最前列に座る

 私は学生時代から講義では、最前列に座るようにしていました。教員になってからも研究会などでも最前列に座っています。かつて河合塾・広島校舎長だった講演の名手故・松井悦夫(まついえつお)先生の「大学入試説明会」でも、毎回一番前の座席に座り追っかけをしていました。おかげで名前を覚えてもらえ、親しくさせていただき、その後河合塾・本部長になられてからも何度も助けていただくことができました(⇒「松井悦夫氏への最後の手紙」に詳しく書きました。コチラです)。こんな言葉を聞いたことがあります。「後ろの席に座ってはダメだよ。前が空いているでしよ?前の席は『アリーナ席』で価値が高いんだよ。だから、前の席に座らないともったいないよ」「最前列での1回の受講は、最後列の「10回分」に値するよ」席を変えただけで、学びの深さが断然変わるのです。

 今の大学では、先生の話が聞きやすい「最前列」はあまり人気がなく、座ることに抵抗を感じる学生が多いようです。理由を聞いてみると、最前列は先生に見られやすく、当てられやすい、目立ちたくない、コロナの飛沫が飛ぶ、やる気をアピールしたくない、と言います。私は席を変えるだけで、学びの深さが断然変わると思っています。私の考える最前列(アリーナ席?)と「最後列」の違いは、次の「4つ」です。

【1】 当事者意識が芽生える ・・・一番前だと、まるで講師の先生が「自分」に向けて話しかけているように感じるので、人ごとではなく「自分ごと」として話を真剣に聞くことができます。そしてその結果、学びをすぐに実行することができます。

【2】 周囲にいる人の意識が違う ・・・後ろの席にいる人たちは、「勉強なんて面倒だ、面白くない」と思っている人が多く、講師の話を真剣に聞くことはなかった気がします。愚痴をこぼしたり、私語をしたり、寝ている人もいました。けれど、最前列にいる人たちは、講師が目の前にいますし、何かを学び取ってやろうと、そもそも前向きな人が多いので、気持ちが緩むことはありませんね。またよく当てられるので、一生懸命に聞くことにもなります。

【3】 講師に顔を覚えてもらえる ・・・最前列に座っているだけで「情熱のある人物」だと思ってもらえます。また、講師に話しかけられることも多いので、顔を覚えてもらいやすいのです。ある億万長者は、「前の席に座る人たちのほうが、社会で活躍する伸び代が多く、日本の発展につながる」という理由で、懇親会では、「前の席に座っていた人」と飲むという話を聞いたこともあります。

【4】 後ろでは分からない講師の細かな「表情」が見える ・・・後ろの席では聞こえない「小さな声」「息づかい」「ちょっとした冗談」「無意識のしぐさ」「情熱の温度」が分かり、後ろの席では気が付くことのない、見え隠れする一流の人の「細部の表情」が見えます。したがって、臨場感を伴いながら、より深く学ぶことができるのです。

 最前列での1回の受講は、最後列の「10回分」に値します。ですから、会議や講演に出席する時は、迷わず「最前列」に座りましょう。たいてい最前列は空いているものですから〔笑〕。 中心人物(講師)に、できるかぎり近づいて話を聞いたほうが、より多くの「学び」を持ち帰ることができるのです。ということで、生徒達には大学に行ったら、最前列に座って講義を聴くんだよとアドバイスしています。

 まだ若い頃に、島根県立松江南高等学校で教えていた時代、浪人生のための補習科で、合格に向けて必死に勉強する生徒の成績の一年間の「伸び率」をさまざまな角度か ら分析をしたところ、実に面白いことが分かってきました。ここに紹介された 数字は、何も浪人生だけに当てはまるというのではなく、現役の生徒の皆さんの道しるべにもなるはず、と思っています。日頃のチョットしたことが、いろいろな波及効果を生むことがある、という典型的な例ですね。まだ5教科800点満点だったセンター試験時代の数字です。やはり座席の前・後が大きな影響があることが見て取れます。


●体育系部活動の生徒 ⇒ 5教科偏差値の伸び  +34.3点              
●部活動なしの生徒  ⇒ 5教科偏差値の伸び  +29.3点
◆座席の最前列にいた生徒 ⇒5教科偏差値の伸び +32.0点
◆座席の前2列目にいた生徒⇒5教科偏差値の伸び +30.0点
◆座席の最後列にいた生徒 ⇒5教科偏差値の伸び +23.5点
◆座席の後2列目にいた生徒 ⇒5教科偏差値の伸び +23.5点
▲無遅刻の生徒 ⇒ センター試験平均点  568.7点
▲遅刻した生徒 ⇒ センター試験平均点  517.5点


 どうです?面白いでしょ?この数字の裏にも、それぞれもっともな理由が隠れています。それを考えてみてください。今教えている浪人生のクラスでも、毎年最前列に座っている生徒の合格率は高いようですよ。♥♥♥

 

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