英語研究室で、毎日ALTのエドワード先生(アメリカ・アリゾナ州出身)と話していると、英語の発見がいろいろあって楽しいんです。語感の鋭い彼からは、ずいぶんいろいろなことを教えていただきます。今日は、日本人の生徒がよく使う“So-so”という表現について、二人で話し合っていました。私個人は、”How are you ?”と聞かれて、“So-so.”と答える日本人高校生がとても気になっていました。本人は「まずまず、可もなく不可もなく」(=良くも悪くもない)という気持ちで答えていると思うのですが、私にはずいぶん違和感があります。たしかに英和辞典などにもそう書いてありますから、当然と言えば当然のことなんですが(英米の辞典を写しているだけのものが多いですから、これは至極当然のことかもしれません)。代表的なものを見ておきましょう。これらをそのまま和訳したのが「まずまず」という訳語です。
neither very good nor very bad = average : “How was the party?”―”Oh, so-so.” [Longman Dictionary of Contemporary English]
not particularly good or bad; average : “How are you feeling today?”―”So-so.”[Oxford Advanced Learner’s Dictionary of English]
エドワード先生は、辞書的には確かにそうなんだが、実際の自分の語感ではよくない意味で使うと、言われます。実際のネイティブの会話では、ニュアンスがかなり違って聞こえているということです。尊敬するデビッド・セイン先生の『日本人が「使いすぎる」英語』(PHP文庫、2012年)によれば、“So-so.”の正確なニュアンスは、「実は最悪の気分なんだけど、それを言うのもなんか気が引ける」といった感じなのです。したがって、思わず、“Oh what’s the matter?”(おや、どうかしたの?)“Why?”(どうして?)と聞き返したくなる言葉です。そもそも使用頻度の点でも、“So-so.”という表現は、日本人ほどよく使われる表現ではありませんし、「日常ではほとんど使わない」というネイティブ・スピーカーもいます。少なくとも、ネガティブなイメージの時や悪いときの感じに使われます。「よくなかった」「納得いかない」「不満が残る」などの場合ですね。エドワード先生の語感によれば、40:60で悪いイメージだとおっしゃいます。英語で“How are you?”に対して、“So-so.”と答えるときは、実は何か問題があるけれど、それをはっきりと言うのは憚られるような時なのです。例えば、会社の同僚に聞かれた ときに“So-so.”と答えた場合、二日酔いでちょっと具合が悪かったり、昨日恋人と別れただとか、交通事故で車が廃車になっただとか、或いはもっとシリアスな状況なのかもしれません。普通は、“Not bad”、”Not too bad”、”Fine”、”I’m all right”、”I’m okay”などと答えるのでしょう。このような“So-so.”の否定的なイメージを捉えた珍しい辞書が、Cambridge Advanced Learner’s Dictionary (Third Edition)です。
INFORMAL between average quality and low quality; not good or well : a so-so performance “How are you getting on with your new boss?”―”So-so.”