ロン毛騒動

 6月21日、プロ野球・埼玉西武ライオンズを経営する西武ホールディングスの定時株主総会が埼玉・所沢市でおこなわれ、質疑応答ではライオンズの選手について、手厳しい意見が飛びかいました。質疑応答では、強制性交容疑で書類送検されたプロ野球・西武の山川に関する声が上がることは事前に予想されていました。株主から解雇と復帰を求める意見が交錯して紛糾しました。検察庁の判断を待って「適切に対処する」が球団側の姿勢。究極の選択に迫られています。

 さらに俎上に上がったのが、高橋光成投手今井達也投手、両エースの“ロン毛”でした。株主の1人から 「両エースが出てくると非常に見苦しい。髪型のことです。食事がまずくなる。スポーツ選手としてどうかと思う。西武のクリーンなイメージがダメージを受けている気がする。球団から注意は出来ないものか?それとも個性として見過ごしているのか?」 という苦言が出ました。それは高橋今井の髪形に対する強烈な糾弾であり、改善要求でした。西武ライオンズが強かった頃なら、こんな意見は出ないのでしょうが、今年は成績が泥沼状態です。奥村球団社長「ご指摘については貴重なご意見として、球団として適切な対応、建設的にやって参りたい」と回答しました。

 この意見についてSNS上では 《高橋といい今井といい、なんで髪切らないんでしょうねぇ?マジで美観を損ねてます》 《本当に見苦しいし、子供の見本として相応しくない》など、同調する意見もあるが、ほんのわずか。大多数は株主に批判的な声のようです。 《高校野球じゃあるまいし》 《高校の野球部が坊主頭じゃなくてもいいと言う所が多くなってる中、外見に注文付けるか?》 《メジャーリーガーがやったらかっこいいになるのに 日本人がやると見苦しいっていわれんだろ?》 《クリーンな恰好でも悪さする奴はいるんだよ》 《巨人軍は紳士たれの特大ブーメラン知らんのかって言いたいわ》  坊主頭の印象が強い高校野球でも近年、急激な変化が起きています。日本高野連は実態調査の結果を発表。部員の頭髪ルールについて「丸刈り」が前回の76.8%から26.4%と、5年の間に50%以上も減少しています。

 昔、プロ野球のパリーグ・西武ライオンズが黄金時代でめっぽう強かった頃、松井稼頭央(まついかずお)という名ショートがいました(今の監督です)。盗塁王にもなった、茶髪・金髪で奇抜な格好をしては、注目を集めていた選手です。日本人内野手として初のメジャー挑戦ということで、大リーグ(メッツ)に活躍の場を求め(3年総額約26億7,000万円で契約)ましたが、結局、芽が出ず期待ほどの活躍はできずに(それでも日本人内野手最長の7年間プレー、メッツ⇒ロッキーズ⇒アストロズ)、楽天に戻りプレーしていました。日米通算で2705安打で、MVP、トリプルスリーも達成したレジェンド選手です。

 その彼が、まだ西武時代に、突如として、トレードマークである茶髪をばっさりと切って黒髪にしてきたことがありました。大事件です!これは息子の非行に悩む、ある主婦からもらった一通の切実なファンレターがきっかけでした。

 髪を金髪に染めた松井さんの姿を見て、子供が不良になりました。卒業式に金髪、私服姿で出席するなど、もう親の手に負えません。もう少し松井さんが与える影響を考えていただけませんか。

 この言葉にはさすがの松井選手自身も、身につまされました。マスコミへの露出度増加による自らの社会的影響力の大きさを痛感させられると同時に、青少年たちへの間違ったイメージが伝わることへの罪悪感に思い悩んだそうです。そしてバッサリとカットして、黒髪に染めあげました。「髪が黒いぞ!」「あれれ、茶髪じゃない!」と、選手間・報道陣にどよめきが起こりました。「僕が黒くすれば、少しは青少年の役に立つかなと思って」松井選手。こうして改心したはずでだったんですが、またしばらくすると元の奇抜な格好に戻ってしまいました。人間、本性はそう変わらないということを如実に物語っている話ですね。その松井が監督を務めているのが西武ライオンズです。指導は、期待薄ですね。実際、7月のオールスター中継の中で、源田選手から現役時代の金髪をイジられ、「ボクも金髪にしていたから何も言えません」と選手の容姿に関しては一切関知しないスタンスを改めて表明しています。そして逆境を十分理解している当人たちが、それをバネにして成績結果でロン毛批判自体をねじ伏せています。

 私の尊敬する故・野村克也(のむらかつや)さんは、以前こんなことを書いておられます。やり玉に挙がった西武の二人の選手はどう思うでしょう?:

 評論家の草柳大蔵さんに聞いたところでは、「髪の毛は毛細血管であり、そこには人間の心理が表れる」という。髪型で自分を主張しようとするのは自己顕示欲の表れと言っていい。仕事に対する姿勢は、まず服装や態度に表れる。野球選手にかぎらず、ろくに仕事のできない者ほど外見で目立とうとする。仕事や生き方に自信が持てないから、外見で自分の存在を認めてもらおうとするわけだ。野球選手はプレーで目立てばよろしい。プレーで自分を主張できるようにならなければならないのだ。「心技体」とよく言われるが、よい仕事をするためには体力・技術・気力のバランスがとれていることが大切だ。自分では個性と思っているのか知らないが、奇抜な髪型をするのは「心」が乱れている証拠なのである。むろん、髪型やファッションに気を遣うこと自体は悪いことではない。しかし、それはきちんとTPOをわきまえた、人に不快感を与えない清潔なものでなければならない。プロ野球選手は、子どもが憧れる存在だ。スター選手がだらしない格好をしていれば、子どもたちが真似をしてしまう。  ―野村克也『強打者列伝』(角川oneテーマ、2014年)

 わたしは監督時代、選手に対して「茶髪や金髪のような意味のないことはするな」と身だしなみに対して口を酸っぱくしていった。「身だしなみまで監督が注意する必要があるのか?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、わたしに言わせれば大いにある。グラウンド上で「さすがプロだな」という感動を与えるのが野球選手ではないか。ファッショやスタイルが売り物の芸能人であれば、そうした身だしなみはいいだろうが、プロ野球選手に芸能員と同じスタイルなど必要ない。ある心理学者によると、茶髪や金髪にしたがる若者の心理は「自己顕示欲」なのだという。「これだ!」と自信を持って目立てるものがないから、服装や髪の毛でごまかしてしまう。野球以外の部分で目立とうとするのは、二流の証拠だ。 ―野村克也『野村克也全語録』(プレジデント社、2022年)

 王貞治、長嶋茂雄、イチロー、松井秀喜、大谷翔平を見てください。彼らは超一流のプレーで強烈な自己アピールをしています。それ以外のことで目立とうとなどしません。プロの選手はこうでなくてはいけません。❤❤❤

カテゴリー: 日々の日記 パーマリンク

コメントを残す