「負けないで」 作詞 坂井泉水
ふとした瞬間に 視線がぶつかる
幸運(しあわせ)のときめき 覚えているでしょ
パステルカラーの季節に恋した
あの日のように 輝いてる あなたでいてね
負けないで もう少し 最後まで 走り抜けて
どんなに 離れてても 心は そばにいるわ
追いかけて 遙かな夢を
何が起きたって ヘッチャラな顔して
どうにかなるサと おどけてみせるの
“今宵は私(わたくし)と一緒に踊りましょ”
今も そんなあなたが好きよ 忘れないで
負けないで ほらそこに
ゴールは近づいてる どんなに
離れてても 心はそばにいるわ
感じてね 見つめる瞳
負けないで もう少し 最後まで
走り抜けて どんなに 離れてても
心は そばにいるわ
追いかけて 遙かな夢を
負けないで ほらそこに
ゴールは近づいてる
どんなに 離れてても
心は そばにいるわ
感じてね 見つめる瞳
大震災・大災害が起こったときには、よくZARDの「負けないで」という歌が応援歌としてかかりますね。「負けるな、頑張れ!」という熱い思いが込められています。元々はフジテレビ系のドラマ「白鳥麗子でございます!」のエンディングテーマとして流れたものです。1994年には春の甲子園、第66回選抜高等学校野球大会の入場行進曲にも採用されたことがありました。日本テレビ系「24時間テレビ「愛は地球を救う」」のチャリティ・マラソンのゴール直前では、出演者全員での大合唱が定番になっていました。これだけ長い間に渡って、この曲が多くの人に愛され、歌い継がれてきた理由は一体何でしょうか?メロディーのポップさ、透明感のある彼女の歌声はもちろんですが、私は、故・坂井泉水(さかいいずみ)さんの書いた詩に、その大きな理由が隠されていると思っています。知らないうちに、“負けない”暗示をかけてもらっている不思議さがあります。彼女は粘って粘って推敲を重ねながら言葉を紡いでいました。私が尊敬している音楽評論家の小貫信昭さんが面白い観察をしておられましたね。
作詞家・坂井泉水の特色として、流行の言葉や外国語に逃げなかったことが挙げられる。もちろん時には英語のフレーズを使ったが、しかしそのことでワン・クッションを得て、さらに真意を伝わりやすくするための工夫でもあった。推理小説の女王・アガサ・クリスティは登場人物が纏う洋服のモードを、あえて具体的にはしなかったという。なので、彼女の小説は、いまも読み継がれている。坂井泉水の作風にも似たところを感じる。これが“スタンダード性”のひとつの理由かもしれない。
さて、このZARDの6枚目のシングル名曲「負けないで」が、2014年から高等学校英語の教科書『MY WAY English Communication II』(三省堂発行)に採用されています。初年度でも、全国約400の高等学校で採用されました。教科書の中ではLesson 7 「An Encouraging Song(元気がでる歌)」として、「負けないで」を紹介。Sakai became famous as a singer in the early 1990s. と記して、I have always treasured words from the bottom of my heart. I would like to send my messages to others through my music.(私はいつも心の底から歌詞を大切にしてきました。私の音楽を通してメッセージをみなさんに送りたいのです)という坂井さんの生前の言葉を紹介しています。1995年1月の阪神淡路大震災や、2011年3月の東日本大震災の際に多くの人々を励ましたこと、1994年には選抜高等学校野球大会の入場行進曲に採用されたこと、坂井さんが言葉にこだわり、制作に
全精力を注いだことなどが、何度も何度も書き直された直筆の歌詞とともに伝えられています(写真下)。発行元の三省堂は、題材の採用理由について、「約20年間も色あせることなく、今もって若者の間で、“人生の伴走歌”として歌い継がれてきています」と説明。「その秘密は何かと言いますと、坂井泉水さんが何度も何度も繰り返し繰り返し練り直して完成させた歌の歌詞にあります」「“ことば”そのものが持っている大きな計り知れない『魔法の力』に気づいてもらい、この多感で悩み多い高校時代を強く乗り切っていってもらいたい」との編集の思いを込めたとのことです。
さて、この「負けないで」という歌は、一般には上の教科書のように、人生の「応援歌」としての位置づけで歌われることが多いのですが、実は、作った坂井さん本人の意図とは全く異なるものでした。ここからが今日の私の課題です。「勝田ケ丘志学館」の生徒たちに、歌を聴いた上で、上の教科書の英文を速読してもらい、要点をまとめてもらいました。新しく始まる「共通テスト」では、特にこのような力が問われます。
負けないで もう少し 最後まで 走り抜けて
どんなに 離れてても 心は そばにいるわ
追いかけて 遙かな夢を