東山魁夷『山雲濤声』

 9月8日(土)のテレビ番組「美の巨人たち」(テレビ東京系)では、東山魁夷(ひがしやまかいい)画伯「唐招提寺御影堂障壁画(床の間の絵及び襖絵全六十八面)」が取り上げられていました。この番組は、作家の一枚の作品(絵)にスポットを当てて、その一枚に塗り込められた秘密を深く追いかけることで、美の巨人たちの人間像を探っていく良質の番組で、私はよく見ています。東山魁夷は、私の大好きな風景画家で、自分でも白い馬シリーズの絵を集めたりしています。この唐招提寺の御影堂は、現在大規模な修復工事を行っていて(2021年春完成予定)、御影堂障壁画の現地拝観はかないません。私は今年の春に、唐招提寺にお参りして、この絵が捧げられた鑑真和上の像に手を合わせてきました。拝観が叶わないので、数年前から全国の美術館を巡って特別展示を行っていて、私は2016年に、太宰府「九州国立博物館」で拝観しています。描かれている圧倒的な風景はどれも幻想的で、ついつい見入ってしまうものばかりでした。日本海の荒波を描いた「濤声(とうせい)」は、本当に波の音が聞こえて来そうな位の臨場感がありました!⇒私の訪問記はコチラです

 この障壁画を描くために、かつて日本の原風景を求め8カ月にも及び本州全土を旅した東山魁夷画伯。旅を終えた東山画伯は、奈良・唐招提寺へ向かいました。そこで挑んだのが、長老に依頼を受けた、寺の開祖・鑑真和上に捧げる『山雲濤声(さんうんとうせいです。上段の間の霧に煙る「山雲」と、宸殿の間に波がさざめく「濤声」からなる巨大障壁画です。写生の旅では極寒の日本海を東山画伯特有の「群青」(東山ブルー)で表現していたのに、障壁画では穏やかな「緑青」の世界に変わっています。一体なぜ?さらに構図にもある秘密が…。そこには日本伝統の美が息づいていたのです。また「山雲」に描かれた唯一の生き物ホトトギスには、盲目の僧に美しき日本の風景を捧げるためのある仕掛けがしてありました!なぜホトトギスだったのか?風景画の巨匠が、絵に込めた狙いと新たなる挑戦に真正面から迫る良い番組でした。番組内では、この障壁画の引き手」の依頼を受けた若き匠の苦悩と奮闘ぶりも描かれていて、とても勉強になりました。私が太宰府で見た時には、この「引き手」にまでは鑑賞が及びませんでした(残念!)。今度見る機会があれば、ぜひじっくり味わいたいと思います(写真は番組HPより拝借)。

 番組では触れていませんでしたが、日本の山を深い霧で覆ったのも、東山画伯鑑真和上に対する思いです。霧は湿気から生まれるもの。湿気は肌で感じられるものですよね。湿潤な日本の風景美の中にも、盲目の鑑真への深い思いやりが込められています。

 渡り鳥のホトトギス。現在、日本ではあまり見られなくなっているようですね。昔はよく鳴き声を聞きましたが、最近は全く聞くことがなくなり、少し寂しい気持ちになりました。番組では鳴き声が響き渡り、すがすがしさを感じたことでした。東山画伯が、このホトトギスに込めた鑑真和上への思いにも感動したことでした。

 6回もの執念の渡航でようやく日本にたどりついた盲目の渡来僧・鑑真に、日本の山と海の原風景を捧げたいと描いたのがこの作品です。東山さんは、鑑真のために描くべき風景を探し求め、本州全土にある山と海を旅しています。しかも、8ヶ月のも長期に渡り。なぜ8ヶ月にも及んだのか?時は高度経済の末期頃、日本中に開発の手が伸び、人の手が入っていない山と海がなくなり始めていたんです。山を描こうにも送電線が走り、海を描こうにも、テトラポットと防波堤。東山さんはまさに執念で、鑑真に捧げるべく日本の貴重な原風景を見つけるんです。それはどの場所のどんな風景だったのか?当時の画伯の絵画制作の貴重な記録映像も流れていました。この番組を見てから、あの障壁画を鑑賞したかったですね。

 実は今、普段は奈良・唐招提寺にあるこの障壁画『山雲濤声』を、展覧会で見ることができるんです。生誕110年 東山魁夷展」京都国立近代美術館で、10月8日まで。東京・国立新美術館では、10月24日~12月3日まで開催です。お近くの方はぜひ見に行ってくださいね。きっとあの圧倒的な迫力にうちひしがれることでしょう。❤❤❤ 

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