MKタクシー

 日本で「タクシー業界の風雲児」と呼ばれた兪奉植(ユ・ボンシク、日本名・青木定雄)元MKグループ会長は、2017年6月8日、88歳でお亡くなりになりました。慶尚南道南海(キョンサンナムド・ナムヘ)で生まれた兪元会長は、1943年に兄とともに玄海灘を渡り京都に定住しました。授業料を払えなくなり立命館大学を中退した後、ひょんなことからガソリンスタンドの経営を引き継ぎました。1960年にはタクシー10台、運転手24名でミナミタクシーを始め、1977年に桂タクシーを買収合併して両社の頭文字を取った「MKタクシー」を設立したのです。

 「MKタクシー」は「安くて親切なタクシー」の代名詞となりました。1976年に、運転手が「ありがとうございます」「お忘れ物ありませんか」など、4つの挨拶をきちんと言わなかったら、料金を受け取らないサービスを打ち出します。障害者を優先乗車させる制度を初めて導入した会社もMKでした。何より一時「他社より10%安い」と強調したほど価格競争力が優れていました。これを基にした「MKタクシー」の成功は、テレビ番組などを通じ韓国に紹介されたりもしました。在日同胞成功神話の象徴的人物の1人でした。1995年には米時事週刊誌「タイム」から「世界最高のサービス企業」に選ばれています。2019年には世界的な口コミサイト「tripadvisor」「エクセレンス認証」を取得しています。

 労使関係も模範的でした。「MKタクシー」は過去に日本で横行していた「神風タクシー」を防ぐために、ドライバーの生活安定を重視し、業界で初めて社宅を作り、タクシー1台ごとに収益を独自に管理する経営システムを導入したと「毎日新聞」は伝えました。彼は2003年に韓国で開かれた講演の途中で「MKタクシーが成功したのは絶えず顧客サービスと社員の福祉向上のために努力した結果」として労使共存を強調したりもしました。

 兪元会長は法廷争いまで行いながら、当局の規制に立ち向かったことでも有名です。1981年にはタクシー運賃の値上げ反対運動を起こし、翌年、運賃の値下げを申請。却下されると陸運局を相手取って大阪地方裁判所で争い、1985年に全面勝訴の判決を得ました。その後、1989年に運輸省と和解。1991年、天皇皇后両陛下に随伴する国務大臣の送迎車に選ばれています。1993年には10%の運賃値下げを断行しています。低価格タクシーの道を開いた青木氏は、「規制緩和の旗手」「タクシー業界の風雲児」と呼ばれました。この頃が、青木氏が最も輝いていた時期だったと言えるでしょう。「朝日新聞」兪元会長「国と闘争した規制緩和の旗手」と評しました。2004年には韓国政府から「国民勲章無窮花賞」を受けました。

 タクシーの運転手さんというのは、20時間も連続勤務で腰を痛める人も多い過酷な仕事です。ただ残念ながら、お客さんが乗っても、挨拶も交わさないままブスッとしたままで目的地まで連れて行く。そんな冷酷な運転手さんも多いと感じています。印象では、東京など大都市のタクシーに多いようです。そんな中で、お客様目線に立った素晴らしいサービスを提供してくれるのが「MKタクシー」です。

 既存事業者からは出てこなかったアイデアを次々と打ち出しました。また、同業のタクシーと比べて安価な運賃と、接客レベルの高さも伴い、「予約が多いタクシー会社」=「実働の乗車率が高く、効率的な経営ができている会社」と高く評価されています。しかしその一方では、独特の「社員教育などが非常に厳しいため」に(ベテラン乗務員でさえ、車のブレーキの踏み方から、荷物のトランクへの運び方、お客様の乗車のさせ方など、もう何年もやっている基本事項を繰り返しチェックされ、逐一指導される。朝から大声であいさつ、拍手する練習などかなり厳しい体制)、離職率の高さが問題となったりもしているようです。また、既存事業者や事業者統括団体などと摩擦が絶えないことから、「業界の和を乱す」というやっかみ半分の批判もあるようです。タクシー業界未経験者を採用するにあたり、研修は接客マナー中心となってしまっているため、肝心の運転技術不足、地理不案内等の指摘もあるようですね。社員が極めて長時間の労働を強いられている実態(ブラック)がある、という指摘も聞いたことがあります。また同社は、自分たちの会社をタクシー会社だと考えておらず、「一流のサービスを提供するサービス会社」と定義していて、同社経営陣への過去のインタビュー記事などでは、次のような発言が見られます:

「ありがとうございます。という言葉を言わないのは、社員側に問題があるわけではなく、経営側に問題がある。それは本人が悪いというより、それを教育しない管理側に問題がある」

「クレームに対しては管理者側がその引き起こした社員と一緒になって、一緒の血を、汗を流すというスタンスでないと、いくら表面だけ取り繕ってもダメだ」

「当社では最初の時点で、できる人とできない人をはっきりと分ける。できる人だけが次のステップに進めるようにし、自ら学んで進むという意識を身につけてもらう。なぜなら、歩合制だから。売上目標の設定であるとか、体調管理などのコントロールやマネジメントは、すべて自分でやらなければいけない」

 以前、私は札幌に講演会に出かけた際に、半日ほど時間が空いたので、札幌市内観光を思い立ちました。それでお願いしたのが「MK観光タクシー」です。地元のドライバーの方が高級車で、有名な観光名所だけでなく、穴場などもきめ細やかに案内してくれる、ということだったので、一度利用して自分で実体験してみようと思ったわけです。札幌市内外の、見所たっぷりの観光モデルコースが用意されています。もちろんお願いすればオリジナル観光コースも可能で、出発時間や希望の訪問地など自由に相談できます。この時も、私の好みや要望に合わせて、ドライバーさんが思い出に残るひとときをプロデュースしてくださいました。前日に丁寧な確認の電話、当日もホテル前までピカピカの車で迎えに来てもらい、出発しました。どうしても行きたかった場所をリクエストして、連れて行ってもらいました。本当に丁寧な接客で、時間が余ると、時間調整の訪問箇所をいろいろと便宜を図ってまでいただき、楽しい半日を過ごすことができました。穴場のお店で(北海道神宮)、ドライバーさんと一緒に美味しいお餅まで食べてしまいました。大満足でした。ありがとうございました。「さすがMK!」と感じたことでした。♥♥♥

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