カメムシ

 四年間勤務した島根県立大田高等学校から島根県立津和野高等学校に転勤になり、島根県中部の大田市から西の果ての津和野町に、お引っ越しです。少し楽をしようと大金を払って全部お任せで引っ越しをお願いした時に、驚いたことが二つありました。一つは引っ越しを頼んだ業者・クロネコヤマトが、私の全ての書棚にあった本の並び順まで一冊残らず全く同じ(!)に復元してくれたことです(半端な量ではありません)。大田の住宅の書棚で並んでいたと同じ位置に見事に全ての本が配置されています。ここまでやるか!!これにはびっくり仰天しました。引っ越し業者のリーダーが、箱詰め梱包をする際に、順番通りに復元できるようにバイト役に指示を出していたのでしょう。この見事な働きぶりには驚きました。私は何一つせずに指示だけ出してコーヒーを飲んでいました。完璧なお引っ越しでした。これで私はいっぺんにクロネコヤマトのファンになったのでした。それで三年後、津和野から松江市に引っ越す時にもクロネコヤマトにお願いしましたが、今度は全然ダメでした。やはりどの業界も指導者の力量一つで、仕事の結果がずいぶん変わるものだということを痛感したものです。

 もう一つの驚いたことは、津和野町のはずれにある教頭住宅に入れてもらったんですが、家の中に入ってビックリ!お風呂場と台所の窓に、隙間無くびっしりとカメムシが張り付いていたのです。私は今までカメムシなどほとんど見たこともなかったので、このとんでもない量にはビックリ仰天しました。臭いわ、臭いわ!何という所に来たんだ!殺虫剤で除去するのも一苦労でした。手や洗濯物についた臭いは、石鹸で洗ったぐらいではなかなか取れません。カメムシはおなかに液体のにおい成分を蓄えている「におい袋」を持っていて、においの元になる液体を脚の付け根にある「臭腺孔」(しゅうせんこう)と呼ばれる穴から出します。穴の周りはデコボコしていて、液体がそこに付着して蒸発することでにおいが周りに広がっていきます。それは強烈な臭いで、実験でカメムシを瓶に閉じ込めておいたら、自分の臭いで死んでしまったこともあるそうです〔笑〕。わざわざにおいを出す理由は、外敵から身を守るためと言われています。相手に不快なにおいを与えて自分から遠ざけたり、逃げる時間を稼いだりします。仲間同士で集まったり、危険な情報を共有するために、コミュニケーションの手段としての役割を果たすこともあります。彼らが生き抜くための大切な戦術なんですね。

 そのカメムシ(国内には1,300種類以上が生息)が、今年は春先から例年になく大量発生しています。例年は冬の寒さで死滅しますが、今年は暖冬で多くが越冬して、地球温暖化に伴う暑さで繁殖リサイクルが早まって新世代が続々と生まれています。昨年は餌となるスギやヒノキの実が豊富で、秋にかけて個体数が増加したところに、暖冬で冬を越せた個体が例年以上に多かったのが原因です。カメムシは集団を作って越冬するため、生存数には地域差があります。今、街中に出現しているカメムシは今後、山へ行って産卵してから死にますから、やがて数は落ち着くと思います。 今夏~秋に卵が孵化して成虫になるには、気温、降水量、餌の量などさまざまな条件が複雑に絡み合うため、容易に予測はできませんが、母虫の数が多いことから、多くの卵を産むことは予想できます。カメムシは果樹や稲など農作物につく害虫でもあるため、各都道府県の病害虫防除所から注意報が発表されます。愛媛、香川、山口、京都、和歌山など、すでに30都道府県(6月5日時点)で注意報が発表されています。 カメムシがにおいを発するのは、外敵から襲われた時に食べられないように自分を守るためで、天敵に襲われたのか、人間に触られたのかを区別せずに物理的な刺激を受けるとにおいを発します。カメムシは刺激を与えなければ、悪臭を放ちませんから、落ち着いて容器に入れてその容器ごと外に出しておけば、触れることなく放すことができます。現在ホームセンターでは、そのカメムシ用の殺虫剤が在庫切れで、お店では悲鳴をあげておられます。一匹程度なら、粘着テープで駆除できます。お腹側ではなく、背中側から粘着テープで包んでそのまま捨てればよいと聞きました。

 このように、大量発生が懸念されるカメムシの対策に、鳥取県は予備費1,500万円を発動し、直ちに対応を始めました。暖冬により、この冬越冬したカメムシ類は平年の3倍以上とも言われ、被害の拡大が懸念される状況です。果樹を狙うクサギカメムシに対して鳥取県は、名産の「二十世紀梨」の小袋かけを急ぐよう、既に注意報を出して呼び掛けています。またイネを狙うイネカメムシに対しては、田植え後の穂が出る時期の防除が重要になるとして、当初予算の400ヘクタール分に加えて、「きぬむすめ」などの品種を育てる1,100ヘクタール分も防除を実施することにしました。「繰り返し農薬を散布しても追いつかない」JA全農とっとりによると、県内の二十世紀梨の収穫量は前年比23%減の2,200トン。販売額も20%減の10億5,600万円に落ち込む見込みです。♥♥♥

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