大勢が叱られた~道具は大切に

 巨人のクローザー・大勢投手(25歳)が日本テレビ「ズームイン!!サタデー」にVTR出演して、リーグ優勝決定の翌日にチームメートから「めちゃくちゃ怒られた」ことを明かしました。4年ぶりのリーグ優勝を決めた9月28日の広島戦(マツダ)の9回2死から3番手としてマウンドに上がり、3年目で初の胴上げ投手となりました。末包選手を二ゴロに打ち取ると、グラブを真上に放り投げて喜びを爆発させ、小林誠司捕手(35歳)とガッチリ抱き合いました。

 まるで昨年のWBCを制した侍ジャパンの大谷翔平選手の光景のようだ、と話題となりましたが、大勢投手「大谷さんって言いたいんでしょ?真似はしてない、憧れてないですから。憧れたら超えられないんで」と、大谷投手のWBC決勝前の名スピーチ「憧れるのを、やめましょう」を引き合いに出して笑いを誘いました。

 優勝決定の翌日は、神宮球場でヤクルトと対戦しましたが、試合前に「サロン(食堂)で誠司さんと会ってめちゃくちゃ怒られました」と言います。小林捕手からは「興奮してるのは分かる、うれしいのは分かるけどやっぱり野球道具は大切にしろって。子供たちも見てるのに、真似したらどないすんねんって」と諭されたと明かし、「優勝がもう1回できるのでその(日本一)瞬間はグローブを投げず誠司さんを待ちます」と日本シリーズでの“歓喜のハグ”を予告していました。これ、実にいい話です。

 史上30人目のメジャー通算3000安打を達成したイチロー選手は「道具」を心底、大切にする大リーガーでした。「野球の上達には、道具を大切にすることが近道」。野球の本場・米国でもその姿勢は尊敬の眼差しで見られていました。日米を代表する大打者・イチロー選手の忠告とは裏腹に、感情の高ぶりを抑えきれずに道具を粗末に扱うトップアスリートも数多くいることも事実です。皮肉なことに、道具を大切にしなくても世界の頂点に立つことは可能なんです。イチロー選手の道具論は果たして偏狭な精神論なのでしょうか?

 男子テニス界で何年にもわたって世界1位に君臨するノバク・ジョコビッチ選手(セルビア)は冷静沈着な風貌には似合わず、感情の起伏が激しいことで知られます。王者らしからぬ自らの凡ミスに苛立ち、ラケットを放り投げ、ときに地面にたたきつけて破壊することもありました。何の罪もないボール・ボーイに険しい態度で接することもあります。ファンもジョコビッチの傍若無人ともいえる行為を受け入れているのか、執拗なブーイングが起きることはありません。

 松江市出身のテニスプレーヤー錦織 圭選手は、地元・松江市出身の期待の選手ですから、応援したい気持ちは山々なのですが、彼には一つ悪い癖があって、以前このブログでも苦言を呈したことがあります。思うようなプレーができない自分に腹を立てて、ラケットを投げつける悪癖が未だに治っていません。ラケットが折れ曲がってしまうことも。このような精神状態でプレーする限りは、超一流プレーヤーの仲間入りをすることはまず無理、というのが私の持論です。私も長くソフトテニスの監督を務めてきましたが、試合中にそのような行動をする選手で(ラケットに八つ当たりをする、相棒に罵声を浴びせる、審判に噛みつく)、上位に君臨した選手を知りません。いくら強い選手でも、途中で取りこぼして、負けていったように記憶しています。やはり大活躍してランクキング世界1位で、全米オープン・全豪オープンを制覇した大坂なおみ選手も、自制できずにラケットをコートに叩きつけて八つ当たりすることがよくありました。実に見苦しい。両選手とも、自分よりもはるかに格下の選手にポロポロ取りこぼしをするのは、こんな精神面に要因があると私は感じています。

 引退したあのスーパースターのイチロー選手が、少年野球教室などで、小さい子どもたちから「強い選手になるにはどうしたらいいですか?」と質問を受けた時に、彼は何と答えたと思いますか?

 大事なバットを芝生の上に寝かせたりしないことです。ほんのわずかな芝生の湿り気が、バットのバランスを崩すこともある。バットを地面に叩きつけるなどはもってのほかです。地面にぶつかった衝撃で、重さや木目、密度のバランスが崩れるかもしれません。バットを作る樹は自然が長い時間をかけて育てています。バットは、この自然の樹から手作りされているのです。一度バットを投げたとき、とても嫌な気持ちになりました。それ以来、自然を大切にし、バットを作ってくれた人の気持ちを考えて、僕はバットを投げることも、地面に叩きつけることもしません。もともと道具を大事に扱うのは、プロとして当然のことです。ボールを投げたり打ったりする前に、まずはそういうところに気持ちをもっていかなければダメです。

 上の発言の中でも触れているように、実は、そのイチロー選手自身もかつて、1996年7月6日、近鉄戦で左腕・小池秀郎投手にふがいない三振を喫して、思わずバットを叩きつけたことが一度だけありました。あれだけのバットを作ってもらって打てなかったら自分の責任ですよ」と、イチロー選手は反省し、その後、我に返って、バットを作っていただいた名工・久保田五十一さんに、謝罪のメッセージを送っています。「何人かの選手から、自分の手掛けたバットについてお礼を言われたことは過去にもありました。でも、バットへの行為そのものを謝罪されたのはあの一度だけですね」と、伝説的なバット職人・久保田さんは語りました。道具に対する意識の高さは、イチロー流準備の特徴です。フリー打撃を終えた選手たちが、それぞれのバットを芝生の上に平気で放り投げる中、イチロー選手だけが、バットをグラブでそっと包み、まるで眠った赤ん坊をベッドに横たえるように置いていました。彼は普段、特製のジュラルミンケースに入れて、バットを持ち歩いています。ケース内には乾燥剤を入れるポケットがあり、湿気による重量増を防いでいるのです。それぐらいに道具への強い愛着・こだわりがあるんですね。私は個人的にはイチロー選手は好きになれませんが(自分の成績にしか興味が無い)、この道具を大切にする姿勢だけは、みんな見習わなくてはいけないと感じています。

 「道具を大切にできない人は、いつかその道具に裏切られる」とは、プロゴルファーの青木 功(あおきいさお)さんが、週刊誌に連載したコラムに書いていた言葉です。今回の大勢投手への小林捕手のお叱りを聞いて、そんなことを思った八幡です。小林捕手はいい教育をしました。♥♥♥ 

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