スゴイ英文法書『表現英文法』

 とんでもない文法書が出ました。田中茂範先生(慶應義塾大学教授)の『表現英文法』(コスモピア、1800円)です。ページ数680ページの大著でこのお値DSCN2951段!まさにお買い得でしょう。もうずいぶん前にお電話で、田中先生から直接この本をお書きになっていることをうかがっていましたので、今日書店で見つけたときには飛びついて買って帰り、拾い読みを始めました。とにかくすごいという言葉しか思いつきません。田中先生30年の研究の集大成、と帯に謳っていますが、数々の田中先生の著作をギュッと詰め込んだライフワークと言っても過言ではありません。「文法がわからないから英語ができない」 「文法を覚えても使えない」という、生徒たちの複雑な英文法への思いを何とかしてあげなければいけません。私の学生時代には、R.Quirk et al. A Grammar of Contemporary English(1972)が出て、文法の勉強が一新されたのを覚えています。さらに、1975年にR.Quirk & G.Leech, A Communicative Grammar of English(1975)でコミュニケーションのための英文法へと発展し、この本にも大きな衝撃を受けました。この田中先生の『表現英文法』は、そのときの衝撃にも等しい思いで読み進めています。

 田中先生は、従来の文法書の問題点を二つご指摘されます。ひとつは、文法の全体像田中茂範が欠如しているため、知識が断片バラバラのままで運用能力につながらないこと。もうひとつは、説明を読んでも「なるほど、わかった!」という納得の思いに至らないため、やっぱり文法は嫌いという結果に終わってしまうことです。本書は「文法はコミュニケーションの基盤である」という考えに立ち、英語話者の視点から、英文法を再構成し体系化したものです。高校生から英語教師まで幅広い層に向けた「使える文法書」の決定版となっています。

 無味乾燥な「覚える」から、絶対に忘れない「分かる」へが、全ページを貫くスタンスです。この本の特徴は以下の4つ。(1)文法項目の羅列や断片的な説明ではなく、全体像から体系化している。「名詞の文法=モノ的世界」、「動詞の文法=コト的世界」、「副詞の文法=状況世界」、「情報配列と構文」の四つに有機的なつながりをもたせ、従来の文法を全体から再構成・体系化しています。このような文法書は例がありません。

(2)学習者の「なぜ?」に答える説明がどの文法書よりも充実。説明のための説明ではなく、英語を使って表現する視点から、本質的な部分を解説しています。生徒たちに英語の面白さを体感してもらうには、こういう説明をしてあげるといいんですね。基本動詞や前置詞のコアイメージなど一目で理解でき、応用範囲の広い概念です。「なるほど!」の詰まった解説です。

(3)映画のワンシーン、小説の一節、スピーチや実況中継の一部など、生きた素材から例文を豊富に抽出して掲載。生の生きた英文が、説明の分かりやすさ、説得力に貢献しています。

(4)「読む」と「引く」を両立させるべく、索引は「質問」「日本語」「英語」の三種類も用意されて利用者の便を図っています。特に学習者がつまずきがちな質問149からも引ける「質問インデックス」は重宝ですね。たとえば、shouldに、義務・提案・推量・仮定の意味が出てくるのはなぜか、shallの本質的意味を押さえれば簡単に理解できます。可算名詞と不可算名詞の区別を、「見え方と数え方」で分かりやすく解説してあります。なぜ「ヒルトンホテル」にthe Hiltonとtheをつけるのか?分かりますか?

 読み進めていくと、今までバラバラだった英文法の断片的知識が、大きな枠組みの中に収斂していく実感があります。松江北高の英語科の先生方、授業に行く生徒たちに、早速薦めておきました。 この本お買い得ですよ。

 著作や論文でしか存じ上げず、一度お会いしたいと切望していた田中茂範先生に引き合わせてくださったのは、もうずいぶん前のことですが、ベネッセの前辞典企画室の竹内 新編集長でした。夢が叶い、胸をときめかせて東京・新宿オフィスに向かったのを、今でもはっきり覚えています。以来、ご著書を出されるたびに、お送りいただいて勉強させていただいています。いつの日か島根にも来ていただいて、みんなで先生を囲みたいと思っています。田中先生、この本スゴすぎます。

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