なぜ昼間でも電車はライトをつける?

 長い間JRに乗っていますが、今日松江駅に入線してきたキハ47の車両を見て、不思議に思ったことがありました。朝8時過ぎだというのにライトを点けています。米子駅で待ち構えていた寝台特急「サンライズ出雲」も先頭車両にライトが点いています。乗り換えの0番線の境線鬼太郎列車の先頭列車にはライトが点いていました。そこで運転手さんに尋ねてみました。「国の規約で昼も夜も前も後も点けることに決まっています」との回答。私の聞きたいのはそこじゃないのになあ、と思いながら下車しました。博労町駅を出て行く車両の後方には赤色ランプが点灯していました。授業の冒頭でこの疑問を話したところ、終了後にこの方面に詳しい生徒が教えに来てくれました。

 列車のライト「列車標識」と呼ばれるものです。なぜ、列車は明るい時間帯でもライトを点けるのでしょうか?自動車を運転する時、ライトを点ける主な目的は「暗闇を照らして視界を確保する」ことですね。これに対して列車のライトですが、実はあれ、点灯させる目的は全く別です。列車のライトは前を照らすために点灯させているのではなく、列車標識」と呼ばれるものなのです。鉄道の運転業務では、「列車」という概念が存在します。「これこれの条件を満たさないと『列車』とは認められない」というものです。その、列車として成立するための条件の一つが「列車標識を表示すること」なのです。簡単に言えば、ライトを点灯させないと列車にならないのです。そして、列車たる条件を満たさないと、車両基地から出て営業列車などの任に就くことができません。だから列車は、昼間でもライトを点けているのです。人間に例えるなら身だしなみに相当すると言ってもよいでしょう。鉄道車両もそれと同様に、車両基地という“家”から“外出”するためには、身だしなみを整える必要があるのです。外出のための身だしなみを整えた状態の車両を「列車」と呼びます。その身だしなみの条件の一つが「列車標識の表示」、つまりライトを点灯させることなのです。ですから、列車がライトを点灯させている目的は人間風に言えば身だしなみのためであって、前を照らして視界を確保するためではありません。もちろん、ライトを点灯させれば前方は見やすくなりますが、それは直接の目的ではなくて副次的な効果なのですね。

     前部標識=白   後部標識=赤

 なお、列車標識は前・後の両方に表示しなければいけません。列車の前 = 進行方向最前部には「前部標識」という白色灯を表示する。列車の後ろ = お尻の部分には「後部標識」という赤色灯を表示する。これによって前後が識別できるわけです。

 鉄道運転規則第6章鉄道信号第4節第233条で書かれていますが、昼間は省略できるとされており、実際省略もされていました。では、なぜ昼間も点灯するようになったかと言うと、「事故防止」のためです。JR(特に東日本)では踏切事故が多発しました。そこで、事故防止の一環として列車の前照灯を昼間も点灯させることとして認識性を高めることにし、試行しました。その結果、踏切での事故件数が減ったので、本格的に導入され現在昼間でも前照灯を点灯させることになっています。なおこれは、JRだけでなく私鉄(民鉄)でも行われており、同様の効果があげられています。昼間の点灯により列車の接近を知らせることで、踏切や駅ホーム、保線工事、濃霧等において、列車との接触事故を防止するのが趣旨です。とくに警報機のない踏切では、列車の接近は線路上の台車音、走行時のモーター音、警笛等で注意喚起していましたが、それでも事故は発生してしまうことがあります。昼間点灯は、列車においても事故抑止に有効な方法です。いつ頃からこのことが広く波及したかは定かではありませんが、1990年台という説が多いようですね。

 私が最近読んだ『乗ってるだけじゃわからない鉄道の大疑問』(青春文庫、2025年)という面白い本には、新幹線が昼間でもヘッドライトを点灯させて走るわけが書いてありました。対向車や周囲の人に、少しでも早く自分の存在を知らせるためで、駅のホームに近づく時には、かなり減速しているので、あまり音がしません。そこで、ヘッドライトで照らして、ホームの人が列車の進入に気づきやすくなるようにして、危険を防いでいるのです。♥♥♥

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