坂本、サードへ その裏には門脇が

 9月7日のヤクルト戦。坂本勇人(さかもとはやと)の「5番・三塁」でのスタメンが場内に発表されると、球場全体が大きくどよめきました。2045試合と遊撃の歴代最多出場を誇る坂本勇人選手にとって、三塁のスタメンはプロ17年目で初めてのことです。これまで遊撃以外では一塁、二塁、DHでの出場しかありません。かねてから「ショートだから全試合出られないとか、ケガをしたとか絶対に言われたくない」と口にしてきました。故障に苦しんだ昨季も、指揮官から一塁手転向の打診もありましたが、断っています。慣れないポジションのため戸惑いもありそうですが、そこはショートでゴールデングラブ賞を5回も受賞した経験を持つ守備職人です。4回2アウト二塁のピンチで、ドミンゴ・サンタナの三塁線への痛烈な打球に飛びつき、華麗なスライディングキャッチを見せて自軍のピンチを救いました。5回には1アウト一塁の場面で、松本直樹のサードゴロを難なくさばき、ゲッツーを成立させています。守備でも軽快な動きを見せた坂本は打席でも躍動し、9回の第4打席でダメ押しとなる17号2ラン左翼スタンドに叩き込み、攻守にわたってチームを牽引しました。“坂本をサードで起用する”という選択肢が加わり、巨人としてはオーダーのバリエーションが格段に増えており、CS進出への起爆剤になりそうです。原監督は、「坂本が三塁線の当たり、痛烈な。パーンと逆シングルで取って、ふっと投げてワンバウンドで」と4回の守備に触れ、「ここら辺の身のこなしってセンスなんだろうな」と絶賛。守備面での違和感はありません。

 この時期に、坂本をサードでスタメン出場させたということは、原監督としてはシーズン終了までショートを門脇で固定する意向なのかもしれません。ドラフト4位の門脇の課題は打撃でした。プロの水に大分慣れてきて、打率が上向いており、4~6月は1割台だったものの、4月(.111)→5月(.190)→6月(.160)→7月(.283)→8月(.339)→9月(.344)と右肩上がりに上昇しており、打率も2割5分8厘、3本塁打、20打点まで上昇し大きな成長を見せています。9月9日(土)にはダメ押しのホームランまで放っています。9月10日(日)には、タイムリーを含む2安打。日に日に存在感を増しています。守備範囲の広さ、球際の強さ、送球の正確さなど、守備力に定評(109試合出場でわずか3失策)のあったルーキーが(盗塁10個と足も速いんです。新人の2ケタ盗塁は2010年の長野以来初)、ここに来てバッティングでも魅せる試合が増えてきました。原監督「やっぱり非常に強さを感じるよね。悔いを残さない勝負ができるというのかな。けれん味のない戦い方をするという点ではうちにいないタイプ」と高く評価しています。守備の負担が大きいショートからサードに移ったことで、坂本の打撃力がより安定する可能性もあります。実際、サード転向後4試合で、打率4割2分9厘、2本塁打と打ちまくっています。さらには、好調の門脇を固定するとなると、巨人らしい破壊力のある攻撃を何度も見られるかもしれませんね。

 元ヤクルトでNHK-BSの中継解説を務めた宮本慎也氏も、巨人の遊撃手・門脇を絶賛しています。六回、2死一塁でカリステが打った二遊間へのゴロをさばいたプレーに言及。「いいですね。門脇は丁寧にプレーする。こういう選手はどんどんうまくなる」と語りました。具体的には「今のも片手で捕る選手が多いが、門脇は体を持っていって、右手を添えてプレーする。彼は守備では1年目からできると思っていたが、チャンスをもらいながらいい経験ができている」と解説しました。門脇自身は、坂本「さすがですね、対応力は」と舌を巻きながらも、「まさかポジションが逆になるとは考えてなかったんで…」といったん間を置いて、「いつ勇人さんがショートに戻るか分からないですし、ここまでもらったチャンスを離さないと思って試合に臨んでいます」と表情を引き締めました。坂本門脇「体も強いし、けがしないで試合に出られるのは一番野球選手で大事。守備も本当に上手だと思うし、いい選手だなと思ってみている」と実力を認めています。

 この日は坂本が3戦連続「5番・三塁」でスタメン出場。宮本氏はご自身も遊撃から三塁に転向した経験を持っており、「口には出せないが、ショートをやってきて、違う所に移りなさいと言われた時は少し寂しさもありますし、チーム方針で仕方ないというのもあります。スッキリ、サードに行くという感じではみんなないとは思います」と代弁しました。遊撃からサード転向の難しさも語り、「(坂本も)やっぱりサードって不安だと思う。全く違う。(ポジションから)ピッチャーのボールが追えない。ショートだと視界が延長線上に入ってくるが、サードだと横目になる。サードはバッターの反応だけで動かなければいけなくなる」とし、「本当にサードの守備が分かったのは3年かかった」と振り返りました。坂本は初の三塁守備について「全然ね、遊撃と全く違うものでしたし、慣れるまでにすごい時間がかかりそうだなと思いますね」と戸惑いを隠せませんでした。「角度や距離感が全然違うので、慣れることは無理だなと思う。セーフティバントされたらどのタイミングでアウトになるか分からないし、バント処理も人生でやったことがない。ショートだったら考えなくても勝手にできていたけど、そこは難しい。怖さはありますね」とも。ちょっと前に原監督から「準備しておいてくれ」というのは言われていたようで、ノックで練習だけはやっていました。

 遊撃のポジションに並々ならぬこだわりを持った坂本に、これまでは配置転換の話題自体がチーム内ではタブー視されてきました。しかし、門脇のこれまでの守備の貢献度を見たら、坂本も納得せざるを得ませんでした。坂本自身はここ数年、ケガで離脱を繰り返してチームに迷惑をかけてきました。今のタイミングでしか三塁コンバートは受け入れることはなかったでしょう。門脇の驚異の成長が時計の針を一気に進め、一塁・岡本、三塁・坂本、遊撃・門脇の布陣を完成させました。坂本岡本の守備位置を動かした門脇、これは球団史に残る大事件です。♥♥♥

 自分のやるべきことをずっと明確にしてやってきた結果です。大学のときも一番最初に来てアップしていて。誰もいない状態でやりたくて、それがある意味こだわりかもしれないですね。午前10時練習開始だったら9時にグランドに来て、12時半からだったら11時半には来ます。

 準備では負けないと思います。その自信があるから試合に入った後にどうなってもいいや…となれます。プレッシャーは別に感じないですね。全然ないです。遊撃を離さないように結果を出し続けていかないといけないなと思います。(門脇談)

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