「防人の詩」と「群青」

 以前に、さだまさしさんが『二百三高地』という日露戦争をテーマにした東映映画の主題歌を頼まれて、防人の詩」(さきもりのうた)という名曲を書き下しました。私の大好きな曲でもあるんですが、評論家たちからは「戦争を賛美している」「好戦的」「右翼」などと書かれてバッシングを受け、ずいぶんといろいろな雑誌で叩かれたものです。この歌のどこが「戦争を賛美」なんでしょうかね?さださん自身は「いまの緊迫した世界情勢の中で、日本という国を愛するたった一人の”人間”として『自分の中の万葉集』『自分の中の防人の歌』というつもりでつくりました」と述べています。「いさなとり 海や死にする 山や死にする 死ぬれこそ 海は潮干て 山は枯れすれ」(万葉集)という歌に触発されて作ったと言います。

さだまさし3

 それでも評論家の山本健吉さんは、「君、あれは挽歌だよ。日本の詩歌の基本は挽歌だ」と讃え励まして下さって、さださんの心の支えとなりました。また辻 邦生さんは、「いったいあの若さでこれほど深い宇宙的な悲しみを表すことができるものだろうか。それは本当に深い深い人間の感情の根源にぶつかることなくしては歌う事のできない詩であり、メロディであった」と最高の賛辞を贈りました。分かる人たちにはちゃんと伝わっていました。

 まあ、さださんほどマスコミにいろいろな叩かれ方をした歌い手は珍しいと思います。グレープ時代(「精霊流し」「無縁坂」)では『叙情派フォークの旗手』と持ち上げられました。ところが、ソロになってからは「雨やどり」で『軟弱歌手』と言われ、挙句の果てに「関白宣言」では『女性蔑視論者、翌年の「防人の詩」では『右翼、「しあわせについて」では『左翼』のレッテルを貼られ、こっぴどく叩かれました。彼はブレることなく、黙々と歌い続けました。

 この「防人の詩」の直後、東宝映画『連合艦隊』の主題歌を、谷村新司さんでお願いしたいと依頼がきました。さださんのことを「あれで叩かれるとは世の中おかしい」と擁護した谷村さんは、すぐ「やりましょう」と返事をします。いろい谷村新司ろな雑誌から、いろいろな叩かれ方をするかもしれませんよ」と言われましたが、谷村さんは「望むところじゃないですか」と答え、敢えて火中の栗を拾い、さださん以上に叩かれたことがありましたね。戦争を賛美する人などいないし、いいと思っている人など一人もいない。それでも起こってしまうのが戦争。谷村さんは、戦争があるがゆえに、親よりも先に逝ってしまう子どもたちの悲しさ・運命を歌にしました。それが「群青」(ぐんじょう)です。哀しい旋律が胸を打ちます。谷村さんの数ある曲の中で、私が一番好きな曲です。

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