さだ・小田「たとえば」がCD化!

 大好きなさだまさしさんの、グレープ時代を含む通算46枚目(47年間の活動で)のオリジナルアルバムとなる『存在理由~Raison d’etre~』が、5月20日(水)に発売になりました。表題曲をはじめ、岩崎宏美「残したい花について」や、関ジャニ∞奇跡の人」など他アーティストへの提供曲のセルフカバーなど13曲が収録されます。さださんが、自身の“存在理由”を問うことをコンセプトに掲げた作品です。ジャケットには、さださんが手がけたイラストが使用されています(上写真)。「存在理由」と読めますか?「五番街」から発売日に届けていただいて、早速全曲聴きました。渾身のアルバムですので、後日詳しく取り上げようと思っています。

    でも、私が最も喜んでいるのは、このアルバムの中に、2007年放送のTBS「クリスマスの約束2007~そして今思うこと~」で、小田和正さんと共作した幻の作品「たとえば」が、初めて音源化されたことなんです。今日「五番街」から届けてもらい早速聞きました。毎年、さださんにこの曲のCD化をお願いしてきた者としては、実現してとても喜んでいます。思い出してみると、かつてグレープ(さだまさし・吉田政美)時代に、オフコース(小田和正・鈴木康博)と一緒に北海道をジョイント・コンサートして回ったとき、小田さんが、キミたちは『精霊流し』のヒット曲があるので、ボクたちが先に(前座で)やるからと言ったことに触れ、そんなことを言っても、ヒット曲ひとつじゃあ自分たちは何もできないからしゃべるしかない、オフコースはうまいから腹が立った〔笑〕、あとはもう笑いをとるしかない、と懐かしい思い出を披露していました。この番組の中では、小田さんの名曲「woh woh」を、さださんと小田さんが、二人でハモリながら歌い上げました。小田さんの追っかけコーラス・ハモリの魅力が、さださんの歌声に見事にはまった素晴らしい共演でした。

 2007年のクリスマスに放送されたTBS「クリスマスの約束」がきっかけで制作された、小田和正さんとの幻のコラボレーション音源(さだまさし作詞・小田和正作曲・TBS番組共演楽曲「たとえば」)です。ファンにとっては夢のようなコラボでした。しかし所属レコード会社の関係もあって、なかなかリリースされることはありませんでした。今回小田さんもさださんもTBSも「この曲をそのままにしておくのはダメだよね」ということになって、当時のテレビの音源を小田さんがリミックスし直し、それをさださんがさらにリミックスを重ねて完成させたのがこの曲です。小田さんにも「もっと良くなったね」と言ってもらいました。

      たとえば」
                 小田和正・さだまさし共作

話したいことが  幾つもある  あの頃の僕に会えたら
たとえば  迷いながら選んだ道の  辿り着く場所について
伝えたいことは  他にもある  あの頃の僕に会えたら
たとえば  信じていたことの正しさと  その過ちについて
それから不安を胸に映し  怯えたあの夜の闇も
たとえば  ありもしない夢に紛れて逃げたことも

あの頃の僕に告げたいのは
ひたすら  そこから  ひたすら  歩き続けること
あの頃の歩幅でいいから
ひたすら  ただ  ひたすら  生きてゆくこと

尋ねたいことが幾つもある  未来の僕に会えたら
たとえば  傷ついたり愛された  この命の重さや
尋ねたいことは他にもある  精一杯生きたかどうか
たとえば  奇跡的にめぐり会えた  愛しい人のことを

ここからの僕に言えることも
ひたすら  このまま  ひたすら  歩き続けること
今のままの歩幅でいいから
ひたすら  ただ  ひたすら  生きてゆくこと

ひとつだけ言えることは  全ては今日のために
たいせつなことはひとつだけ  全ては今日のために

話したいことが幾つもある  あの頃の僕に会えたら
話したいことが幾つもある  未来の僕に会えたら

 「クリスマスの約束」番組中で、2007年10月19日に、さださんが、崇拝する小田さんの事務所に打ち合わせにやって来たところが放送されました。あの頃の若かった自分に向けてメッセージを贈るのはどう?という話になったとき、小田さんがとても興味深いことを言っていました。あの頃の自分に、お前それでいいんだ、そのままでいいんだって声をかけてやりたい」と。出来上がった詞は、作詞家としてのさださんの面目躍如たるすごい詞です。その時の二人のやりとりが実に面白いので、再現してみましょう。

小田: 君は、その、アイディア的に、何か考えた?
さだ: みんな、おじさん達が元気が出るような歌がいいかなぁ、と思ったんですよね。僕らの世代っていうか。
小田: まぁ、結果的にそういう歌、なんだろうね。まぁ、時間無いから、基本的には、今日一日で曲も詩も作っちゃおう。
さだ: おぉー。やるんですかぁ。
小田: そうなんですよ。そうしたときに…。
さだ: 無茶だわ、それぇ。
小田: 結構、無茶だよね。
さだ: いやぁ、ほんとにー?

