owing to

 松江北高の3年生の授業で使っている『システム英作文』(桐原書店)の1課「無生物主語」Advancedにこんな作文問題がありましてね。生徒たちはいろいろな英語で書いてきてくれました。

●その事故のために私は学校へ行けなかった。(中央大)
That accident prevented me from going to school.
I couldn't go to school because of/ due to/ owing to the accident.

 どれも正しい英語で○です。ただ生徒たちに言っておきたいのは、最後のowing to~という表現です。これは多くの受験参考書などに、群前置詞」としてbecause of ~= owing to~ = due to~ = on account of~「~のために、~が原因で」と羅列して書いてあるので、そのまま覚えているからでしょう。owingというのは「借りがある、恩義がある」という意味の動詞oweから来ている単語なんですが、堅い表現で、「告知文・新聞・科学雑誌・公文書でしか目にすることはありません」(クラフト)。口語表現ではないのです。日常会話ではbecasue ofdue to(前者よりもちょっと堅い)を使います。そのことは、LDOCEが“formal”と記載していることからも明らかですね。私たちの『ライトハウス英和辞典』(第6版)には《格式》とスピーチレベルを明示しています。OALDの最新版は無レーベルでよろしくありません。Macmillan English Dictionaryには注記があって、”Both owing to and due to mean ‘because of’. They are used in exactly the same way, except that due to can be used after the verb ‘to be’.”とありますが、完全にスピーチレベルを無視した注記です。Michael Swan,  Practical Enlish Usage (4th edition, 2016)によれば、”Due to is more common than owing to.”とあります。尊敬する山岸勝栄先生の『スーパーアンカー英和辞典』(学研)では、改まった堅い表現であるネクタイマークを示した後に、because ofまたはdue toのほうが一般的」と注記を入れています。さすがですね。Google Books Ngram Viewer(52億冊の本から5000億語を集めた巨大データベース) を使えば、数百年前から今日までの書籍に現れる単語(2語以上ならそのフレーズ)の流行り廃りを、時系列の「折れ線グラフ」で見ることができます。検索窓にbecause of, due to, owing to(複数あるならカンマで区切って)と入力すると、その単語の年代別の出現頻度の推移が一望できます。やってみてください。一目瞭然に上で述べたことが裏付けられます。⇒コチラです

 先日、やはり『システム英作文』の「仮定法」で出てきた「もうそろそろおいとましなければ」を、「模範解答」では、It’s (high) time I was leaving. / It’s (about) time I was leaving.と示しています。たいていの受験参考書にもそのように示してありますね:「timeの前にhighやaboutを置くことによって、それぞれ「とっくに…する時間だ」、「そろそろ…する時間だ」という意味になる」(『エイブル』) 「timeの前に形容詞のhighや aboutをともなうこともある。It’s about time we started.  (もうそろそろ始める時間だよ) It’s high time we started.(もうとっくに始める時間だよ)」(『ゼスター』)稲田一『図解 高校3年間の英語を10時間で復習する本』(中経文庫、2017年)には「timeの前に「about(そろそろ)」「high(とっくに)」が入る場合がある」  両方ともspoken/ informalと辞書には記載があります。しかしながら、普通のネイティブ・スピーカーの反応はこのような意味の違いを認めません。high timeというと(南部の人がよく使う、年配の人がよく使う、というネイティブも)、何か古めかしい表現という感覚で捉えています。aboutが普通の表現です。

 日本人学習者には難しいこのようなスピーチ・レベルを、分かりやすく解説した面白い本が最近出ています。キャサリン・クラフト『その英語、ちょっとカタすぎます!』(DHC、2017年9月)がそれです。日本人が英語を話すときの最大の弱点が「口語表現を使いこなすこと」。見開き完結の楽しいエッセイで、楽しく口語表現が身につくように構成されています。名古屋在住のクラフト先生の『先生、その英語は使いません!』(DHC)『日本人の9割が間違える英語表現100』(ちくま新書)は英語教師必読の書です。とっても勉強になります。意外な発見があると思いますよ。ぜひみなさんにオススメしておきますね。❤❤❤

(追記)このような英語語法の問題にご興味のある先生方は、このブログの右にある「カテゴリー」「・英語語法」をクリックしてみてください。参考になる記事が出てくるはずですよ。私が辞典編集において、気がついた表現のコラム記事です。 

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