水原一平さん解雇!

 ビックリしました。「翔平の最高の相棒であり、親友」大リーグ、ドジャースは、大谷翔平選手の専属通訳を務める水原一平さんを解雇したことを明らかにしました。水原さんが違法賭博に関与したと伝え、「ロサンゼルス・タイムズ」は、水原さんが連邦捜査の対象となっている違法な「ブックメーカー」と呼ばれる賭け屋で賭けるために(スポーツベッティング)、大谷選手「巨額の窃盗被害」(Massive theft)を受けたとしています。大谷選手の口座からこのブックメーカーに対して少なくとも450万ドル、日本円でおよそ6億8,000万円が電信送金されていたとのことです。

 水原さんは、メジャーリーグで6年間大谷選手の通訳を務め、公私ともにあらゆる面でサポートを担ってきました。生活面、球場の送り迎えの運転手、キャッチボール相手、壁当てルーティンのサポート、投球やスイング強度の測定など、欠かせない練習パートナーでもありました。大谷選手からの信頼も厚く、家族同然とも言える関係を築いていました。開幕戦後のクラブハウスで、ドジャースのチームメートに対して、みずからが「ギャンブル依存症」であることを告白した上で、「すべて自分のせいだ」などと説明したということです。突然の疑惑です。一番信頼していた人物から裏切られた大谷選手のショックは計り知れないことでしょう。水原さんが周囲についたさまざまなウソが不確かな憶測を呼んでいます。

 この驚きのニュースを聞いて、私の頭に真っ先に浮かんだのは、当時作家収入ダントツのNo.1だった推理小説作家の故・西村京太郎先生がいつも色紙に書いておられた「人生は愛と友情と裏切りで成り立っている」「愛と友情と裏切りと これが人生だ」という言葉でした(写真下)。湯河原を訪問した際に、「「愛と友情」ならわかるのですが、そこに「裏切り」とある のは、トラウマのようなものがあるのか、それが作家としてのエネルギー 源になっているのではないかと。そのあたりはどうなの でしょう か?」という私の質問に答えて、西村先生「ミステリー だ からね(笑)」と答えられました。確かに、「人生は愛と友情である」と書い ても、ごくありきたりであまりインパクトはありません。西村先生のご経験 から、作品を書くときに「裏切り」を入れるということでしょうか?という質問に対しては、先生は次のようにお答えになりました。

 分の経験からです。親友が「矢島(本名)くんだけが 頼りだから」と言ってきたんですよね。そしたらそいつは全員に同じ手紙 を出していた。あれでがっくり来ちゃって、親友でもこんな ものかと。でも一人にだけ出したからって助けてくれないかもしれないから、僕だってやったかもしれ ない。そんなことがあって「裏切りで」と書きましたけれどもね。  ―日垣 隆『日本一有名な作家直撃・西村京太郎さん公開インタビュー』(2016年6月改訂版、Kindle版)

▲色紙を書く西村先生ご夫妻 先生は達筆でした!

 このお話をもうちょっと詳しく補足しておきましょうね。西村先生がいろいろと騙された経験のお話は、ジャーナリストの重田 玲(しげたれい)さんが西村先生にインタビューした『人生は愛と友情と、そして裏切りとでできている』(SUN POST、2015年)に数多く出てきます。バブルの頃に、京都東山に1億5000万円で買った家が、池の上に建っていた!(今でも持っておられます)、先生の作品を映画化したいと近寄ってきたプロデューサーを名乗る人物が、突然「あの原作はもともと私が書いたんだ」と言い出したとか、有名女優の名前を出して「よく知っているから」とか、プロデューサーの経験があるからとか、お金が絡むと、いろいろな人が先生の下に群がってきました。これが人生の現実です。

 「若いときの友達がいてね、役所時代の友だちなんだけど、彼は途中で役所を辞めちゃったんです。そして、彼から電話がきて、『友だちがいなくなっった』と。『親友は君だけだからなんとか助けてくれ』っていわれてね、お金を送ったりしていたんですよ。そしたら彼は誰にも『西村京太郎の親友だから』といっていたらしくて……」
 「お金持ちの作家さんが友だちだから、お金の都合はつくといったような…」
 「まぁ、よくある話と思ったけどね」
 「そういうときに相手を恨んだとかは?」
 「あんまり起きないね」
 「なんだか、達観されているような感じがします」
 「もともと、楽観主義だから(笑)」  (pp.112-113)

 私自身も、今までにずいぶん騙されたことがあります。J・スタインベックの短編「真珠」を苦労して訳した原稿を持ち逃げされたとか、母がお世話になった人から泣きつかれてお金を送ったら、返してもらえなかったとか(後日談があるのですが…)、教育関係者に「英語センター対策本」を大量に送っても、いくら請求してもそのまま代金を払ってもらえなかったりとか(何度もあります)、VISAカードから勝手にお金を引き出されていた等々。自宅には毎日のようにフィッシングメール(詐欺)が送りつけられます。アマゾンや銀行やネット会社やカード会社を語るものが多く届きます。この世の中にはどうやって人を騙してお金にしようかとしている輩がたくさんいるということです。人生は愛と友情と裏切りでできている」まさにその通りだなと感じます。上記のインタビュー本の帯には、騙されても裏切られても笑って許す。だけど忘れられないこともとありますね。これは、松本清張さんのことです(⇒詳しくはコチラをご覧ください)。私が、清張さんの小説や2時間ドラマを好きになれないのは、この話を読んだことも影響しているんです。

 今回話題となった「スポーツベッティング」は先進7カ国(G7)では、日本以外の全ての国で合法です。米国では連邦法「プロフェッショナル祖およびアマチュアスポーツ保護法」でネバダ州ラスベガスなど一部を除き違法とされてきましたが、2018年に最高裁が違憲判断を下し、ニュージャージー州が合法となりました。今では50州のうち38州で合法化されています。大谷選手のいるカリフォルニア州ではまだ違法なので、当局の捜査を受けているのです。

 『週刊ポスト』の記事で、水原さんの通訳としての年収は4,000万から6,000万円であると読んで驚いていたのですが、米メディアによれば年間約4,500万円~7,500万円ももらっていたといいます。これだけたくさんお金をもらっておきながら、賭博にのめりこんでしまったのでしょうか。生活費にも事欠いて家族や友人からも借金をしていたという報道もあります。水原さんはESPNのインタビューに「生活苦だった。(大谷の)ライフスタイルに合わせようと無理をしていたからだ」と回答したといいます。それが「ギャンブル依存症」に拍車をかけ、雇用主でもある大谷選手の口座から違法ブックメーカー(賭け屋)へ、多額の借金返済のために大金を送金する最悪の結果を招いてしまいました。さらに最近では、学歴詐称の問題まで出てきました。中学校3年生の英語の教科書(教育出版)に、「成功を支える人々」(Poeple Who Support Success)として大きく取り上げられるはずだった水原さんの記述も差し替えられそうです。

 大谷選手の会見後、アメリカの新聞を見ていると、日本と違って、「水原氏が大谷の口座にどのようにアクセスしたのか?」「大金が動いたのに金融機関から何の連絡も来なかったのか?」「6年も一緒にいてなぜ賭博に気づかなかったのか?」「秘密の暴露も、刺激的な告白も、謝罪があったわけでもない」「大谷が罰金を科されるとしたら、彼の評判が落ち、ワールドシリーズ制覇を目指すチームに水を差すことになる」と厳しいコメントが目立ち、日米報道の温度差を実感します。♠♠♠

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