(作業場に移動)

小田: きっかけだけでも、二人でちょっと考えようか。
さだ: はい。そうしましょうよ。

小田さんギターでCコードを弾く。二人とも悩んだ表情。)

さだ: 誰かに捧げましょうよ。そうしたら、明解になりません?分かった。小田さんさぁ。俺もそうだけど、あの、デビューした頃の、自分に手紙書きません?
小田: あー。あ、いいかも知れないね。
さだ: もし、あの頃の俺に会えたら、伝えたいことがあると。
小田: 確かに、最近、あの頃の自分に会って、その、つっぱてる俺の話を聞いてみたいな、って思うことあるね。
さだ: あ、一つだけ、一つだけ言えること、っていうの探しません?
小田: あるいは、その、お前、そのままでいいと思う。
さだ: あぁ、それいいじゃないですか。

(二人背中を向けて、それぞれ作業。さださんは、ノートPCに向かい詩を、小田さんは、キーボードを弾いてメロディーを紡ぐ。)

【番組開始、制作途中の歌詞が映し出される】
(「たとえば信じたことの 正しさと過ちについて」の歌詞に、小田さんが、「その」を手で追加して、「たとえば 信じていたことの正しさと その過ちについて」
という歌詞に。)

さだ: 未来の自分に会いたくなったよ、みたいな展開にしましょうか。未来の自分と過去の自分をつなぐものじゃないですか。結局ね、今の自分って。

(あっという間に8時間が経っていました。)

小田: これは、逆にさぁ、聞きたいことが幾つかあるにしたら?
さだ: あぁ、いいねぇ、いいねぇ、いいねぇ。

さだ: あー、いいじゃーん。
小田: ちょっと鳥肌もんだね。

(ついに完成。さださんお帰り。小田さんは曲作りに励む。)

2007年11月15日 タッドポウル・スタジオでのリハーサル映像へ。その後、本番「クリスマスの約束」の会場での歌へと、舞台は続きます。

 さださんは高校生のとき、ノイローゼで眠れず、108時間眠らなかったことがありましたし、28歳のときに映画『長江』で28億、金利も入れると35億の借金を背負ったときが「怯えたあの夜の闇」でしょうか?幾度の三叉路を選んで来たさださんですが、ヴァイオリンをやめる決心をして、その後、グレープを経てソロになり、叩かれ続けた紆余曲折ある音楽人生。それが「迷いながら選んだ道の たどり着く場所」ということでしょうか。「あの頃の 歩幅でいいから」とは、走り疲れたら歩き、歩き疲れたら休めばいい、という哲学か。「ただひたすら 生きてゆくこと」とは、あたりまえに、ささやかでいいから、前のめりに生きたい、ということか?そんなことを思いながら、さだ・小田さんの詩、メロディー、歌声に魅せられました。さださんのコメントです。「本作「たとえば」は自分の生命や生きた道へのエールだ。決して後悔ではない」(ライナーズ・ノーツより)♥♥♥ 

 小田さんと初めて会ったのは1974年か75年頃だと記憶してます。僕も小田さんたちが出場したヤマハのライトミュージックコンテ宇土に出たこともあって、オフコースは憧れの存在でしたね。『クリスマスの約束』は何度も観てたので、声をかけてもらった時は“楽しみだなぁ”と思いました。そこで“一緒に曲を作りたい”と言われて、もちろん僕も歌作りをしている人間ですから、小田さんと一緒に歌作りをするのを、とても楽しみにしてました。が、いきなり『今から作ろう!ほれ、とりあえず詞を書いてみろ!』というノリには正直焦りましたね(笑)。いや、でも素晴らしい曲が出来ました。二人寄れば文殊の知恵ですなぁ。アッハハ。次回作は何時やりますか?この調子なら10日もあればアルバムができますなぁ(笑)。 ―小田和正会報「FAR EAST CAFE PRESS」Vol.354(2020年4月)

 

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