「損して得取れ」とは、私がよく教室でも話すことです。稲盛和夫さんが説く「利他」の気持ちで臨むならば、必ず自分のところへも嬉しいことが返ってくるものです。人に尽くすことの素晴らしさを、改めて感じているこの頃です。今日はそんな例として、YKKを取り上げてみましょう。
YKKというのはみなさんご存じのとおり、ファスナーの大会社です。名前のYKKは吉田忠雄社長の起こした会社で「吉田工業株式会社」の頭文字を取って名づけられました。富山県に会社の拠点を置いていました。昭和48年、中東戦争に端を発する「オイルショック」ではYKKにも大きな打撃がありました。「石油が入って来なくなり商品の生産や輸入が出来なくなる…」という憶測から、国民は大パニックに陥ります。スーパーからトイレットペーパーや洗剤が消え、諸物価が高騰し、便乗値上げが相次ぎました。YKKでもファスナーの材料費が2倍以上に跳ね上がり、苦境に陥りますが、吉田社長は頑として安易な値上げに走りませんでした。彼は、「YKKは、たとえ100億円損しても値上げはしない」と宣言します。「今のような狂乱物価が長く続くはずはない。原材料の値上がり分はYKKが損をかぶって売る」「販売の皆様は在庫を皆無にしてユーザーに尽くして下さい。さらに値上がりするのではないか、在庫を持っていたらえらく儲かるのじゃないかというが、そうではなくて、いまこそ裸になってユーザーにお尽くしする年であると、私は考えます」「今は損をしても、消費者にサービスする」と、堂々と宣言したのです。
吉田社長の予測通り、事態は数か月で沈静化に向かい、実際には40数億円の損失で収まったといいます。マスコミでもこの毅然とした姿勢が大きく報道され、YKKの信用がより一層高まったといいます。日本国内90%以上、世界でも50%近いシェアを誇るYKKの飛躍は、こんな出来事にその基盤を見ることができるんですね。「損して得取れ」 そういえば、以前紹介したクロネコヤマトのモットーも、「サービスが先、利益は後」でしたね。⇒コチラ もう一度かみしめてみましょう。


