副詞technicallyの使い方を深掘り

 technicallyという副詞は、技術的に」「専門的に」という意味が一般的な理解で、次のように使います:She’s a technically skilled pianist.(彼女は技術的に素晴らしいピアニストだ) 「別に何の問題もないじゃないか!」と思うかもしれませんが、実はこの副詞にもやっかいな用法があります。

    It is technically illegal.

    This problem is technically complex.

のような使い方のtechnicallyです。ここでは「技術的には」という訳語では理解できませんね。近い日本語を選ぶとすれば「形式的には」(→書類上はそう決まっているけど、実態は伴っていない)、「表面上は」「建前としては」(→そう言っておかないと角が立つ、またはルール違反になる)、「厳密に言えば」(→普通はそんな細かいことは気にしないけど、一応ね)、「実質上は」などとなるでしょう。この用法のポイントは「堅く言えば(形式的には)そうだけれども、裏では違うんだよ」というニュアンス(言外の意味)があるということです。上記の英文でいえば、「それは厳密に言えば違法だ」(→だけど普通は違法と見なされない)「この問題は表面的には複雑だ」(→だけど実際には簡単に解決できる)のような含みがあるのです。ですから当然、(→   )内のような含みが出てくることが予想されますね。翻訳家の中村保男(なかむらやすお)さんは、このtechnicallyを、理論的には」などと意訳してもよいのではないか、と提案しておられました。理屈やルール上から言えばそうなる(しかし実際にはそうではないことがある)」「形の上ではそうなる」「表向きは一応そういうことになっている」というニュアンスですね。パラフレイズするならば、“If we went into more detail, you’d find that the following is true….”となるでしょうか。要するに「今言っていることは100%正しいわけではないけれど、そのことは当面の議論には関係ない」というニュアンスで使う単語です。ネイティブの人たちが、この単語の後に、“but…”裏の事情が述べられるのを予期するのはそういう理由からなんです。

「技術的」「専門的」「学術的に」などいろいろに訳せるかなりむずかしい語だが、次のような文脈では(theoreticallyの訳と同じになるが)「理論的には」などと意訳してもよいのではないか。Technically he had the authority and could do what he thought was proper.「建前としては、彼にはその権限があり、自分で適当と思ったことをしてもよいことになっていた」。が、actually(⇒)「実際」にはそうするわけにはいかない事情があった、という含みである。  ――中村保男『新装版英和翻訳表現辞典』(研究社、2019年)

 『ジーニアス英和』(6版)ではここら辺が明らかではありませんが、私たちの『ライトハウス英和辞典』(第7版)では次のように記述しています。

①(しばしば[文修飾])規定[定義]上は、厳密には、建前では、理論上は:Technically, he’s still a student. 規定上は彼はまだ学生だ。 ②専門(技術)的に;技術[技巧]的に:be technically impossible (科学)技術的に不可能である。

 デビッド・セイン先生の『100語で簡単!ネイティブに伝わる英会話』(成美堂出版、2017年12月)には、That’s technically the only way to make tofu.(それが一応は豆腐を作る唯一の方法だ。→でも、実際には別の方法もある)Technically, they are still married.(一応彼らはまだ結婚している。→でも一緒には住んでいない)という用例を挙げておられました。厳密には~なのだが」「一応は~なのだが」という意味で、なんだか裏に事情がありそうだという含みを伝えている副詞です。ポイントとして次の3つを挙げておられます。

① technicallyで「厳密には~なのだが」という意味に。
② technicallyを使って、表現した内容とは違う意味を相手に伝える。
③ Technically, yes.で「一応はイエス。でも事情がある」という感じに。

 そのことは、OALDに挙げられた用例 It is still technically possible for them to win (=but it seems unlikely).「彼らが勝つことはまだ一応は可能である(=でも実際には無理のように思えるけど)」から明らかですね。technicallyの使い方を示すのには良い例です。尊敬する山岸勝栄(やまぎしかつえい)先生の『スーパーアンカー英和辞典』(学研)には「専門的[法的]に言えば,厳密に規則を守るとすれば」▲規則と実際にずれがある、あるいは何らかの抜け道があるというニュアンスで用いるという記述があり、さすがと思われます。Online gambling is technically illegal, but it is very popular. (ネット上のかけ事は厳密には違法であるが、広く行われている) ここまでこの副詞の実態に踏み込んで解説している辞典を私は知りません。

 昨年受験した「7月進研記述模試」の長文読解問題で、このtechnicallyを正確に訳し上げていたのに感心しました。この出題者はこの副詞の用法をきちんと理解していることがよく伝わってくる訳文で見事でした(⇒詳しくはコチラをご覧ください)。

 英語の副詞 technically の 最も一般的な意味・使い方 と 代表的な使用例を、わかりやすく整理して説明します。最も一般的な意味は「厳密に言えば」「技術的・形式的には」で、事実・定義・規則の上では正しいが、実際の感覚や状況とは少しズレているというニュアンスで使われることが非常に多い副詞です。日本語では次のように訳されることが多いです:「厳密に言えば」「技術的には」「形式的には」「理屈の上ではそうかもしれないが…」「言葉の定義上は」「まあ、言葉の上ではね」「厳密にはそうだけどさ」典型的な使い方(最重要パターン)としては、表面的・形式的には正しいが、実質的にはそうでもないという含みを持たせています。technically は、「表面的な事実」と「実際の状況」のギャップを示すときにとても便利な副詞です。

