準備の大切さ

 ヤンキースで活躍しているイチロー選手は、小学校3年生から中学校3年生までの7年間「名古屋空港バッティングセンター」に毎日通いつめました。それも1年間363日通いつめています。休んだのはバッティングセンターが休業したお正月の2日間だけです。それどころか1日に2回行くことも珍しくなかったそうです。行くたびに平均で7~8ゲーム分を打ち続けたといいますから、1日200球と換算すると、7年間で51万球というとてつもない量になります。もちろん家でも素振りをしているはずですから、ものすごい量のバットスイングが、彼の活躍の背後には控えているということです。ぼくを天才と言う人がいますが、僕自身はそうは思いません。毎日血の滲むような練習を繰り返してきたから、今の僕があると思っています。」とインタビューに答えています。ある一定の物理的な時間の修業をしないと、決して一人前になることはないのです。最初から質の高いことはできないから、まずは量をこなさなければならない。量をこなしていると自然にその質が上がっていく。このことを、斎藤 孝先生(明治大学)「量質転化」という言葉を使っておられます。成功したければ、まず量をこなす。単純作業を疎かにしてはいけません。単純作業の積み重ねと継続があって初めて、質の高まりが実現し、成功への扉を押し開くことができるのです。実は、英語の勉強もこれとおんなじなんですが(どれぐらい単語を口を使って発音して覚えたか、どのくらいの英文に触れたか)、それを疎かにしている高校生が数多くいます。

 射撃の世界チャンピオンで高名なメンタル・トレーナーであるラリー・バッシャム氏によれば「大切なことは準備である。準備でほとんどが決まってしまう。準備がきちんとできたら、実際の行動は脳のオートマチック機能に任せたらいい」「引き金を引くことは誰でもできる。大事なのはそれまでの構えであり、それで9割9分決まる。それなのにほとんどの人が、引き金の引き方の練習ばかりしている。そうではなく、構えと準備に9割9分のエネルギーをそそぐのだ」だそうです。これは、イチロー選手の7年間の努力にも通じますね。先日「散歩のついでに富士山に登った人はいない」という言葉をご紹介しましたが、周到な準備をやって初めて大きな仕事ができるのです。

 全国から運動能力の高い学生ばかりが集まっている鹿屋体育大学で観察すると、一流の選手とそうでない選手との間には大きな違いがあると言います。一流選手は準備を入念に行い、結果にはそれほどこだわらない。表情一つ変えず淡々とプレーし、冷静に結果を受け止め、失敗を次のプレーに活かす心の余裕がある。一方、二流の選手は準備を疎かにして、結果だけに一喜一憂する、とのことでした。私も若いころはソフトテニスの監督を長く務めましたから、このことはよく分かります。ミスをして相棒に当たり散らかす、ひどいものはラケットを地面に投げつける、といったプレーをたくさん見てきました。そんな選手でトップの仲間入りを果たした選手はいませんでした。このことはずいぶんうるさく言ってきたつもりです。

 繰り返します。「散歩のついでに富士山に登った人はいない」のです。

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