あえて訳す

 日本経済新聞社(現・日経BP)より2011年に刊行され、惜しまれつつも絶版になった後、伝説の書としてSNS等で復刊を望まれてきた一冊が、13年の時を経て、アスクより、この度増補改訂版となって復刊されました。山本史郎・森田修『増補改訂版 英語力を鍛えたいなら、あえて訳す!』(アスク、2024年)です。英文の意味が本当に分かっているかどうか?多読、速読もいいのですが、正しく理解しているかどうかを確認するにはきちんと訳してみるしかありません。そう、訳すことこそ英語力を鍛えることなんです。『指輪物語』『赤毛のアン』などで知られる翻訳家にして東大教授の著者が贈る知的エクササイズが本書です。日本人が誤読しやすい英文を「クイズ形式」で出題しています。旧版より32ページの大増補が行われており、多数の新しい問題と、役に立つ「英語学習のおすすめ参考書」の章が追加されています。みなさんならどう訳しますか?クイズ形式で、英語を日本語に訳す「難しさ」と「楽しさ」を、ぜひ味わってみてください。

1.翻訳の重要性: 多読や速読など、英語を直接理解することも確かに重要ですが、翻訳を通じて文章の意味やニュアンスを深く正しく理解することができます。翻訳を行うことで、文法や語彙、表現方法を細かく分析し、確実に理解することができると述べられています。

2.具体的なエクササイズ: 書籍内には具体的な翻訳の練習問題が含まれており、読者が実際に翻訳を練習できるようになっています。これにより、自分の理解度を確認しながら、翻訳技術を磨くことができます。

3.「分かったつもり」にならないために: 英文を読み流すだけではなく、翻訳を通じて本当に理解できているかどうかを確認する重要性が強調されています。「分かったつもり」で終わらせずに、確実な理解を目指すことが英語力向上の鍵とされています。

 著者の山本史郎先生は、2021年から、約4年間Asahi Weekly(朝日新聞社)で(松江北高の図書館には毎週入れてもらっていたのですが、今はさっぱり読む生徒がいません)、隔週で単純な辞書や文法書からでは分からない英文読解の連載記事「英文読解それってどんな意味?」を書いておられ勉強になります。Your son is struggling in math.がどんな意味になるのか?a good mindとは一体どんな意味なのか分かりますか?そのまま訳したのでは理解できない英語が数多く解説されており、とても勉強になる本です。著者たちのこの本にかける思いは最近のAsahi Weekly, November 17, 2024に「英語本の著者に聞く」で特集記事が載っており、とても参考になります。正しく読むことを前提に、その一歩先の「訳す」という知的作業を目指した本です。

▲著者たちの思いが伝わってくるインタビュー

 辞書さえ引けば何とか意味ぐらいは分かる、「学校英文法の基礎知識」+「英和辞典」さえあれば、「英語の意味」を正しく理解できるかというと、決してそんな甘い世界ではありません。言語や文化の壁が存在するのです。「訳すことはできる」のに「意味を説明できない」という生徒を私は毎日見ていますが、これってつまり、「意味が分かっていない」ということなのですよね。She narrowed her eyes and stared at him.(彼女は目を細めて彼をじっと見た)と辞典に載っていましたが、これではこの英語を分かったことにはなりません。これは「軽蔑」や「嫌悪感」を示す表現ですから「眉をひそめた」ということなのです。私がよく話題に挙げるin fact「実は」の問題点も取り上げられており、共感して読みました。問題集や模擬試験でも常に「実は」「実際」となっており、気になっている表現です。辞書や文法書が教えてくれる単純な知識を越えて、そこからもう一歩踏み込んで、貪欲に英語の機微、さらには文化の領域にまで脚を踏み入れようとする好奇心が求められます。♥♥♥

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