「四月バカの日」の英語は?

  毎年4月1日になると、いつも思うことがあります。「四月バカの日」に相当する英語表現には「揺れ」が見られるのです。辞典を調べてもらえばわかりますが、圧倒的に多数が、April Fools’ Dayと(複数形)見出し語にたてています。これを[A型]としておきましょう。ところが、英米の新聞や百科事典を見ると、[B型] April Fool’s Dayが(単数形)よく使われているのです。教員になりたての頃に、このことに気づいて、ずいぶん追いかけたことがあります。4月1日付けのアメリカ・イギリスの新聞を取り寄せて、細かく検討した時期がありました。そのことをまとめたのが、八幡成人  「語法ノート April Fool’s Day」  Lexicon, No.17(1988)(岩崎研究会)です。もう今から三十年も前のことでした。しかしそこで指摘した問題点に関しては、今も事情は変わりません。

◎和英大辞典(研究社) ルミナス和英辞典(研究社) ライトハウス和英辞典(研究社) アドバンスドフェイバリット和英辞典(東京書籍) エースクラウン英和辞典(三省堂) April Fools’ Day
◎オーレックス和英辞典(旺文社) 新和英中辞典(研究社)April[All] Fools’ Day
◎グランドセンチュリー和英辞典(三省堂) 英和大辞典(研究社) リーダーズ英和辞典(研究社) April Fools'[Fool’s] Day
◎ジーニアス和英辞典(大修館) フェイバリット英和辞典(東京書籍) スーパーアンカー英和辞典(学研) ウィズダム英和辞典(三省堂) ライトハウス英和辞典(研究社) April Fool’s[Fools’] Day

  当時、私たち『ライトハウス英和辞典』の編集顧問ロバート・イルソン博士に調べてもらったところでも、イギリスでは両型が見られるとのことでした。アメリカ辞典界の老舗メリアム・ウェブスター社ミッシュ編集長(当時)によれば、同社の用例ファイルでは、[A 型][B型]の比率は3:1だということでした(ただし用例が少々古いので現代英語を反映しているかどうかは疑問だと断っていらっしゃいましたが)。1987年に八幡がアメリカの4月1日付けの新聞12紙を調べたところでは、逆に2:3で[B型]の方が多かったんです。私たちの編集顧問・故ボリンジャー博士ご自身の好みも[B型]だということでした。で博士は、地元新聞(Palo Alto)の編集者たちに聞いてくださったんですが、やはり同様の結果が得られました。句読法の研究で知られるCharles F. Meyer教授(マサチューセッツ大学)にご協力をいただいて、先生のクラスの学生の反応を調査してもらいました。[B型]を好む者13名、[A型]を好む者が8名、ということでした。[B型]の方が一般的のようです。少なくとも[B型]が無視できなくなっていることは、次の記述からも分かりますね。

  The occasion celebrated on the first day of April is officially called April Fools’ Day in the United States. Each word of the titled is capitalized and the fool is plural possessive. The singular fool’s is listed as a variant spelling. However, this is not standardized and the main listing seems to vary from dictionary and dictionary (i.e., whether the plural or the singular is listed as the main spelling). Actual usage seeems to support this non-preference, with both sepllings being used about the same frequency.  (Grammaristより)

 この件については、あまり英米の辞書は役に立たないのですが、最新のOxford Advanced Learner’s Dictionary (9th ed. 2015)では、見出しがApril Fool’s Dayとなっていました。グーグルで検索してみても(Google Ngram Viewer)、やはり[B型]の方が[A型]よりも優勢となっています。私はこのような実態を受けて、『ライトハウス英和辞典』(第6版)では、上記のように扱いました。

 現在優勢なはずのApril Fool’s Dayという綴りが、英和・和英辞典からすっぽりと抜け落ちているのは一体どうしたわけなんでしょうか?「孫引き」ではなく、裏付けを取ることの重要性を忘れてはなりません。どうしてこのような異形が生まれてきたかについての歴史的背景や、そして優勢になる訳については、コチラに詳しく出ています。❤❤❤

 

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