お金を追うな、仕事を追え!

 私が最近のぼせて読んでいる、経営コンサルタントの小宮一慶(こみやかずよし)さんの本によく出てくる言葉がこれ、「お金を追うな、仕事を追え」です。小宮さんの人生の師匠である故・藤本幸邦老師(曹洞宗・円福寺の住職を務めるかたわら、児童養護施設を設立するなど社会福祉に尽力された方)のお言葉です。お金を追いかけているうちは一流にはなれません。もちろん、お金を全く稼げないというのもまた一流ではありませんがね。「良い仕事をして、その結果、お金を稼ぐ」という気持ちを持つことが大切です。この順番が大切なんです。もっと言えば、お金を稼げるくらいの良い仕事をしなければならないのです。良い仕事を通じて周りの人に喜んでもらい、さらにそれをもっと工夫して、多くの人に喜んでいただく。そうすれば、仕事は間違いなく楽しくなってきます。それが仕事に対する正しい考え方だと私は思っています。良い仕事を一生懸命追いかけていれば、お金や地位や名声などは後からついてくるものです。私もその思いで、今までずっと誠心誠意仕事をしてきました。お金に執着することは一切ありません。私は人にご馳走することも多いのですが、本当に不思議なことに、おごった後は、思いもかけないところからお金が転がり込んだりします。とにかくいい仕事を追いかける。これに尽きます。お金に執着しないことです。

 「先義後利」もこれと同じ考え方です。これは中国の古典『孟子』に出てくる言葉で、人としてあるべき道義である「義」を何よりも先に考え、自らの利益となる「利」については後々考えよ、という意味です。ビジネスで言えば、良い商品やサービスを通じて「お客様第一」で社会に貢献するという義を追い求めれば、その結果として利益がついてくるということです。あの明治時代の大実業家・渋沢栄一は、この考え方に基づいて、500の営利法人、600の非営利法人を成功させています。 この「先義後利」ということですぐに思い起こされるのは、クロネコヤマトの創業主・小倉昌男(おぐらまさお)さんでした。彼は「サービスが先、利益は後」と喝破しました。百貨店など大口の荷物を運ぶのが物流企業の王道とされた当時、電話一本でドライバーが各家庭を回り、荷物を集めて、次の日には相手の手元に届ける宅配サービスを始めました。昭和51年1月23日のことでです。宅配事業に難色を示す社員が多くいる中、小倉さんは反対派をこう説き伏せたといいます。「これからは、箸でひとつずつ豆を移すんだね。それが宅急便だよ」「宅急便」初日に扱った荷物は、わずか11個でした。それが初年度には170万5195個もの荷物を配送することになります。小倉さんは「宅急便」の事業開始にあたって「サービスが先、利益は後」というスローガンを掲げました。百貨店配送の経験から、大和運輸は地域の住所を隅々まで把握しており、サービスの良さで他社を圧倒する自信があったんですね。事業は大成功、たちまちにして全国に展開します。今や国内全体で、荷物が年間50億個に届こうとしていて、年商1兆円の大企業に成長させました。「サービスが先、利益は後」すなわち「先義後利」ということですね。私はこの話を聞いてからというもの、宅急便クロネコヤマト」ひとすじです。

 「お金を追うな、仕事を追え」という言葉は、一見すると「稼ぐことを後回しにしろ」と言われているようで、綺麗事に聞こえるかもしれませんが、実は非常に合理的で現実的なキャリア戦略でもあります。経済の仕組みにおいて、お金は「提供した価値の対価」として支払われます。目先の利益や給料の額面だけに執着し、仕事の内容や質を軽視する。目の前の課題をどう解決するか、どうすればもっと喜ばれるかに集中する。結果として、高い価値を提供できる人(仕事を追った人)には、後から自然と大きなお金がついてくるという考え方です。現代において、お金よりも重要視されるのが「信用」です。「この人に頼めば間違いない」という評価(=仕事を追い求めた結果)が積み重なると、単価が上がったり、より大きなチャンスが舞い込んだりします。お金だけを追いかけて「手抜き」や「不義理」をすると、一時的には稼げても、長期的な資産である信用を失ってしまいます。「お金」を基準に選ぶと、今の自分が持っている能力でいかに楽に稼ぐかという発想になりがちです。一方で「仕事」を基準に選ぶと、自分が成長できる環境や、やりがいのある困難に飛び込むことになります。難しい仕事を完遂することでスキルが磨かれ、結果として「代わりのいない存在」になり、長期的にはより多くのお金を引き寄せることになります。結論として 「お金を追うな」とは、決してお金を否定することではありません。「お金の出処である『仕事の質』にフォーカスすることが、結局は一番の近道である」という、プロフェッショナルとしての成功法則を説いているのです。長く成功し続けている繁栄企業を見れば、そのことは明らかでしょう。

 何か仕事をする際に、いくらになるか?お金の計算ばかりしている人がいます。ちょっとそれは割に合わないと思えば、手を抜いたり、断ったりする。そういう人には、大きな仕事を任せようという気にはなりませんね。私が尊敬するパナソニック創業主の松下幸之助さんは、「仕事の喜びをお金に代えられると思っているうちは、本当の仕事の喜びを知らない」とおっしゃっていました。そして、とても逆説的ですが、お金に代えがたいほどの仕事の喜びを知った人の方が、お金を稼げるようになっているのです。お金云々ではなく、仕事をすることが好き。そして実際に良い仕事をしている。そういう人物のところに仕事は集まってくる、そしてその結果お金も稼ぐことができる。お金を稼ぐ人はお金を追わない。良い仕事に集中する。そうすれば、楽でない仕事も楽しくなる。お金はあくまでも結果なのです。

 多くの外国の英語学者の方とご一緒に仕事をしてきましたが、契約社会という文化の違いからか、お金のことにうるさい人が多かった印象です。事細かくお金の条件について「これをしたらいくらくれるか?」「支払いがないので、解答できない」「仕事の報酬はいくらだ?」と、辟易することも度々でした。プロだからお金にこだわるのは当然と言えば当然なんですが、あまりにもお金、お金と言われるとちょっと嫌になります。しかしただ一人だけ、例外がおられました。アメリカ言語学会の会長もなさった言語学者、故・Dwight Bolinger(ドワイト・ボリンジャー)博士です。若い頃から、幾たびと質問をするとすぐにお返事が返って来ます。私たちの『ライトハウス英和辞典』(研究社)の編集顧問にお迎えして、同辞典の記述を細かく見ていただきましたが、お金のことを言われたことは一度もありませんでした。本当に言葉の世界を愛しておられる、それを極めようとしておられる先生で、尊敬できる先生でした。⇒私とボリンジャ-先生の出会いの紹介はコチラです  今日は、「お金を追うな、仕事を追え!」というお話しでした。♥♥♥

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