3年生7月進研模試で感心したこと

   I scored a goal!
   Well...technically, I scored a goal. Fad yelled Yessssss! from the
the sideline, and Mattie, who had arrrived with Mum, celebrated so 
loudly that you would have thought I had more talent than Bale and 
Messi combined. The truth is, Mo kicked the ball at me a little too
hard (that's his trouble――his left foot is, if anything, too 
powerful) and instead of receiving the ball and aiming for the goal
I turned away as if someone had kicked a hand grenade in my direction.
But the ball happened to hit my leg, and somehow bounced off me and
straight into the goal.
 It was a fluke. But a goad is a goal. 
 僕はゴールを決めた!
 えっと…形の上では、僕はゴールを決めたことになる。パパはサイドラインの外から
「よっしゃあああ!」と叫び、ママと一緒に来ていたマッティは、人が聞いたら僕が
ベイルとメッシを合わせたよりも才能があると思うんじゃないかいうくらいの大声で
ほめてくれた。本当のところは、モーが僕に向かってボールをほんの少し強すぎる感じ
で蹴って(これがモーの厄介なところなんだ、やつの左足は、どちらかと言うと、力が
強すぎるのさ)、そのボールをもらってゴールをねらう代わりに、僕は、まるで誰かが
僕の方に手榴弾を蹴ったみたいに背を向けちゃったんだ。でもボールはたまたま僕の脚
に当たって、どういうわけか跳ね返ってまっすぐゴールに入っちゃったんだ。
 まぐれだった。でもゴールはゴールさ。

  「3年生7月進研模試」の長文問題【3】において「問1 下線部(ア)で、サムが自身の得点について「形の上では」と言い直したのはなぜか。60字以内の日本語で説明せよ。ただし、句読点も字数に数える。」という問題が出題されました。この問題で私がとても感心したことがあります。本文中の英語technically「形の上では」と訳している点です。教師の間でも、technique(技術)――technical(技術的な)――technically(技術的に)といった理解が大半です。しかし、それでは正確に理解できないtechnicallyがあるのです。私はそのことをずいぶん前から指摘してきました。

 technicallyという副詞は、技術的に」「専門的に」という意味が一般の理解で、次のように使います:She’s a technically skilled pianist.(彼女は技術的に素晴らしいピアニストだ) なんだ、別に何の問題もないじゃないか、と思うかもしれませんが、実はこの副詞にはもっとやっかいな用法があるのです。

    It is technically illegal.

    This problem is technically complex.

のような使い方のtechnicallyです。ここでは「技術的には」という訳語では理解できませんね。近い日本語を選ぶとすれば「形式的には」「表面上は」「建前としては」「厳密に言えば」「実務上は」などとなるでしょう。この用法のポイントは「堅く言えば(形式的には)そうだけれども、裏では違うんだよ」というニュアンス(言外の意味)があることです。上記の英文でいえば、「それは厳密に言えば違法だ」(→だけど普通は違法と見なされない)「この問題は表面的には複雑だ」(→だけど実際には簡単に解決できる)のような含みがあるのです。ですから当然、次に続くセンテンスでは(   )内のような説明が出てくることが予想されますね。翻訳家の中村保男(なかむらやすお)さんは、このtechnicallyを、理論的には」などと意訳してもよいのではないか、と提案しておられました。理屈から言えばそうなる(しかし実際にはそうではないことがある)」「形の上ではそうなる」「表向きは一応そういうことになっている」というニュアンスですね。パラフレーズするならば、“If we went into more detail, you’d find that the following is true….”となるでしょうか。要するに「今言っていることは100%正しいわけではないけれど、そのことは当面の議論には関係ない」というニュアンスで使う単語なのです。ネイティブの人たちが、この単語の後に、“but~”事情が述べられるのを予期するのはそういう理由なのです。上の進研模試の問題では、その後に「サムはシュートを決めたのではなく、強烈なパスをよけようとして背を向けた際に、脚に当たったボールがたまたまゴールに入っただけだから」という裏の事情が説明されています。設問はここをまとめればよいわけです。高校生にはこの副詞technicallyの用法は難しすぎますから、日本語の設問の中で「形の上では」と言い直したのはなぜか?と工夫している所に実に感心しました。

 デビッド・セイン(David Thayne)先生の『100語で簡単!ネイティブに伝わる英会話』(成美堂出版、2017年)では、That’s technically the only way to make tofu.(それが一応は豆腐を作る唯一の方法だ。→でも、実際には別の方法もある)Technically, they are still married.(一応彼らはまだ結婚している。→でもいっしょには住んでいない)という用例を挙げておられました。厳密には~なのだが」「一応は~なのだが」という意味で、なんだか事情がありそうだという含みを伝えている副詞です。ポイントとして次の3つを挙げておられます。

① technicallyで、「厳密には~なのだが」という意味に。
② technicallyを使って、表現した内容とは違う意味を相手に伝える。
③ Technically, yes.で「一応はイエス。でも事情がある」という感じに。

 そのことは、OALDの用例 It is still technically possible for them to win (=but it seems unlikely).「彼らが勝つことはまだ一応は可能である(=でも実際には無理のように思えるけど)」からも明らかですね。technicallyの実際の使い方を示すのには良い例です。尊敬する山岸勝栄先生の『スーパーアンカー英和辞典』(学研)には「専門的[法的]に言えば,厳密に規則を守るとすれば」▲規則と実際にずれがある、あるいは何らかの抜け道があるというニュアンスで用いるという記述があり、さすがだなと思われます。Online gambling is technically illegal, but it is very popular. (ネット上のかけ事は厳密には違法であるが、広く行われている) ここまでこの副詞の実態に踏み込んで解説している辞典を私は知りません。

 学習辞典における副詞の扱いは、きわめて杜撰で不十分です。おざなりの訳語を示すだけ、単に収録語数を稼ぐだけのために「追い込み」に入れて-lyと示すのみ、といった粗末な扱いが多く見られます。副詞の研究って奥が深いな、と私が気づいたのは、学生時代にロンドン学派のSidney Greenbaum教授の副詞の研究書を手にとった時でした。副詞研究の不毛さを思い知らされたのは、John Sinclair教授の数々の著書や論文を読んだ頃です。教授はコーパスを用いて、英語副詞の知られざる実態を次々と明らかにしておられました。「チーム八ちゃん」のブログでも、今までに、advisedly, lamely, religiously, periodically, abundantly, reliably,  basically, identically, increasingly, recently/lately, strenuously, habitually, comfortably, lazilyといった副詞の問題点を取り上げてきました。興味のある方は、カテゴリーで「・英語語法」をクリックして、バックナンバーをご参照ください。❤❤❤

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