今から10年前の、2015年5月7日(木)、BSフジ「LIVE プライムニュース」で『松下幸之助(経営者)の“成長とイノベーション”』という特集が組まれ、興味深く見たことをはっきりと覚えています。あの時はまだ反町 理(そりまちおさむ)キャスターが進行でバリバリ活躍しておられた頃で、舌鋒鋭く切り込んでいく醍醐味のある番組でした。「中居君問題」の余波でパワハラが発覚して姿を消してしまわれたのはかえすがえすも残念です。今は台本通りの進行で深みがなく全然面白くありません(けど見ていますが…)。その時のゲストは松下政経塾第一期生の野田佳彦(前内閣総理大臣・立憲民主党代表・衆議院議員)さんと、私の尊敬する故・渡部昇一(評論家・上智大学名誉教授)先生でした。
戦後、驚異的な高度経済成長を遂げた日本。その立役者の一人が松下幸之助さんでした。“経営の神様”と称されたその手腕は自社の発展のみならず、出版業(PHP)や松下政経塾などを通じ、日本の将来を見据えた人材の育成にまで、努力を惜しみなく注がれました。「松下電器は、何をつくるところか?」と尋ねられたならば、「松下電器は人をつくるところでございます。あわせて電気製品もつくっております。」こういうことを申せと社員に教育しました。「経営の基礎は人である」という考えが松下さんの基本哲学でした。では、次の段階への一歩を踏み出せずにいる平成の当時、松下幸之助の遺した「教え」や「哲学」の中に活路は見い出せるのか?というのがこの番組の主要テーマでした。松下幸之助の教えを検証し、成長のカギと企業が社会に果たすべき役割、今後の日本の進むべき道筋を考える、というとても有意義な番組で、松下幸之助の肉声を交えながら、彼の教えの今日的意義を改めて検証していました。
番組の最後に、お二方から提言「今、松下幸之助に学ぶべきこと」が語られました。野田さんは「素志貫徹」。素直な心をもって最後まで粘り強く初志を貫き通すことが成功の秘訣だということです。松下さんがいつも言っておられたのは、「素直な心」。「素直な心で衆知を集めろと。素直な心がどんな世界でも一番役に立つ根源です。政治家もそう。その天才が松下さんだと思う。見るもの全部に学ぶ。悟るという姿勢です。」と。一方渡部先生の方は、「学校の成績万能でない知力がある」でした。「知力が今の学校で図れるような勉強の世界は重要で、そういう知識レベルが高いことが文明国だが、それとは違う知力があることを学校の先生も頭の片隅に置いておくべき」とコメントされたのです。学歴のなかった松下さんは夜間の中学校に入って、500人ぐらい生徒がいたうち、300数十人が卒業する中、175番目ぐらいの成績でした。二つの知性、IntelligenceとIntellect、松下さんはどちらの方か?と問われた際に、渡部先生は、Intellectです、と即答されました。昔から、学校は出来るくせに愚かな人をたくさん見てきました。学校はできないけれど賢くて成功する人も見てきました。渡部先生はそれはどういう訳なのかと真剣に考えてみました。ハマトンという人が書いた本(『知的生活』)で「インテリジェンス」(Intelligence)と「インテレクト」(Intellect)を区別していました。インテリジェンスとはIQテスト、人から計ってもらえる知力、計りうる知力です。対してインテレクトは計れない知力で、計りようがありません。インテリジェンスというのはコツコツと積み重ねてダチョウのように進んでいきますが、インテレクトはそんなのは関係なく、鷲がすうーっと空高く飛ぶように飛んでいくものです。そういう本のことを紹介して、松下さんの知力はインテレクトだと伝記にも述べられたのでした。松下さんの考えは、新入社員への訓示の中にも見ることができます。
【1959年 大卒定期採用者への訓示(当時64歳)】
皆さんのもつ職能以外にですね 松下電器の社員として社会に対してどういう責任感をもつかということが相当大きなもんであるということをですね、この際自覚をしていただきたい。全てはそこから始まっていくだろうと、こう思うんですね。我々がいかにいい仕事をしようと、いかに悪い仕事をしようと、社会と離れては存在する価値がない。全部社会に関連してですね、我々の力というもの、我々の活動というものが有意義になるわけでありますから、そのことがですね、いちばん私はもう大事なもんだと思うんですね。松下電器は やはり社会の一つの大きな機関ですね、「公の機関」である。だから「私の機関」じゃないわけ。この会社はですね、やはり社会の公器である、公の製造機関であると。この会社に働く一切の人はですね、その社会の公の機関を預かっているという責任感に徹しなくちゃならんかと思うんですね。工場一つ建てるのもですね、この会社が一定の利益をあげるのもですね、一切がそういう観点に立って判断され、また許されるものであると、私はこう思うんです。会社が単にですね、会社のために利益をあげるということは公の機関としての立場からいくとですね、それは許されないことであると。会社の利益をあげるということも大事なことでありますが、その大事なことは、公の機関であるということを前提として会社が利益をあげることを許される。会社自身を私的に考えて会社自身のために、これだけ儲けないかんということになると、だんだん卑屈になってくるんですね、卑屈になってくる。今日そういう考えは許されないと 私は思うんですね。そうでありますから、松下電器は公明正大に経営していこうと、堂々と経営していこうと。非常に社会に対して強いものをもって経営していこうということが同時に考えられるわけですね。それはこの会社が公の機関であるという認識のもとに社会にものを言うていこうというわけですね、早く言えば。皆さん、そんなことはもう十分に承知しておられると思うけれどもですね、そういう考えをもってやっているということを皆さんに申しあげておきたいと思います。
実に興味深い番組でした。この番組のエッセンスを詳しく活字で見たい方は、コチラで今でも追うことができます。♥♥♥


