最近気になっている英語の副詞に、insanelyがあります。英米の辞典や日本の英和辞典では、副詞を形容詞insaneの追い込み(~ly)でさらっと流すだけで、その意味や用法について、あまり詳しく記述してくれていません。ここら辺が現在の辞典の大きな課題だと私は思っています。副詞になると意外な意味や働きとなるものも結構あるので厄介なんです。insanelyには、(1)狂ったように(in an insane manner, in a way that suggests unsoundness or disorder of mind)と、(2)非常に、異常なくらいに(to a very extreme degree)の2つの意味があります。狂ったように→非常識に→ものすごく、と意味が発展してきました。元々は否定的な響きのある(1)の意味を、肯定的な意味(2)で用いるようになってきたのです(意味拡張)。crazily, madly, deadlyなどが類例として挙げられます。日本語では「やばい」などが相当するでしょう。
英米の辞典に挙げられた用例を吟味してみると、形容詞のjealousとの強い共起関係が観察されます。
Her boyfriend was insanely jealous. [MWALED] He is insanely jealous. [OALD] I would be insanely jealous if Bill left me for another woman.[CAAED, CALD] She gets insanely jealous if he so much as looks at another woman. [CALD] insanely jealous [MED, LDOCE]
この副詞は、Asahi Weeklyの7月4日号で田邉祐司先生が、「ハタと膝を打つ英語表現7」に、「意味拡張のinsanely」と題して取り上げ、この語とアップル社のスチーブ・ジョブズ氏との関連に触れておられました。
insanelyを有名にしたのはAppleの創始者の一人Steve Jobsだと言われています。彼は素晴らしい製品に出会った時に“Insanely great!”を連発した人で、Steve Jobs : Insanely Greatという題名の評伝があるほどです。ちなみに「クルマ命」の友人も「Jobs信者」で、Mac userです。インフルエンサーたるJobsが彼の言葉遣いにも影響を与えているのは間違いありません。
この田邉先生の連載は実に面白い。8月1日号では、“in a New York minute”という口語表現が取り上げられていました。オススメしておきますね。♥♥♥