あの伊勢丹のカリスマ・バイヤーだった藤巻幸夫さん(2014年に死去)が大好きだった言葉が「KKD」です。伊勢丹に新卒で入社。誰よりも早く出社して誰よりも遅く帰り、最初の3年間で「モノを作って売る」ということの基本を体で徹底して覚えました。その後の活躍はみなさんご存知の通りです。「KKD」というのは、経験・勘・度胸の3つです。注意したいのは、単に勤務年数が長いだけのことを「経験」とは呼びません。毎日仮説・検証を繰り返した蓄積を「経験」と呼びました。この経験を積み重ねるうちに「勘」が身についていきます。理屈だけでいけば判断がつきかねる問題を考えるときに、経験に裏打ちされた「勘」が活きてきます。そして「勘」によって決断を下したら、最後は「度胸」で実行するのです。
あの経営の神様・松下幸之助さんも、経営者に欠くことのできない条件として、「体験」「知識」「カン」「意思決定」「実行力」の五つをあげ、「経営的なカンが働かないということでは、経営者としてはもうダメだというふうに考えていい」と言いきっています。では、どうやったらカンを養うことができるか?松下さんは「これはやはり、経験を重ね、修練を積む過程で養われていくものだと思う。昔の剣術の名人は、相手の動きをカンで察知し、切っ先三寸で身をかわしたというが、そこまで達するには、それこそ血のにじむような修業を続けたのだろう。経験を積む中で、厳しい自己鍛錬によって、真実を直感的に見抜く正しいカンを養っていかなくてはなりません。カンと科学は車の両輪のようなものです」 「どんな科学者でも、カンの働かない科学者はダメだといいます。偉大な発明をしたエジソンのような人でも、その発明は、ふっと浮かぶひらめき、カンによっています。そのひらめきによって、よりよい科学というものをつくりあげているわけです。そういう意味においても、カンと科学というものは、やはり車の両輪だと思います。カンにかたよってもいけないし、一方、数学とか科学にかたよってもいけない。その二つを常に両輪のように使っていく必要があるという感じがするのです。」
と、言っています。なるほど。最近、このことを述べた松下幸之助さんの名著『実践経営哲学/経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』(PHPビジネス新書)が復刊されています。久しぶりに再読しました。何度読んでもいいことが書いてあります。
私たち進学校の受験指導・進学指導においても、豊富なデータは重要ですが、長年の経験に裏打ちされた「カン」の重要性は見逃すことができません。


