森本レオさん亡くなる

 俳優・ナレーターとして幅広く活躍した森本レオさんが、2026年9月4日に83歳で亡くなられました。所属事務所によると、原因不明の突然死だったと発表されています。

 1943年、名古屋市生まれ。日本大学芸術学部放送学科を卒業後、1967年にNHK名古屋のドラマ『高校生時代』で俳優としてデビューしました。翌1968年からは東海ラジオの深夜放送『ミッドナイト東海』のDJとして人気を集め、一躍知られるようになります。実は、森本さんは映画・テレビ俳優になる前に「ラジオの人」として人気を得たことが重要です。 

 本名は「森本治行」なのに、なぜ「レオ」なのでしょうか?これにはかなり面白い由来があります。ラジオの仕事をしていた頃、本人が一人称として「オレ」を使いたがったことがきっかけでした。ところが「オレ」をそのまま芸名にするのは具合が悪い。そこで「オレ」をひっくり返して「レオ」とした、というのが有名な話です。つまり、オレ → レオという、ちょっとした言葉遊びから生まれた芸名なのです。

 俳優としては、いわゆる「二枚目スター」とは少し違いました。長身で、細身で、どこか飄々としていて、力の抜けた雰囲気。このため、後には森本さんのようなタイプを表す言葉として、「脱力系」という表現が使われることもありました。代表的な映画には、『オレンジロード急行』『もう頬づえはつかない』『キッズ・リターン』などがあります。テレビドラマでも、『花へんろ』『愛という名のもとに』『ロングバケーション』『あぐり』『王様のレストラン』など、非常に多くの作品に出演して、名脇役として数々のヒット作に存在感を残しました。個人的には、故・西村京太郎先生の十津川警部シリーズのテレビドラマでの、ちょっとトボけたような西本刑事役が大好きでした。

 むしろ現在の若い世代まで含めると、俳優よりナレーターとしての印象のほうが強い人も多いことでしょう。森本さんの最大の武器は、あの声です。「低く、ゆっくり、柔らかい」しかも、単純に低いだけではありません。抑揚が激しくない、急がす感じがない。少し息が混じる、語尾が柔らかい、聞き手に話しかけるような感じがある、という独特の声でした。そのため、「森本レオがナレーションすると、普通の文章でも物語のように聞こえる」という現象が起きるのです。

 森本レオさんを語る上で外せないのが、『きかんしゃトーマス』です。日本語版で長年ナレーションを担当し、トーマスを見て育った世代にとっては、「きかんしゃトーマス=森本レオの声」というほど強烈な結びつきがあります。これは非常に興味深いことで、森本さん本人が画面に出ていなくても、声だけで番組そのものの世界観を作っていたわけです。近年ではテレビ朝日系の『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』などのナレーションでも知られていました。つまり森本さんは、

●1960年代 → ラジオDJ
●1970年代~ → 映画・テレビ俳優
●1980年代~ → ナレーターとしても存在感
●1990年代~2000年代 → ドラマ・映画・声の仕事
●その後 → ナレーション

という形で、半世紀以上にわたって活動してきた人なのです。

 森本レオさんの場合、実際の本人の性格とは別に、「優しい」「穏やか」「飄々としている」「怒らなそう」というイメージが非常に強く形成されました。これは俳優としての演技だけではなく、声質そのものがキャラクターになっていたからだと思います。今回の訃報を伝えた所属事務所も、森本さんについて「役者としてナレーターとして」多くの作品に携わったことへの感謝を述べています。

 森本さんは2010年に心筋梗塞で救急搬送され、入院したことがあります。その後は退院し、減塩生活などにも取り組んでいたとされています。ただし今回の死去について、所属事務所が発表した死因は「原因不明の突然死」です。過去の心筋梗塞と今回の死去を直接結びつける情報は、現時点では確認されていません。

 穏やかな人柄と唯一無二の語り口で、長年にわたり多くの人々に愛され親しまれた俳優さんでした。特に印象的なのは、普通の俳優というだけでなく、「あの独特の、ゆっくりとした柔らかい声そのものが一つの個性だった」という点でしょう。森本レオという人を一言で表すなら、私は、「俳優であると同時に、“声そのものがスターになった人”」と表現するのが一番近いと思います。例えば、顔を見なくても、「あ、この声は森本レオだ」と分かります。これは声優・ナレーターの世界でもかなり特別なことです。そして興味深いのは、『きかんしゃトーマス』のような子供向け番組から、『ロングバケーション』のような大人向けのテレビドラマ、さらにドキュメンタリーやバラエティーまで、非常に広い分野で同じ「森本レオの声」が受け入れられたことです。今回の訃報は、単なる「ベテラン俳優の死去」というより、昭和から平成、令和まで日本のテレビ・ラジオの「声」を支えた人物の一人が亡くなったという意味で、大きな出来事だと思います。❤❤❤

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