おいあくま

 大好きな巨人軍川相昌弘(かわいまさひろ)内野守備コーチ「バントの職人」の異名を持ち、犠打533個の世界最多記録を保持している「ダジャレ」好きの人格者です。彼の本を読んでいたら、日本プロ野球史上35年近い間 破られていない盗塁記録を持っている、世界の盗塁王・ 福本 豊(ふくもとゆたか)さんの講演で聞いた「おいあくま」という人生訓の話が出ていました。

 最近の若い世代の方だと福本豊さんを知らない方もいるんじゃないでしょうか。福本豊さんは阪急ブレーブスに所属していた元プロ野球選手で、「世界の盗塁王」とも呼ばれた俊足の選手でした。昭和44年、松下電器からドラフト7位で阪急に入団。2年目にレギュラーとなり、75盗塁で初めてタイトルを獲得。以来、13年連続盗塁王となり「1億円の足」と言われました。昭和47年には106盗塁で日本記録を樹立してMVPに選ばれました。昭和58年6月3日にルー・ブロックの持つ当時の大リーグ記録、通算938盗塁を破りました(その後1993年に、福本さんの世界記録はリッキー・ヘンダーソンに破られました)。走、攻、守三拍子そろった小さな大打者として、いずれも歴代1位の通算1065個の盗塁、449二塁打、115三塁打を記録しました。

 福本さんが現役を引退してもう30年以上が経過していますが、このシーズン106個の盗塁記録は現在も破られることがない前人未到の第記録と言われています。一塁に出塁すればノーヒットでも本塁に帰ってくることのできる足は本当に魅力的でした。最近はこういう足で魅せる選手がほとんどいませんね(2023年のパリーグ盗塁王記録は36個、セリーグは28個)。かつての巨人には、柴田 勲、松本 匡史、鈴木尚広といった快足選手がいました。福本さんは通算盗塁の世界記録を更新した際、「国民栄誉賞」を打診されると即辞退しました。「立ち小便もできなくなる」の言葉が知られるようになりましたが、まだまだ現役の時代に、戒めの中の自制の言葉に沿った行動であったことでしょう。

 そんな盗塁王として名を馳せた福本 豊さんは、自身の生き方として「おいあくま」という人生訓を持っているそうです。「おいあくま」とは、こるな(怒るな)・ばるな(威張るな)・せるな(焦るな)・さるな(腐るな)・ような(迷うな)この5つの頭文字を取った合言葉です。この言葉の出所は、旧住友銀行の元頭取であった堀田庄三さんが、部下に対して指導した時の言葉だそうです。福本さんは、先輩に教わったと言われています。

  • 怒るな:短気は損だよ

  • 威張るな:少し結果が出たからといって天狗になるな

  • 焦るな:結果が出なくても根気よくこなそう

  • 腐るな:人事を尽くして天命を待つ

  • 迷うな:一つのことに心を注ぐ

 調子がいい時にはついつい調子に乗り、そして調子が悪くなったとたん、焦り・迷う。どんな時も謙虚にコツコツと努力を積み重ねる。これが一番大事なことだということです。しかしそういう精神状態を保ち続けることは、とても大変だと思います。これとは逆に、「おこり、いばり、あせり、くさり、まよう」ばかり行っている上司がいたら、部下は、とても大変で「こんなんで、やってられるかい!」とちゃぶ台をひっくり返したい気分になると思います。自分の感情をそのままむき出しにすると、自分にも相手にもマイナスです。でも人間分かっていても、そのようになってしまうことが多いものです。夏目漱石『草枕』の冒頭、「智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい」分かりやすく日本語にしてみると、「よく頭を使ってうまく立ち回ろうとすると、『せこい』『ずるい』『要領が良いだけ』と言われてしまうし、感情に流されてしまうと反対にだまされたり、関わるべきでないことに関わってしまったりして損をしてしまう。じゃあ自分は自分らしく生きようと、好きなことを主張すると、人からひんしゅくを買うばかりになってしまう。私たちの住む人の世は窮屈で住みにくい」 明治時代の文豪・夏目漱石でも悩んでいました。現代に生きる私たちが悩むのも無理はありません。悩んだときは「おいあくま」を思い出したいものですね。

 あ、そうそう、この言葉の真逆のもので、「さあほとけ」という言葉がありますので挙げておきましょう。

わやかに

かるく

のぼのと

きめいて

んきょに

この言葉のように常にありたいものです。

 最近、卒業生と一緒に食事をしていて、いい話を聞きました。人生で大切にしたいもの、それは頭文字をとって「あいうえお」なんだそうです。愛、命、運、縁、恩、の5つです。なるほどね。♥♥♥

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