターリク・アジーズ(副首相)

という具合です。つまり、兵士がカードゲームをしているだけでも、「この顔は誰だったかな?」と自然に人物を覚えられるようになっていたわけです。スートとランクは重要度を表す階層構造となっていました。♠=最重要 ♥=第二階層 ♣=第三階層 ♦=第四階層 そして各スートのA(エース)最重要人物です。

 これがこのデックの一番面白いところです。兵士はトランプを持っていることが多く、ゲームをして時間を過ごします。そこで米軍は、「どうせ兵士がトランプを使うなら、そこに敵の重要人物の顔を載せてしまおう」と考えました。カードゲームをしながら、顔 → 名前 → 役職を繰り返し見ることになるため、人物識別の教材として非常に便利だったのです。米軍関係者も、トランプという身近な道具なら兵士が自然に人物を覚えられると説明しています。

 「ケミカル・アリー」も入っています。例えばK♠には、サダム・フセインの従兄弟で、化学兵器使用との関連から「Chemical Ali(ケミカル・アリー)」と呼ばれたアリー・ハサン・アル=マジードが掲載されています。この人物も後に拘束され、2010年に処刑されています。

 裏面も特徴的で、カードの裏面には、砂漠用迷彩(desert camouflage)を思わせる模様が使われています。したがって、一見すると普通のトランプですが、裏返すと軍用品らしいデザインになっているのです。

 100万個デック以上が兵士に配布されました。2003年4月11日、米国中央軍の記者会見で初公開されるや、すぐに人気が出て(初期ロットは数百個のみ)、米国プレイングカード社(USPC)が大量生産しました。ゲーム化された標的リストとして批判も多く、軍事プロパガンダの象徴として議論を呼んだトランプでした。❤❤❤

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