法月綸太郎さん

 松江北高の誇るべき第34期卒業生の一人に、日本を代表するミステリー作家の法月綸太郎(のりづきりんたろう)さんがおられます。当時の北高でもトップの成績で、現役で京都大学・法学部に進学し、京都大学推理小説研究会」で活躍されます。学生時代に書いた作品が、1988年に「江戸川乱歩賞」の第二次選考を通過した際に、本格派の大御所・島田荘司(しまだそうじ)さんの目に留まり、デビューを飾ります。密閉教室』(講談社ノベルス)という作品でした。卒業後銀行に就職されますが、退職して作家活動に専念されました。ペンネームの由来は、吉川英治の小説『鳴門秘帖』に登場する法月弦之丞からきているのだとか。 *ノベルス版、文庫版、ノーカット版あり  全部北高図書館に入れてあります。高校時代はエラリー・クイーンに心酔し(私も高校時代に彼の国名ミステリーシリーズにのぼせたものです)、北高図書館のミステリーを全部制覇し、島根県立図書館も制覇、当時殿町の今井書店2階にあった推理小説も読破したという、伝説の生徒さんでした。

 湖山北高校の3年生の教室の1つ、7R(ルーム)は、ある朝、不可解な現象に見舞われる。一番に登校してきた梶川笙子がドアを開けようと、開かないのである。担任の大神龍彦が力任せに開けると、そこには、クラスメイトの中町圭介が喉が切られ絶命していた。教室の窓は施錠され、ドアは内側からガムテープで“密閉”されており、更に不可解なことには、生徒たちの机と椅子が1つ残らず消失していた。7Rの生徒で推理小説マニアの工藤順也は、勇んで事件に取り組み始める。刑事の森は彼に一目おいて彼の捜査を認めるが、日頃から意見が合わない大神は「お前に現実の死を弄ぶ権利はない」と厳しい態度をとる。それでも、漫画家志望の友人・降旗や、自分の机がすり替えられている気がするという吉澤信子とともに、傾倒する推理小説に出てくる名探偵のように、順也は推理を重ねていく。周囲の困惑をよそに。

《注釈》湖山北高校と松江北高校、工藤順也と法月さんの本名・山田純也 を見ると奇妙な一致が。その他当時の松江北高の先生がたくさん登場します!

 これは当時の松江北高を舞台に、当時おられた先生をそのまま登場させながら、不可思議な殺人事件が起こるという設定でした。北高をあまりにも露骨に描写していたためか、当時の北高dsc07737では読んではならないという指導があったと聞きます。「荒削り」だとか、「人物描写が拙い」といった批判が批評家たちからは寄せられ、ずいぶん叩かれたと記憶しています。学生時代からデビューまでのいきさつについては、「作家の読書道」に詳しくインタビューが出ていますのでご覧ください。

    ちょうどその頃、私はライバル校の松江南高校に勤めており、本屋さんで偶然手に取ったこの本のあまりの面白さに、魅せられてしまいます。教えているクラスで「こんな面白い本がある!」と宣伝して回っていたんです。するとそんな矢先に、南高に法月さんのお母様が訪ねて来られます。「息子の著作を誉めていただいて、宣伝までしていただきありがとうございます」と、わざわざお礼に見えられたのでした。こんなきっかけがご縁で、以来、ずっと親しくさせていただいています。そのお母様からご寄贈いただいた本などを中心に、松江北高図書館には法月さんのコーナーが設けてあります。私が松江北高の図書部長を務めていた時、図書館報』第100号記念号には、執筆にお忙しい中をご無理を言って、後輩生徒たちに<特別寄稿>としてメッセージを寄せていただきました。これがとても素晴らしい文章で胸を打ちます。私には、こんな含蓄の深い文章はとうてい真似ができません。

 本を読むのは、知らない街を訪れるのに似ています。とりわけ十代の半ばから二十歳過ぎぐらいまでに読んだ本は、いつまでも記憶に残って、その後の人生の地図みたいな役目を果たすでしょう。これからあなたがどこまで旅をできるかは、その地図の大きさにかかっています。細かな縮尺や方角の狂いは後からいくらでも修正が利きますが、地図全体を見渡す視野の広さは、意外と若いうちに決まってしまうものです。最初は余白だらけでかまわないし、気に入った街を何度も訪れるのもいいでしょう。どんな街もそれだけで孤立しているわけではなく、世界に向かって開かれているからです。遠く離れた国でも、旅する者にとって、街と街はつながっています。本を読むことがそうであるように。     ―『松江北高 図書館報』第100号記念号  平成24年3月

 そんな法月さんの短編集が出ています。同時に、お師匠さんの島田荘司さんの短編集も出ました。名探偵傑作短編集』(講談社文庫)です。この2冊を買い込んで夏の夜長を乗り切ろうと思ったのが、去年の夏のこと。まだ「積ん読」になっています(笑)。そういえば、2016年度の京都大学の自由英作文の入試問題は、「積ん読」とは何かを説明し、それについてのあなたの意見を問う、というユニークなものでしたね。❤❤❤

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