「木で鼻をくくる」

 次の記述は、故・西村京太郎先生の近著『消えたトワイライトエクスプレス』(祥伝社文庫、2022年)からの引用です。この中の「木で鼻をくくったような」という日本語表現が気になりました。「人を冷淡にあしらう」「好意が感じられず無愛想な様子」「そっけない(=返事が簡単で冷たく聞こえる)」くらいの意味だと思います。冷たい態度・無愛想な表情・そっけない言葉遣い、の3点が重要です。英語で言えば、give a blunt[curt] answer, respond bluntlyくらいが相当するでしょうか。

 「坂田さんは、こちらを退職されると、札幌の自動車教習所に、再就職され
ています。ご存じでしたか?」
 「いいえ、存じておりません。そうですか、自動車教習所に……」
  「職種としては、だいぶ違う世界のようですが?」
  「札幌あたりでは、求人状況が、かんばしくなかったのかも、しれません」
 北川部長は、木で鼻をくくったような、応対をした。

(例)あの店の店長、いつ行っても木で鼻をくくるような態度で不愉快だ。

(例)昨日飛び込みで営業してみたが、木で鼻をくくったような対応で、追い出されてしまった。

 実は、本来この言葉は「木で鼻をこくる(擦る)」が正しく、紙が貴重なものだった時代に木で鼻を擦って鼻水を拭っていた様子を指したものでした。時代の変遷とともに「こくる」(=こする)が「くくる」に変化し、現在の形になったものと考えられています。

 「木で鼻を擦る様子」が「無愛想、冷淡な態度」を指すようになった理由は、「木で鼻を擦ると痛くて不機嫌な顔になるから」や、江戸時代の商家において「丁稚奉公の使用人たちに紙を使わせなかった主(あるじ)の理不尽な様子が基になっている」など諸説あるようです。昔は、現代のように、鼻をかむのに便利なティッシュなどは存在しませんでした。それどころか、紙自体が貴重だったため、商家で働く見習いなどは、気軽に紙で鼻をかむこともできませんでした。風邪や鼻づまりのとき、どうやって鼻水を処理していたのかというと、「木の棒」を使っていたというのです。語源となっている「木で鼻を擦る」状況だったんですね。当然のことですが、あまり使い勝手が良いものではなかったようで、木の棒の不便さが、冷淡にあしらう態度のもとになったと言われています。詳しい由来には諸説あって、木で鼻を擦るときの表情が、冷たく見えたからという説や、擦れて痛いことからひどく無愛想な表情になったという説があります。中には、「お前ごときに紙はもったいない」と見下されていたことが由来だという説もあります。♥♥♥

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