『英語の教養』

 英米の文化と背景がわかるビジュアル英語博物誌の、大井光隆『英語の教養』( ベレ出版、2021年)が出版されました。私は東京・多摩センター「丸善」で購入してきました。著者の大井さんとは、私も接点がありましたが、(株)学研の辞書編集長を長く務められた方です(東京外国語大学卒業後、学習研究社にて、一貫して英和辞典、和英辞典、学習参考書などの編集に従事。定年退職後も、各社の英和辞典編集に参画)。英語圏の文化的背景や歴史を知ることは、英語ネイティブとの会話を円滑にし、記事や文学について深く理解することに繋がります。また英文を読む上で、欠かせない道具でもあります。本書は、英米の歴史」「英米の年中行事と祝日」「様々な場面で引用されるギリシャとローマの神話」「聖書とキリスト教」「シンデレラやユニコーン、魔女などの伝説と民間伝承」「生活やスポーツなどの文化」「アリスやフランケンシュタイン、スーパーマンやターザンなどの、英米で有名な文学や映画、漫画の登場人物」「動物や植物」などについて、イラストや写真と一緒に解説していきます。英語辞書編集者らしい切り口の解説でした。広く英語の教養を深めることができるとともに、英米人と良好なコミュニケーションを取るための幅広い知識が身につけられる一冊です。以下は著者のことばです。


 本書のタイトルは、最終的に『英語の教養』となりましたが、最初は「英語博物誌」という仮題のもとに執筆を開始しました。2015 年のことです。「博物誌」ということばは英語の natural history から来ているようで、本来は動植物や鉱物について書いたものです。
 しかし、「博物誌」の定義は必ずしも一定していないようで、自然界の事物だけでなく、歴史や宗教など、もろもろの事象を扱った百科全書的な書物も「博物誌」と名乗っても許されそうです。本書は、英語にまつわる知識や情報を集めた、言わばことばの「テーマパーク」のようなものです。ことばと文化に関心のあるすべての人に楽しんでいただけるよう、さまざまなテーマを取り上げました。

 タイトルが内定し、おぼろげな全体像は浮かんでも、具体的な章立て(構成)がなかなか決まらず、とりあえず、動植物や年中行事といった身近な項目から着手したのですが、最終的には、歴史、神話、聖書、キリスト教といった難物にも手を伸ばすことになってしまいました。いずれも、素人にはうかつには近寄れない分野ですが、英語の中での文化的側面に比重を置くというスタンスが決まってからは、少し肩の力が抜けました。どんな分野のことばも、「文化」という視点から見ると、実に興味深いものです。
 さらに本書では、原則としてすべての項目に図版を入れるという、少々欲張った目標を立てました。これは結果的には非常な困難を伴う作業でした。できればカラー写真を使いたかったのですが、コスト等の理由でかなわなかったのは残念です。しかし、図版があるのとないのとでは、情報量に大差があります。編集サイドの皆様には多大なご迷惑をおかけしましたが、これによって本書の「魅力」は倍増したのではないかと自負しています。

 そもそも私は出版社で英和辞典や和英辞典などの編集作業に長年携わってきた人間ですが、何か特定の分野において深い蘊蓄を持っているわけではありません。そんな私が、おこがましくも歴史、神話、宗教から動植物まで、幅広い分野の英語に関して語ろうとしたのは、まさに「蟷螂の斧」でありました。しかし、辞書の編集に携わりながら常々痛感していたのは、「訳語」だけではその語の一面しか伝わらないということです。たとえば、fairy は「妖精」、witch は「魔女」、angel は「天使」として日本語化していますが、はたしてどれだけの人がこれらの語の本当の意味をご存じでしょうか? Halloween は「ハロウィーン」とし始めてだれもが知っていますが、はたして本来の Halloween についてどこまで理解されているでしょうか?また、bell、key、tea などといった日常語が持つ文化的側面も、あまり知られていないのではないでしょうか?
 このように、どんな語にも、「訳語」だけでは伝わらない側面があります。私はそれについて述べてみたいと思い、非力を顧みず書き進めました。

 また、聖書やキリスト教といった分野の語は、西洋の文化を理解する上できわめて重要であることは言うまでもありませんが、個々の単語の持つ本当の意味やイメージは「訳語」だけではとうてい理解できません。さらに、スポーツのような分野について書くのは、運動オンチの私にとっては、まさに身の程知らずの暴挙でしたが、今まで敬遠してきた分野への挑戦は、私にとってスリリングな経験でもありました。その結果わかったのは、自分の知識がいかに貧弱で不正確なものであるかということです。いろいろな書物やインターネットのおかげで、何とか本書を書き上げることができました。

 本書は10章から成っていますが、配列に特別な意味はありません。どの章から読んでいただいても結構です。ご興味のない分野でも、それなりに楽しんでいただけるのではないかと思っています。本書によって、「知ること」の楽しさを知っていただき、英語を学ぶ上での「教養」が高まれば、著者にとってこれ以上の喜びはありません。


 読み物として非常に面白かった。ついでながら、この著者の大井さんが、辞書編集一筋40年余りの経験を基に、辞書編集という仕事の中身、辞書原稿と校正、責任者と原稿執筆者の人脈、学習辞典の販売促進、を振り返って、「わが辞書人生[第1回]~[第4回]」を公開しておられます。これが実に面白い。⇒コチラです♥♥♥

 もう一冊、同じ題名の本をご紹介しましょう。土岐田健太(ときたけんた)先生『ビジネスに効く!英語の教養』(ビジネス社、2021年12月)が発売されました。「日経新聞」、「読売新聞」、「産経新聞」にも広告が掲載されていました。構想自体は10年以上、実際に企画に着手してからは約半年ほどで書き上げられたそうです。

 英語を学ぶときには、いくつかの壁があります。それを乗り越えるには英語の教養、すなわち、相手の文化、歴史、ライフスタイルの理解を深め、その理解に基づいて自らを自己開示する力が欠かせません。そんな英語の教養を文化背景を中心に、37の発想から掘り下げて、英語学習が楽しくなる知恵を徹底解説した本です。英語の文化背景や教養がビジネスにどのように活かせるのか、そしてこれまでどのような悩みをビジネスパーソンから相談されたのかという点にも触れています。扱う内容も、英会話の作法、プレゼンテーションの型、英語の歴史や語源など、多岐にわたり、知的な好奇心や興味の最大化が図れる本となっています。著者がこの本に対する思いを語っている映像をご覧ください。♥♥♥

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