go postal

 go postalという英語表現があります。“To become extremely angry and violent”(極度に怒る、暴力的になる)という意味です。次の様に使います。

 If my boss doesn’t start treating me with respect, I’ll go postal.
 (もし上司が私に対するひどい扱いを改めなければ、私はきっとキレるだろう。)

 I’m  just sitting here and all of a sudden you go postal on me.  (私はここにただ座っているだけなのに、突然あなたがキレるんだもの。)

  一見すると、「郵便局へ行く」という意味かな?と思ってしまいますが、この go は、「~になる」という意味なので、そうではありません。では、「郵便局 (員) になる」とは、どういうことでしょうか。これは、突然怒り出したり、ヒステリックになることで、特に職場でのストレスでそうなることを表す俗語表現です。しばしば暴力的な事態にも繋がりうる、制御不可能なほどに激高した状態、また特に職場におけるものを指す言葉です。

 この成句は、1980年代の中ごろに、アメリカの郵便局で、上司に勤務態度をとがめられた局員が、腹を立てて、複数の同僚を射殺したという衝撃的な事件に由来しています。生まれてから40年ちょっとくらいの、新しい英語表現ということですね。恩師の故・安藤貞雄先生『三省堂英語イディオム・句動詞大辞典』(三省堂)によれば、「米国の郵便局員が怒ってほかの従業員を撃ち殺した事件から」と説明があります。

 1986年以降、アメリカ合衆国郵政公社(United States Postal Service, USPS)において、職員による上司や同僚、警察官や一般市民を標的とした大量殺人が相次いだことに由来しています。1970年から1997年までの期間、少なくとも40人が郵便公社の職員または元職員によって殺害されており、このうち20件が職場内暴力(workplace rage)に関連した事件とされます。1983年以来、11ヶ所の郵便局で銃撃事件があり、35人が死亡しています。郵便公社自体は「ゴーイング・ポスタル」(going postal)なる用語を認めず、人々に使用を控えるように働きかけてきました。しかし、一部の郵便局員らは、職場でそうしたものの存在を感じていると言います。

 郵政公社側は、こうしたgo postalにまつわる事態を、「神話」「不当な評価」だとして認めようとしません。1992年から1998年の間に記録された6719件の職場殺人のうち、16人が郵政公社職員でした。1986年以降、郵便局犯罪の15人の犯人の内14人が暴力や精神異常の履歴があり、5人は雇われるべきではありませんでした。詳しくは、Gareth Carrol, Jumping Sharks and Dropping Mics (John Hunt Publishing , 2021)が参考になります(pp.126-128)。この本は、最近生まれた英語の成句の誕生過程を詳しく取り上げていて、読み物としてもとても勉強になりました。♥♥♥

▲新しい表現の故事来歴が分かり面白い

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