「評価委員会報告書」を読む

 懐かしい話から始めますね。かつて、私が大阪・福岡・広島・名古屋・札幌を講演で回っていた時に、(株)ラーンズの英語編集者・白川 彩(しらかわあや)さんが、次年度の英語センター試験の内容を予言され、それがあまりにもズバズバ的中するものだから、私は会場で「予言者・白川さん!」と紹介していました。

 その年のセンター試験が終わると、大学入試センター「試験問題評価委員会報告書」というものを公表しています。次年度の試験を予想する上で、これは本当に貴重な資料です実は、今までこの報告書を読むと、初めて出題された新傾向問題が次年度にどうなるのかを占うのに、ずいぶん役立つということを実感してきました。「こんな問題すぐ消えてなくなるよ」という同僚たちの発言の中、「いやこれは来年も絶対出題される!」と私が断言できた理由は、ひとえにこの報告書の中で問題部会の作問者たちが自画自賛していたからでした。この報告書はじっくり読むと、実にいろいろなことを教えてくれるんです。追試験」の問題とともに、必ず隅から隅までチェックしておかなければいけません。新傾向の問題が登場する際には、その前年の追試で予告リハーサルが行われることは、私たち英語教師なら誰でも知っていることです。

 白川さんの「予言」は、実はこの報告書と追試問題の二つがネタ元でした。懐かしいなあ!

▲次年度の予想をする「予言者 白川」さん

 去る6月30日に、今年令和5年の「大学入学共通テスト問題評価・分析委員会報告書」が公表されました。ここでは3種類の報告書が公開されています(1)「高等学校教科担当教員の意見・評価」(2)「教育研究団体の意見・評価」 (3)「問題作成部会の見解」の三つです。それぞれの立場から、今年の「共通テスト」の本試験および追試験の問題について、分析・評価を与えておられます。この他巻末資料として、高等学校教科担当教員の項目別評価・総合評価が4段階で示されています(リーディングの「問題構成」のみが3で、あとの分野は全て4で適切であったという評価)。

 この報告書からどんなことが分かるのか、一つの例を挙げてみましょう。今年の「共通テストリーディング」「第5問」は、ある男子学生が転校先で卓球を始め、先生や兄のアドバイスをきっかけとして、教訓を得て自身の問題を克服するという、ちょっと心温まるいい話でした。この問題に対する報告書の見解が次の通りです。

卓球を通じて得た教訓についての内容を読み、他者に伝えるためのメモを作成するという、高等学校の授業を反映した適切な場面設定である。項目ごとにメモをまとめるという形式は、授業で指導する際の参考になる。(「高等学校教科担当教員の意見・評価)

随筆文から主人公が学んだ具体的な事柄を言わば「抽象化」することが求められており、単なる英文理解ではない良問と言える。このような温かみのある物語文を介して、新しい学力観を反映した問題作成をすることにはご苦労があったかもしれないが、受験者がこういった英文を読む動機となるためにも、この出題の方向性は続けていただきたい。(「教育研究団体の意見・評価」) 

 これに対して「問題部会」では、「高い評価を得た」「この出題の方向性は続けてほしいとの要望もあった」と自画自賛しています。このような評価・見解を読むと、来年の「第5問」の内容が予想できますね。

 過去の「センター試験」の歴史を見ても、「物語文」はそのほとんどが温かみのある「いい話」でした(教訓を含む)。「愛」「友情」「親切」などをテーマにしたほのぼのとした心温まる物語や、「人間の成長」を描いた日常の苦労物語など、ハッピーエンドで終わるいい話が満載です。物語文の対策教材は、過去のセンター試験にいくらでも見つけることができるんです。♥♥♥

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