「リトルボーイ」と「ファットマン」

 初めてイギリスを訪問した際に、各地の学校をいろいろと回らせてもらいました。ある小学校での風景です。子どもたちが世界平和について学習しており、教室にはいろいろな平和に関する資料が貼られていました。日本からやって来た私たち(中学校・高等学校教師)が教室の前に立ち、生徒からの質問を受けていきます。その中に「広島と長崎に落ちた原爆はどこがどのように違っていたのですか?」という質問がありました。私たちは原爆の種類について教えてもらったことも、勉強したこともありませんでした。答えに窮してしまいました。実に恥ずかしかった。世界で初めて核爆弾の被害にあった日本人がこれではいけないと思い、帰国してからずいぶん調べたことを思い出します。以来、広島・長崎を訪れる度に、平和公園で手を合わせて祈りを捧げてきました。

 今、8月9日は何の日か問われて、きちんと答えられる長崎の子供は、約3割だそうです。たった、3割ですよ。東日本大震災で2万人余りが犠牲になって、10年余りです。その節目に「震災の記憶の風化」が叫ばれもしました。原爆は76年も前の話ですが、長崎・広島で二十数万人が犠牲に、太平洋戦争全体で言えば、日本人全体の戦没者数は310万人とも言われます。しかしそれでも、記憶の継承は容易ではないのです。8月6日と8月9日だけでなく、記憶を新たにしなければなりません。

 それまで日本中で空襲をし、焼夷弾や模擬爆弾(パンプキン」)を落としていた延長線上に、広島長崎での原爆があります。「パンプキン」は長崎型原爆「ファットマン」とほぼ同一の形状を有し、重量もほぼ同一になるように調整された模擬爆弾です。原爆投下に備えた爆撃機乗員訓練のためと、「ファットマン」が投下され爆発するまでの弾道特性や慣性能率などの事前データを採取するための「模擬爆弾」として製作されました。そして、米国は広島に「リトルボーイ」、長崎に「ファットマン」という異なる原爆を投下しました。広島型は細長く、長崎型はその名の通り、ずんぐりとしている。二つの形状が異なるのは、内部構造が異なるためです。広島型は細長い筒の両端に核分裂に必要なウランを二つに分け、互いにぶつけながら核分裂の威力を最大限に引き出そうとしました。死者は11万8,661人でした。一方の長崎型は、中心部にプルトニウムを置き、全方向に配置した爆弾から一気に圧力をかけ、核分裂を起こし、長崎の上空で炸裂しました。爆弾の威力は広島型よりも若干高かったのですが、長崎市は起伏に富んだ地形で、平坦な広島市に比べて威力が減殺されました。死者は7万4,900人でした。

 「世界史を勉強していて、一つ発見したことがあるんです」と、私の大好きなシンガーソングライター・さだまさしさんが語ります。それは「平和が脅かされるときは、音楽が止められるとき」ということでした。「自由に自分の言葉で語り、歌う」ことは、平和の目印です。しかし有事がひたひたと迫ると、気づかぬ間に自由はからめ捕られてゆきます。それは今、「新型コロナウイルス感染症」という“有事”の中で、さださんをはじめとするクリエーターたち発信者が、今誰しもさらされている状況にも相通ずるものがあります。人と人が分断され、中には糧を失う人もいます。しかし、その声は届きません。「それで今年は意を決し、万全に万全を期してコンサートをスタートしました。来場するお客さんの“平和”も守らなくてはならないのだから、とても重い責任です。それでも、今だからこそ届けなくてはならない言葉があると思って」それは「平和を守るには、重い責任が伴う」ことも示唆していました。祈りを通じて思いをより強くする。分断を乗り越え、向かうべき方向に向かうために、やはり「言葉」は不可欠です。さだまさしさんの「祈り」という歌を聞いてみて下さい。

 長崎市海沿い長崎港の一角に、平和への切なる願いを発信する「ナガサキピースミュージアム(鉄筋コンクリート2階建て、広さ約80平方メートル)があります。さださんが中心となって建てたこの「ナガサキピースミュージアム」には、音符のモニュメント「宙(そら)へがあります。さださんが「何故、「五線に音符」がモチーフなのですか?」と尋ねると、設計された福田繁雄(ふくだしげお)先生は、平和じゃ無くなる時、真っ先に奪われるのは音楽だからだよ」と答えられました。♥♥♥

 

 

カテゴリー: 日々の日記 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中