江口さんの新松下本

 江口克彦(えぐちかつひこ)さんの新著『松下幸之助直伝 道をひらく経営』(方丈社、2026年4月)が出ました。早速取り寄せて読みましたが、仕事が停滞した時、困難に直面した時、どう考え、どう動くべきか。松下幸之助の傍らで薫陶を受けてきた著者が、若いリーダーへ贈る「成長と成功」のための考え方と生き方、自分を磨き、未来を切り拓く本質を説く珠玉の志50編が収録されています。

 「経営の神様」と言われた松下幸之助翁から、23年にわたり直接教えを受けた著者が、松下幸之助の経営哲学の真髄を、若手リーダーを念頭に置いて書き下ろした作品です。江口克彦さんは、23年間にわたり秘書として寄り添い、その思想を最も深く理解している「直弟子」の一人として知られています。

 チームや課を任されたばかりの若手社員は、日々の業務の中で停滞感や予期せぬ困難、人間関係の軋轢に直面し、理想と現実のギャップに悩んでいます。本書はそうした「現場の壁」にぶつかっている彼らに対し、松下幸之助の体験や言葉を、具体的かつ普遍的な行動指針として提示しています。本書に紹介した50項目は、その時々の対処方法ではなく、経営者として、職場の責任者として、また働く一人の人間としての心構えや考え方ばかりなので、全く輝きを失っていません。この一冊を読み終えた時、読者は目の前の問題に立ち向かう勇気と、自らの手で未来を切り拓く確信が得られるはずです。 

 江口氏は慶應義塾大学を卒業後、1963年に松下電器産業(現パナソニック)に入社しました。その後、PHP研究所へ異動し、松下幸之助氏の側近として頭角を現します。松下氏が亡くなるまでの約23年間、常に傍らでその教えを直接受けました。当時、経営が苦しかったPHP研究所松下氏の命を受けて立て直し、常務、専務を経て社長に就任しました。2010年には参議院議員に当選し、政治の場でも、松下氏が提唱した「地域主権(地域主権型道州制)」の実現に尽力しました。

 江口氏の最大の功績は、松下幸之助という稀代の経営者が何を考え、どう行動したかを言語化し、後世に伝えている点にあります。『松下幸之助 成功の金言』『上司の哲学』など、松下氏との対話から得た智慧をまとめた著書は100冊を超えます。さらには、松下政経塾の塾長代行を務めるなど、次世代のリーダー育成にも深く関わってきました。単なる伝記作家ではなく、「松下幸之助ならこの時どう判断するか?」という思考プロセスを熟知しているのが、江口氏の強みです。

 江口氏は、松下氏から学んだ教えのエッセンスを、以下のような言葉で表現することが多いようです。

「素直な心」

自分の私利私欲にとらわれず、ありのままに物事を見る素直な心こそが成功の根源である。

「熱意」

能力が多少劣っていても、誰にも負けない熱意があれば道は必ず開ける。

「人間大事」

経営とは「人間」を知ることであり、社員や顧客を「生かす」ことが商売の本質である。


 現在は、執筆活動や講演を通じて、経営者へのアドバイスやリーダーシップ教育を行っています。また、一般財団法人「東アジア共同体研究所」の理事を務めるなど、政治・経済の両面で発信を続けておられます。

 江口氏は、松下幸之助氏から「君、運を落としたらいかんよ」と日常的に言われていたそうです。これは単なる迷信ではなく、常に前向きな姿勢を保ち、周囲に感謝する心が「運」を呼び込むという、松下流の処世術を象徴する言葉です。松下幸之助の「経営哲学」を単なる学問ではなく、生きた実践知として学びたい場合は、江口克彦氏の著作が最も信頼できるソースの一つと言えます。私は彼の著作を片っ端から読み続けています。2月には江口さんの『松下幸之助の言葉80』(リベラル社)という金言集が出ています(写真下)。♥♥♥

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