恩知らずの毒蛇

 ある一人の情け深い旅人が、冬の山道をテクテクと旅していました。ふと道ばたを見ると、今にも凍え死にそうにしている一匹の瀕死のヘビがいました。可哀想に思った旅人は、ヘビをふところに入れてやって暖めてやりました。ヘビはようやく元気を取り戻してきましたが、元気が出ると同時に、ヘビはかま首を持ち上げ、やにわに旅人に噛みつきました。なんと、そいつは猛悪な毒ヘビだったのです。びっくりした旅人は、ヘビを大地に叩きつけながら、「この恩知らずめ!命を助けてやったオレに、なぜ食いつくんだ!」と、息も絶え絶えに叫びました。するとヘビは、これは心外だというような顔つきをして、「冗談言っちゃあいけません。私の本性は人間に食いつき、人間を苦しめることにあるんでさあ。それをいけないと言ったって、そりゃ、あんたが無理でさあ」と言い放ちました。出典は「イソップ物語」です。

 この親切な「旅人」を私たち選挙民、「ヘビ」を選挙候補者に喩えてみましょう。候補者は選挙の時には、さも見かけはあわれに、泣き言を並べて言葉巧みに私たち選挙民の同投票投票を求めます。しかしひとたび当選して元気になるや否や、掌を返したように彼らは公約を破り、私たち選挙民を裏切り、食らいつくことになります。裏金作りや立場・利益工作に血道をあげることになるのです。「この野郎、そんなはずではなかったぞ」といくら文句を言ってみたところで、彼らは「冗談言っちゃあいけません。オレたちの本性はあくどく金をもうけることなんでさあ。それをいけないと言ったって、そりゃお前さんたちが無理でさあ」とスゴまれるのがおちでありましょう。

 ここで選挙に関する面白いジョークがあります。選挙とかけて何と解く?―「飲食店の終夜営業」と解きます。そのこころは、「一ぱい食わすのはいいが、一ぱい飲ますのはよくない」というものです。終夜営業の店は食事はさせるが、お酒は飲ませないことになっています。一ぱい食わすのはいいが、一ぱい飲ますのはいけない。「選挙」もそうだというのです。いかにもうまい政見や公約を並べ立てて、選挙民に一ぱい食わせるのはいいが、お酒を飲ませて買収してはいけない、ということです〔笑〕。事ほどさように、政治家には政治に取り組む真摯な姿勢に欠ける人物が多すぎます。選挙の時はあれだけ平身低頭で懇願しておきながら、ひとたび当選してしまえば、ウソは平気でつく、口先だけの答弁に終始、情報は隠す、ルールは破る、利権に飛びつく、出世競争に血道をあげる、自分の利益のことしか考えない。選挙民のために誠実に取り組むヘビはいません。残念ながら、これが悲しい現実です。♥♥♥

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