『じじいは蜜の味』

 今年6月に発売されたチューリップ財津和夫(ざいつかずお)さん(75歳)の10年ぶりのエッセイ集『じじいは蜜の味』(中央公論社)を読みました。財津さんは大好きな小田和正さんの盟友です。何とも言えずユーモラスなタイトルですが、タイトルはご自分で決めたものではなく、出版社から提示された3つか4つの案のうちの一つのようです。 私は財津さんの作る曲も大好きで、青春の影」が特に好きです。

▲何ともユーモラスなタイトル

 本の装丁が青と黄色系で纏められているのも、財津さんのリクエストではないようですが、相性の良い色の組み合わせが本人もお気に入りで、「表紙はいいなぁ」と言っておられます。財津さんの横にちょこんと座っている猫のイラストについて、財津さんは、「僕が一番可愛がっていた猫で、死ぬ前はずっと寝たきりだったんですよ。なのに、そのせんべいのように痩せた体で突然むくっと起き上がって、5メートルほど歩いて寄ってきたあと、どこかへすっといなくなったと思って探したらもう死んでいた。わずか30秒後の出来事だった。挨拶に来たんですよ。忘れられませんよ、そんな事されたらね」 財津さんの思い出に残るこの愛猫「クロちゃん」のイラストは、財津さんがリクエストしたものではなく、本の中のエッセイの一つ「クロとの思い出」から、編集者側が発案したようですが、イラストの通り茶色でシッポが少し黒い所まで忠実に再現されています。

(閑話休題) 最近、2008年度の東北大学の入試問題を解いたんですが、その中に心理学者たちが自分の研究生活のある時点において、「人間は○○する唯一の動物である」(Man is the only animal that…)という文を含んだ著書等を発表したいと心ひそかに願っているが、それを先延ばしする傾向がある。下手なものを発表してしまうと、次の世代の心理学者たちから恥をかかされることになるからである、と展開し、自分としては「人間は未来について考える唯一の動物である」と提唱したいと述べる。チンパンジーが一人年老いていくことを思って泣いたり、夏休みのことを考えながら微笑んだり、半ズボンをはくとすでに太りすぎに見えるので、糖分の多いキャンディをやめたりするまでは、撤回するつもりはない、と主張します。この主張に対して、どう思うかと生徒たちに質問すると、財津さんと似たような体験をしたことがあると話してくれた女生徒がいました。すなわち、身体の衰弱した飼い猫が、突如として家族に甘えるようにすり寄ってきて、どこかに姿を消した。するとしばらくして近所の人が「近くで死んでいた」と知らせてくれた、と言うのです。もし財津さんの話やこの女生徒の話を信じるなら、先の心理学者の提唱は根本から崩れていきますね。

 さらに驚くべきなのは、ボスの地位を巡って挑み合う大人のチンパンジーのオスたちの戦術に関して聞いたことがあります。2頭のライバル間だけで対決に決着がつくことはほとんどなく、他のチンパンジーたちがどちらを支援するのかが関係するので、事前に『世論』に影響を与えておけば有利になります。オスは通常、高位のメスたちか、仲間のオスの1頭をグルーミングしてから、全身の毛を逆立ててディスプレイを開始し、ライバルを挑発する、と言います。グルーミングからは、次の段階を十分承知したうえで、あらかじめ相手の機嫌をとっているという印象を受けます。オスは、自分が将来どんな衝突を引き起こすのか前もって分かっています。だから、一日前に仲間をグルーミングすることによって、自分に有利になるようにするのです。すなわち、チンパンジーは、未来を思い描くことができ、将来の戦略的計画を立てることができる、未来志向の行動を取ることができるように思われます。

 さて、元の本に戻って、カツカレーしかメニューにないお店で、カレーが食べたい、カツを抜いて欲しいと何度も食い下がりお願いするのですが、結局は店員に拒否され,納得がいかない描写には思わず笑ってしまいました。「結局私はカツカレーを頼んでカツを避けながらカレーを食べた。どんな闘いでも敗北は惨めだ。カツを嫌がったせいかも」〔笑〕

 このタイミングでどうして本を出そうと思ったのか、という質問には「僕が思ったわけじゃないんですけど・・・チューリップ50周年、その勢いに乗って便乗商法という奴じゃないんですかね(笑)」かなり赤裸々に、幼い頃の思い出、若い頃のこと、チューリップの活動、死後のこと、日常生活のこと、等に触れています。筆を取れば茶目っ気たっぷり、ダジャレも炸裂します。「自分の思いを歌以外で吐き出せることに、快感を覚えている」財津さん。オススメの一冊です。♥♥♥

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