「防人の詩」誕生秘話

 大好きなさだまさしさんの名曲「防人の詩」(さきもりのうた、1980年発表、12枚目のシングル)を、最近シンガーソング・ライターの琴音(ことね)さんがカバーしています。私はこの歌い手のことは全く知らなかったのですが、歌は実に上手いです。歌に合わせて、老いたバレーダンサーが踊る印象的なミュージック・ビデオが公開されています。

 コーラスに多重録音が用いられ、原曲が持つスケールの大きな世界観が、さらにダイナミックに壮大に表現されています。時をさかのぼるようにクライマックスへ向かって躍動していく映像で、独自の死生観を描いています。

 ご本人の コメントが発表されていました。

先日、年明けも早々新型コロナウイルスの感染拡大により開催中のツアーの再延期が決定し、あろう事か自分の19歳の誕生日にその悲報を発表するという事態になってしまいましたが、そんな二重苦を乗り越え、この度「防人の詩」をリリース致しました。
ツアーの中でも歌っていたので、お越し頂いた方の中には不思議に思われた方もいらっしゃったかもしれません。
この曲は、さだまさしさんの名曲「防人の詩」を現代風なアレンジでカバーさせて頂いたものです。
昨今の様々な風潮を取り入れた作品になったと思います。アレンジや声色の変化にも注目して頂ければ嬉しいです。

 さださんは、精霊流し」「暗い」無縁坂」「マザコン雨やどり」「軟弱関白宣言」「女性蔑視」と批判され叩かれ続けました。この防人の詩」では「右翼」「好戦的」「戦争を賛美している」と言われました。しあわせについて」「左翼」と真反対の批判を受けたこともあります。その他にも、いい子ぶっている」とか、無料コンサート夏・長崎」を始めた時には「選挙に出るのか!」と、さんざん叩かれました。よくもまあこれだけいろんなことを言われたものです〔笑〕。

 「防人の詩、この歌のどこが「戦争を賛美」なんでしょうかね?さださん自身は、「いまの緊迫した世界情勢の中で、日本という国を愛するたった一人の”人間”として『自分の中の万葉集』『自分の中の防人の歌』というつもりでつくりました」と述べています。「いさなとり 海や死にする 山や死にする 死ぬれこそ 海は潮干て 山は枯れすれ」(万葉集)という歌に触発されて作ったと言います。さださんは実によく文学を読んでおられることが、彼の作る詩の美しさに表れています。

 「防人の詩」は、『二百三高地』という東映の戦争映画で、しかも勝利した戦争の主題歌を歌ったことで「右翼的」だというレッテルを貼られました。歌もちゃんと聞かずに、「防人」というタイトルだけに反応して、戦争賛美」「好戦的な右翼思想だ」と短絡的に批判されたのでした。この歌のどこが「戦争を賛美」なんでしょうかね「本当に、ちゃんと聴いてくれたの?こんな反戦歌、他にないでしょう」と思ったさださんでした。さださん自身は、「いまの緊迫した世界情勢の中で、日本という国を愛するたった一人の“人間”として『自分の中の万葉集』『自分の中の防人の歌』というつもりでつくりました」と述べ、いわれのない批判だと思いつつも、これが伝わらないところでやっていてもしょうがない」と、あまりのひどさに同郷の文芸評論家・山本健吉先生に弱音を吐きます。僕なんか、たかが歌だと思っているんですが、人格まで非難されるんですね」― 山本先生は、いや、詩歌というのは、そういうものなんだよ。自分の人生観を賭けて歌を歌ってるわけだから、そういうことを言う人がいるのは当然のこと。ただ君は、もういなくなった人を歌うのが非常に上手だ。「精霊流し」も「無縁坂」にしても、あたかも亡き人を謳っているかのような、そんな印象を受ける。「みるくは風になった」も「防人の詩」にしてもそうだが、いなくなった人の歌を歌うのは、挽歌といって日本の詩歌の伝統であって神髄である。君は知ってか知らずか、心のどこかで日本の詩歌の本道をちゃんととらえている。それでいい。君はまちがっていないんだから、何を言われてもやりつづけなさい。ひるむ必要はない。詩歌に生きた人は、そんなことでひるんだ人は一人もいない」と勇気づけてくださったのです。それを聞いてさださんは、肚をくくります。

 曲の誕生由来はこうです(『やばい老人になろう やんちゃでちょうどいい』(PHP研究所、2017年)に詳しく出ています)。同映画の音楽監督の山本直純(やまもとなおずみ)さんが、同郷のさださんと交流があった縁で、さださんに主題歌の依頼がありました。さださんは映画の主題を知り、「二百三高地の何を描くんですか。要するに“勝った、万歳”を猫くんですか?」と尋ねます。それに対して山本さんは「そうじゃない。戦争の勝った負けた以外の人間の小さな営みを、ちゃんと浮き彫りにしていきたい。そういう映画なんだ」と返答しました。オファーを受けたさださんですが、なかなかか歌ができません。最後には、自身の主演映画『翔べイカロスの翼』の新潟のロケ現場に、山本直純さんの老け顔のマネージャー・斉藤さんが控え室に押しかけ、今日いただかないと私は帰れません」と、切羽詰まった表情で詰め寄られます。慌ててギターを抱えて曲作りに入りました。その場で1番だけ制作、譜面に起こす時間もなかったため、カセットテープに吹き込んでキーを指定して 手渡しました。その間15分です。やはり天才ですね。ありがとうございます。これで私、直純に殺されずにすみます斉藤さん。この映画は185分もの大作で、途中休憩になる前の死屍累々たる戦地で、あおい輝彦さんが血みどろになって呆然と地獄絵図の中を歩く、戦争のむごさ、悲惨さ、生命の尊さを問いかけるシーンがあります。この曲の長さに合わせて、このシーンを足したという秘話があります。♥♥♥

【追記】『「Pen+」【完全保存版】全部、さだ。』(1650円、A4版116頁、メディアハウス)が、1月28日に発売されました。私はアマゾンから当日に届けてもらいました。一冊全部さだまさしを特集したムック本で、さださんの歌作りの方法論や、今の時代への思いを語ったロング・インタビューをはじめ、著名人の愛聴リスト、新進気鋭の落語家との対談、全アルバム紹介などを網羅しています。表情豊かなカラー写真に多彩なテーマを盛り込んだ、隅から隅まで「さだまさし」を堪能できる、ファンには堪らない一冊となっています。「ワクワクする誌上コンサート」の開演です。来たる2月6日(土)には、2度に渡り延期となっていた「さだまさしコンサート~存在理由 ~Raison d’être~」島根県民会館で開催予定です。♦♦♦

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