新幹線「みずほ」「さくら」

 2011年3月12日に全線開業した九州新幹線鹿児島ルート新大阪-鹿児島中央間を直通運転する「みずほ」「さくら」が登場しました。全線開業10周年です。共に、以前は東京駅発のブルートレイン寝台列車として親しまれた名前ですね。「さくら」は、長崎・佐世保行きとして2005年2月まで運行されました(佐世保行きは1999年12月3日で廃止)。一方の「みずほ」は、熊本・長崎を結んでいましたが、いち早く1994年12月に廃止されています。

 「新幹線の「みずほ」「さくら」は何がどう違うのか?」と、私は最初、疑問に思ったことでした。「みずほ」は途中、新神戸・岡山・広島・小倉・博多・熊本のみに停車する最速達タイプ(山陽新幹線で言えば「のぞみ」に相当)で、新大阪-鹿児島中央間を、在来線特急に乗り継ぐ現行列車より1時間17分短い、最速3時間45分で結びます。朝夕の時間帯にのみ運行しています。一方の「さくら」は、山陽新幹線内は、さらに姫路、福山、新山口、九州新幹線内は、新鳥栖、久留米、新八代など停車駅を分散し、日中を中心に1時間に1本程度運行しています(「ひかり」に相当)。つまり速達普通かという違いです。速達列車の「みずほ」は朝夕の時間帯に限定して走り、直通列車の中心は、あくまでも1時間に1本程度の頻度で運転される「さくら」という位置づけです。こうして、往年の長距離寝台列車の伝統ある名称が採用され、受け継がれる形で復活しました。この「みずほ」「さくら」には、現在「のぞみ」で運行中のN700系をベースに、車内設備に大幅な変更を加えた新型車両「N700系7000・8000番台」が用いられています。私は新幹線を利用するときは、「のぞみ」よりも、時間に余裕のある限り、「さくら」「みずほ」に乗ることが多いんです。なぜでしょうか?

 見た目は「のぞみ」(山陽新幹線105本)となんら変わりません。「みずほ」「さくら」(53本)の外観を最初に見た第一印象は、「のぞみと同じじゃないか!」というものでした。違いと言えば、長さがこれまでの16両から8両と半分になったくらいです(座席数が少ない、駅も8両を最大として設計されている)。それもそのはず、先頭形状はベースとなったN700系「のぞみ」から全く変更されていません。車体の色は白から青みがかった陶磁器の青磁をイメージさせる白藍色に変わりましたが、あまり違いは感じられませんでした。N700系や500系と並んでいると、ボディカラーの色合いの違いが明確に分かるんですが。これは天候にもよるようで、晴れの時よりも曇りの時のほうが、より青く見えるそうですよ。ボディサイドには細い藍色のストライプが入り、このストライプの上下に金色のピンストライプがアクセントとして入れられて、上品さを醸し出しています。

 ただ、側面を見ると、今までの「のぞみ」との違いが分かります。運転席の横にあるWEST JAPAN KYUSHU」のロゴ(写真上)は、JR西日本JR九州が共同開発して、直通運転を可能にしたことを表す、両社を結ぶシンボルのロゴマークです。これまでの明るい青帯ではなく、細い藍色のストライプの上下に、金色のピンストライプがアクセントとして入れられています。上品なカラーリング、高級感を感じさせますね。そして、デッキから一歩車内に足を踏み入れると「これが新幹線か!」と、その違いに驚かされます。従来のN700系は車両の出入り口の壁面はメタリック調で、クールで無機質な印象でした。「みずほ」「さくら」では、これが一転して、温かみのある「朱桜調」の木目になっています。現在、山陽新幹線を走っている「ひかりレールスター」を踏襲し、指定席はグリーン車並みの2列+2列シートとなっています。飛行機との競合が激しい関西-九州間ならではの設備といえます。ゆったりとした座り心地は柔らかく、ソファのような印象。背もたれを倒すと座面がやや後ろに下がる新しい機構を採用し、腰が手前にずれることがなく快適です。ひじ掛けや背面テーブルなど、手の触れる部分には木目調パネルが使われている点が目新しいですね。「のぞみ」と比べて、ちょっと豪華な気分が味わえるんです。自由席は一般的な2列・3列配置です。

▲デッキ部は木目調、自動販売機も営業中

 シート中央の木目のひじ掛け。真ん中に細~い溝が入っており(写真上)、左右の乗客のひじがぶつからないように配慮されていますね。ひじ掛けのどこまでが自分のもの?」という悩ましさを解消してくれています。真ん中のひじ掛けが上に跳ね上げられるのは、お子様連れ客には嬉しいところです。シート上部に設置されている握り部にも、木目調パネルが使われています。天井や壁面はホワイトベージュを基調とした布目柄で、デッキとの仕切りの壁面や、荷棚の縁などにも木目調パネルが使用されています。普通車指定席のグレードが高いだけに、グリーン席との違いはそれほどないのではないかと思いましたが、車内の雰囲気が全く異なります。グリーン車の方が白熱色の照明のトーンを落として、車内の落ち着き度を高めています。座席は革張りに見えますが、ゴージャスな平織生地です。やはりグリーン席は高い料金を取るだけのことはあると感じました。座席の前後間隔が普通車よりも広く、さらに全席が電源コンセント付き、リクライニングさせた時に脚を支えやすくするフットレスト付きです。デッキとの仕切りには広告がなく、代わりに木製の飾りが掲げられています。鹿児島中央側は、JR九州のデザイン顧問の水戸岡鋭治(みとおかえいじ)先生がデザイン、新大阪側は、JR西日本のデザイン顧問の木村一男氏が担当。日本の四季をイメージしています。ちなみに自由席車両で用いられている木目は明るめの「若桜調」です。洗面所付近も、ウォーム調の照明で落ち着いた雰囲気を演出していました。木を多用し、従来の「のぞみ」よりも高級感があり、落ち着いた雰囲気となったのが「みずほ」「さくら」なんです。暖かみのあるウッデイ感覚の内装は、JR九州のお家芸ですね。

 ついでながら、「さくら」「みずほ」の車内販売が、新型コロナの影響で休止中だったものが、正式に廃止となりました。再開したくてもパーサーの数が不足しているのでしょう。

▲グリーン車 座席だけでなく床も素敵

 同じ新幹線でも、時間に余裕のあるときは、私は1・2本待ってでも、無機質な「のぞみ」よりは、木のぬくもりの感じられる「みずほ・さくら」に乗るようにしています。両者の違いを簡単にまとめると、下記の通りです。♥♥♥

・「のぞみ」は、東海道・山陽新幹線区間を走る

・「みずほ」「さくら」は、山陽・九州新幹線区間を走る

・「のぞみ」「みずほ」は最も速い列車

・「さくら」は、その次に速い列車

・「のぞみ」は16両編成

・「みずほ」「さくら」は8両編成

・山陽新幹線区間の指定席・グリーン席の料金は「のぞみ」「みずほ」の方が「さくら」より高い

・九州新幹線区間の指定席・グリーン席の料金は全ての列車で同じ

・車両は全ての列車でN700系を使用

 

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