PHP運動とは?

▲京都のPHP研究所

 松下幸之助(まつしたこうのすけ)さんによって提唱されたPHP運動」とは、Peace and Happiness through Prosperity”という英語の頭文字をとったもので、“繁栄によって平和と幸福を”という意味のことばです。これは、物心ともに豊かな真の繁栄を実現していくことによって、人々の上に真の平和と幸福をもたらそうという願いを表した標語です。私たち人類は、原始の昔から今日まで、この繁栄、平和、幸福の実現を願って努力してきていると言えるのではないでしょうか。「PHP」という名称こそつけていませんでしたが、人々の営みのすべてはことごとくPHPの実現を目指すものであったといっても過言ではないでしょう。その結果、人類は時代とともに大きな進歩発展を遂げてきたわけです。しかし、人類がこれまでの歴史において大きな進歩を遂げてきたことは事実であるとしても、その内容なり程度は、必ずしも最善ではなかったとも考えられます。本来、もっとスムーズに、もっと物心両面の調和のとれた形で進歩発展することが可能でありながら、いわば不必要な損失、犠牲を繰り返してきている一面があるのではないでしょうか。世に処していくためには「素直な心」を持つということが必要だと松下さんは説かれます。素直な心があって初めてものの実相がつかめるのです。素直な心を培養して、常に素直な心でものを見、ものを判断することが大切だと言われるのです。素直な心になることによって、物事の実相を見ることができ、誤りなき生活が生まれ出る。したがって繁栄が生まれる、そこから平和と幸福が生まれてくるようになる。それほどに素直な心ということは、「PHP運動」の中心なのでした。なかなかそれができていないことが、日本の貧相につながっている、というのが松下さんの実感でした。

▲PHP運動をを一言で言えば、「素直な心になりましょう」ということ

 PHP研究所経営理念研究本部では、そのことを根本から反省し、人間には本来、繁栄、平和、幸福を実現できる本質が与えられているという人間観に立脚して、これからの人類の歩みの上に真のPHPを、より好ましい姿で実現していくための理念と方策を、多くの方々の衆知に教えを請いつつ研究していきたいと考えています。次の松下幸之助さんの言葉をお読み下さい。

そのとき、ちょうど私が51歳のときでした。そのときの世相は、戦後の退廃した、窮乏した時代でありますから、非常に困窮をきわめておったですね。国民生活の上に、いろんな形において、いろいろ悲惨な状態が起こっておったです。

それで、私は当時、松下電器の経営をやっていかなならん立場にあったんですけれども、それはまた大事な仕事であるけれども、一面に、こういうような世相、なぜ起こったんだろうかと、またそれを復旧していくという政治なり世間の動きというもので、私に腑におちないものがたくさんあったんです。それで、電気器具の製造という仕事をばしていくかたわらですね、人間として、社会人として、そういう面を考えてみなくちゃならんと、こういうふうに考えて、PHPの研究というものをやったわけです。

そのときに考えたのは、非常にこの荒んだ社会情勢というものは、なぜだろうか、ということを考えてみたんです。これが人間のですね、一つの避けることのできない姿であれば、これはこれでしょうがない、ということもありますが、しかし、ぼくはそのとき、そう考えなかったんです。どう考えたかというと、人間というものは、限りなき繁栄と平和と幸福というものを、原則として与えられているもんだと、こういうふうに考えたんです。 それがそのようにいかない、こういう悲惨な世相というものは、みずから人間が招いたもんである。本来は与えられておるものをみずから捨てておるんだ、で、そのことに気がついておらないと、こういうふうに考えたわけです。

そう考えてみると、やはり、この日本の悲惨な姿というものは、本来ありえないもんだ。それはみずから招いたもんである。人間の小賢しい知恵とか、また過ぎたる欲望に捉われて、みずから壊しているんだ。そういうふうにも考えられる。

だから、そういう考え方を是正してですね、本来与えられているところの繁栄、平和、幸福というものを求めていく道を求めていったならば、必ず求められるにちがいないと、そういうようなことを、私は私なりに考えてみたんです。

これは一朝一夕にいかないけれども、また、われわれ自身の知恵、才覚ではいかないけれども、幸いにして三十億の人々がおるんやから、みんなの知恵を一つずつ、少しずつでも集めて、そしてそれを生かすことができたならば、それは叡智ともなる、神の知恵ともなる、ということに通ずるんやないかということで、じゃあひとつ、PHP研究、PHP運動というものを始めようということでやりかけたんです。

  (昭和43年11月3日 PHP研究所創設22周年記念式典における話より)

 PHP研究所は、このように「人類のよりよき未来のために」という願いのもと、昭和21年、松下幸之助によって創設されました。月刊誌『PHP』は、その機関誌として昭和22年に創刊されています。お互いが身も心も豊かになって、平和で幸福な生活を送る方策を、それぞれの知恵と体験を通して提案し考え合う場として、発刊を続けています。立ち止まりたくなったときも、一歩踏み出したいときも、きっとあなたの毎日に役立つ雑誌です。創設当初は赤字続きで、松下幸之助さんの援助で運営がなされていましたが、若くして経営を任された一番弟子の江口克彦(えぐちかつひこ)さん(私の大好きな著者です)がPHPの社長に就任以来、黒字化して松下電器からは独立しました。

 かつて、島根県大田市石見銀山で、義手・義足を作っておられる世界的に有名な会社「中村ブレース」の社長・中村俊郎(なかむらとしろう)さんに、故・澄田信好知事より、島根県教育委員の就任要請があります。教育委員会で中村さんは、試験の点数ではなく、本当に子どもが好きな人を教員として採用してください。心底先生になりたいと思っている人を採用してください。」と強く訴えられました。点数の高さだけで採用された教師の中には、教師として適性の疑わしい人がいる、というのが中村さんの偽らざる実感だったのでしょう。私が図書部長を務めていた頃、島根県の全ての県立高等学校の図書館に、この雑誌『PHP』を毎月、長年(平成20年1月号~平成25年1月号)贈り続けていただいたことは、島根の生徒の心の教育を」という、中村さんの心よりの熱い想いからでした。実に有り難いことでした。今日も私は雑誌『PHP』(300円)を読みながら、当時の松下幸之助さんの熱い思いに心を寄せています。♥♥♥

▲『PHP』最新8月号

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