Technically, the tomato is a fruit, but everyone treats it as a vegetable.(厳密に言えば、トマトは果物だが、みんな野菜として扱う)→植物学的定義では正しいが、日常感覚では野菜、というズレを示しています。

Technically, he didn’t break the law.
(厳密には、彼は法律を破っていない)→法律上はセーフだが、道徳的・常識的には問題があるかもしれない、という含み。

I’m technically on vacation, but I’m still answering emails.
(形式上は休暇中だけど、まだメールに対応している)→「休暇」という言葉の定義と現実のギャップを表しています。

Technically, it’s not my fault.
(厳密には、私のせいじゃない)→責任逃れ・言い訳感が出ることも多い表現です。

 英語の technically は、日常会話でもビジネスでもよく使われる便利な副詞で、主に 「形式的には」「厳密に言えば」「技術的には」 の3つの意味で使われます。ニュアンスが少しずつ違うので、場面ごとに整理してみましょう。

1. 「厳密に言えば」「形式上は」

 最もよく使われる意味で、一般的な理解とは少し違う“ルール上・定義上”の事実を指摘する時に使います。

  • Technically, he’s my boss, but we’re the same age and we hang out like friends. (厳密に言えば、彼は私の上司だけど、同い年だし友達みたいに遊んでいる)

  • Technically, the store closes at 8, but they usually let people in until 8:10. (形式上は店は8時閉店だけど、だいたい8時10分までは入れてくれる)

  • Technically, you’re right, but that’s not how people usually say it. (厳密にはあなたが正しいけれど、普通はそうは言わない)

  • Technically, you can park here, but people usually avoid it because the police check a lot.(厳密にはここに駐車できるけど、警察がよく見回るからみんな避けている)

  • Technically, this is food…but I don’t eat it.(形式上は食べ物だけど…私は食べないね)→名目上はそうだけど実は違うという皮肉

  • Technically, a tomato is a fruit.(トマトは厳密に言えばフルーツだ)→植物的な定義(形式)ではそうだけど、料理(現実・実感)としては野菜だよね

2.「技術的には」「専門的には」

 技術・専門知識に関する話題で、技術面の観点から言うと、という意味。私たちからすると、この意味が最も自然ですが。

  • Technically, the machine can run without this part. (技術的には、この部品がなくても機械は動く)

  • Technically, the software supports that feature, but it’s still unstable. (技術的にはその機能をサポートしているが、まだ不安定だ)

3. 「一応は」「表向きは」(ややカジュアル)

 会話でよくある使い方で、“建前上はそうだけど実際は…” という含みを持たせるときに使います。相手に“Techinically, yes.”と言われたら「(理屈の上ではそうだけど)手放しではイエスとは言えない複雑な事情があるんだな」と察するのが正解です。

  • Technically, I’m on a diet, but I’ll have some cake. (一応ダイエット中だけど、ケーキ食べるよ)

  • Technically, we’re supposed to finish this today, but no one expects us to. (建前では今日終わらせることになっているけど、誰も本気でそう思っていない)

 technicallyが「裏では違う」という含みを持つのは、①対比がある時・・・but/ though/ actually/ in reality   ②常識・感覚とズレている時(時間、距離、ルール、分野、人間関係など)です。

意味 ニュアンス よくある場面
厳密に言えば ルール・定義に基づく正確さ 日常会話・議論
技術的には 技術・専門知識の観点 IT・科学・工学
一応は 建前と本音のズレ カジュアルな会話

 以上のことは、technicallyと対照的に、「実際問題としては」「実態としては」と言いたい時に使われるpracticallyin realityと一緒に考えてみるとよく分かります。

A: Is she the manager of this project?(彼女がこのプロジェクトの責任者なの?)

B: Technically, yes. But practically, Ken is the one making all the decisions.(形式上はそうだよ。でも実質的には、ケンが全部決定を下しているんだ)

A: Is the deadline today?(締め切りは今日?)

B: Technically, it was due at 5 PM. But in reality, as long as you submit it by tomorrow morning, you’ll be fine. (厳密に言えば夕方5時だったよ。でも実際問題として、明日の朝までに提出すれば大丈夫だよ)

 学習辞典における副詞の扱いは、きわめて杜撰で不十分です。おざなりの訳語を示すだけで用例も示さず、単に収録語数を稼ぐだけのために「追い込み」に入れて-lyと示すのみ、といった粗末な扱いが多く見られます。私が副詞の研究って面白いな、と気づいたのは、学生時代にロンドン学派Sidney Greenbaum教授の副詞の研究書を手にとった時でした。現代の副詞研究の不毛さを思い知らされたのは、John Sinclair教授の著書や論文を読んだ頃です。教授は膨大なコーパスを用いて、英語副詞の知られざる実態を実証的に明らかにしておられました。この「チーム八ちゃん」のブログでも、今までに、abundantly, actually, advisedly, basically, comfortably, evidently, identically,  increasingly, insanely, lamely, lazily, periodically, really, recently/lately, reliably, religiously,  strenuously, technically といった、あまり辞典には載っていない副詞の問題点を取り上げてきました。興味のある方は、右側のカテゴリーで「・英語語法」をクリックして、バックナンバー記事をご参照ください。❤❤❤

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