できることとできないこと

 まずは次の3人の一流プロ野球選手の言葉を、注意深くお読みください。尊敬する川北義則さんが、『人間関係のしきたり』(PHP新書、2007年)の中で取り上げておられた例です。


●もともと、ぼくは夢という言葉は好きではない。見ることはできても、叶わないのが夢。大リーグで投げられると信じて、目標としてやってきたので、いまここにいると思う。(松坂大輔投手)

●他人の打撃はぼくにコントーロールできない。自分にコントロールできることとできないことを分ける。自分で制御できないことに関心を持たないことです。(イチロー選手)

●人の書く記事をぼくはコントロールできないでしょ。だからまったく気にならないですよ。(松井秀喜選手)


 それぞれに違った場面でのインタビューですが、この3人の達人の言葉には、不思議な共通点があることに気づかされます。奇妙に符合する部分があるのです。決して他人の考えや世間の常識に惑わされることなく、自分自身の信じる所にしたがって、我が道を突き進む、他人の言葉や世間の反応に惑わされることは絶対にしない。普段我々があまりにも他人の言動に気を遣いすぎることへのアンチテーゼを明示してくれていますね。さらには、自分にやれることにはおのずから限界があり、その限界を知って、できもしないムダな努力はしないということです。イチローがなぜあれほどヒットを量産できたかというと(プロ野球における通算安打世界記録保持者、一軍出場試合のみの記録(NPB / MLB通算4,367安打でギネス世界記録に認定)、彼が打てる球だけを打っていたからです。とても打てそうにもない球は見逃すかファールにして、ヒットを打てる球だけに照準をあわせて集中して待っている。決して他の打者に打てないような難球をヒットにしていたわけではないのです。自分にできないことは気にしない。できることだけに集中して全力投球するということですね。その点、巨人の四番打者・岡本和真選手は、調子が悪くなると、とんでもないボール球に手を出して空振りか凡打の山です。

 松坂投手の場合は、世間が夢、夢と言っている中で、そんな甘っちょろい考えではなく、現実をしっかりと見て、きちんと具体的な目標へ向かって精進することこそが、一番だと思っていたのです。イチローも自分の関心を持ったことに絞って、いくら頑張っても到達することが叶わないことを追いかけたりはしない。不可能なことはバッサリと斬り捨てているのです。有名人はいろいろとあることないことを書かれる身です。事実無根と怒って大きな負担を負いながら訴訟に持ち込む人もいます。松井選手は自分にコントロールできないことは一切気にしない、と見事に割り切っています。この3人の言葉から、人間関係の対処法が見えてくるのではないでしょうか?♥♥♥

 一つは他人に惑わされることなく、自分自身の考え、信じるところに従って生きるほうが才能を伸ばせること。他人の言葉や世間の反応に気を遣うのはマイナスということだ。ふだんわれわれは、あまりにも他人の言動に気を遣いすぎるのではないだろうか。(川北義則)

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