唐池恒二さんの哲学

 最近、同僚とよく「JR九州の特急列車は素敵だね」という話をします。私の大好きな「ゆふいんの森」「かもめ」「ソニック」といった九州を走る9つの観光列車は、とても魅力的で旅心を掻き立ててくれます。もちろんデザイナーの水戸岡鋭治(みとおかえいじ)さんの存在が大きいのですが、もう一つ、元社長・現会長の唐池恒二(からいけこうじ)さんの「リーダーシップ」も忘れてはなりません。唐池さんの情熱がなかったらあの「ななつ星」も実現しなかったでしょう。水戸岡さんの哲学についてはこのブログでも詳しく取り上げたことがありますので(⇒コチラコチラです)、今日は唐池さんについてです。

 唐池さんが、JR九州の社長に就任したときの挨拶で明示した行動哲学は、次の三つでした。(1)誠実 (2)成長と進化 (3)地域を元気に  この哲学にしたがって、あの一連の新規事業を成功に導いたわけです。唐池さんの言う「誠実」とは二つの意味があります。一つは「嘘、偽りやごまかしがなく思いやりのある行動や心の持ち方」、もう一つは、「手抜きをしない、手間をかける」ということです。今も大人気の「ななつ星」を思うと、このことがよく実感できます。

IMG_5687 唐池さんの三冊の著書、『JR九州・唐池恒二のお客さまをわくわくさせる発想術』(ぱる出版、2011年)、『仕事学のすすめ』(NHK出版、2012年)、『やる!~唐池恒二の夢見る力が「気」をつくる』(かんき出版、2014年)を読みましたが、次々と新規事業を立ち上げ、それを成功に導く原動力が分かる気がします。唐池さんが仕事の現場で最も重要視するのが、「気」です。ビジネスにおいては、「気」をたくさん集めた者が勝利・繁盛をするというのが持論です。そのためのポイントが4つあります。(1)スピード、(2)声、(3)緊張感、(4)貪欲さ、この4つの「気」が集まれば職場が元気になり、ビジネスは必ず成功する、と念仏のように唱えておられます。若い頃から、さまざまな職場で経験したことの集大成がこの4つだと言います。

 唐池さんの本を読んで、心に残った言葉があります(3冊すべてに出てくる話です)。唐池さんが船舶事業部で、高速船ビートルの仕事をしておられたときに、ベテラン船長さんから学んだことです。「唐池さん、船が嵐で高波、荒波に出くわすときがありますよね。そのときに、どういう舵取りをすると思いますか?」―「どうするんですか」―「どんな船でも高波、荒波が来たら、正面から向かっていくんです。横に逃げようとしたら、いっぺんに転覆してしまう。後ろに逃げようとしても波が寄せてくる。追い波といって、船の後ろから波がくるので、これも転覆する。だからまっすぐ進む。荒波に向かって真正面から進む。正面に舵を向ければ船は転覆しない」 押し寄せる荒波に対して、船首を真正面に向ける、1万トンの船であろうが、5トンの船であろうが、あるいはどんな小船であろうが転覆しない。普通は高波が正面から来れば、怖いものだから船体を逸らそうとしてしまいます。しかしそれだとどんなに大きな船であっても、横から波を受けて転覆してしまう。この言葉・教訓を唐池さんは、その後の仕事や交渉ごとに生かしたと言います。どんな困難な問題でも、真正面から受けて決して逃げることをしない、それが問題解決の近道だ、というわけです。これは参考になりました。

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