THE EVOLUTION

▲重鎮ポール・ゴードン

 私はカード・マジックの中でも、ほんの数枚のカードのみを使って演じるジャンルの「パケット・トリック」が大好きです。使用する枚数が少ないだけに、それだけ衝撃度は高まりますからね。世界中の傑作パケット・トリックの収集が、私の「趣味」(まさに英語のhobbyですねコチラに詳しく解説しています)の一つでもあります(他にもいろいろな趣味を持っていますが……)。マジック・ショップにお邪魔して、まず最初にお尋ねするのが、「何か目新しいパケット作品はありませんか?」です。お金に糸目を付けずに〔笑〕 、世界中のマジック・ショップから片っ端から買い漁り、相当数の世界の傑作パケット・トリックが、私の手元には集まっています。老後の楽しみにこれらが全て、八幡家の中二階の絨毯の敷かれた「蔵」にどっさりと眠っているんです。ただ残念ながらまだ空き時間がなくて、入ってゆっくりすることはなかなかできないんですけどね。

 お洒落で、それでいて意外性・ストーリー性のあるパケット・トリックが、今日ご紹介する「THE EVOLUTION」です。作者は、イギリスの鬼才クリエーター・ポール・ゴードン(Paul Gordon)さんです。かつて、ドイツのカード・シャーク社から発売になった、Christian Schenkさんの「Metamorphosis」にヒントをもらって作られたことを、ゴードンさん自身が解説映像の中で告白しておられました(私はこの作品もカード・シャーク社から直接買い求めて、2組も持っていますが、このゴードンさんの演技・演出の方がはるかに説得力があり、印象的で好きです)。現在、パケット・トリックを作らせたら、アメリカの横綱はジョン・バノン(John Bannon)さん(“card god”と呼ばれています)、イギリスの横綱が、このポール・ゴードン(Paul Gordon)さん、というのが私の見立てです。ゴードンさんの数々の作品に付いてくるオリジナル・デザインカードは、少々値段は高いのですが、とってもカラフルで味があって大好きです。新作が出る度に、直接ご案内をいただいていて、買い集めて、もうかなりの作品が集まったような気がしています。今回の「THE EVOLUTION」も先日、最後に観客に全部カードを手渡せるエンド・クリーンの最新バージョンを作ったから、とご案内をいただきました(私の持っているカードでは手渡すことはできません)。この最新版も購入しなければいけませんね。

▲実にきれいな作りのカードです

 4枚のカラフルなイモムシが描かれた、きれいなカードを観客に示します。その中の1枚を裏向き(赤裏)にして、眠りにつかせてやります。すると2枚、3枚、4枚と、次々とカードが裏向き(赤裏)になっていきます。マジシャンは、「子どものイモムシが親ムシに習って、1匹ずつ眠りについたのだ」と説明します。こうして、4枚のカード全てが裏向きになって、眠りにつきました。さて、「ここでイモムシが目を覚ますと・・・表は何だったか覚えていますか?」と尋ねると、観客は当然のことながら「イモムシ!」と答えます。ここでカードを表向きにすると、なんとイモムシだった4枚全てのカードには、今にも飛び立ちそうな色とりどりの美しい蝶々の絵青・赤・黄・紫)が描かれているのです。イモムシが見事に成長して、美しい蝶になったのです!!とマジシャン。私が演じると、みなさんここでビックリ仰天されます。原案にはなかったのですが、ここでもう一度念のために、4枚の赤い裏を見せて、さらにもう一度表のカラフルな蝶4匹を見せると説得力が高まると思い、私はオリジナルでカウント(ジョーダン・カウント+エルムズレイ・カウント)を工夫してみました。

 使われるカードは、とっても格調高く、アーティスティックで古めかしいデザインのもので、実にきれいな仕上がりとなっています。ちょっとお値段は高いのですが、この滅茶苦茶きれいな作りのクラシック・カードと、観客の衝撃度(今までに私が披露した人たちは、みんなクライマックスのあまりの鮮やかさに、ビックリ仰天でした)を思えば代金は安いものです。私はいっぺんで気に入りました。ゴードンさんは、本当に天才クリエーターだと感じます。ここで使う技法といえば、基本技法のエルムズレイ・カウントアンダー・エルムズレイ・カウントの2つだけなんです。最近、米子往復の通勤電車の中では、こればっかり練習していました。まさに、“Practice makes perfect.”ですね。♠♣♥♦

▲ポール・ゴードンの原案のカード

 実は、上の作品には、その下地となった作品があります。1998年に、故・ニック・トロスト(Nick Trost)さんと故・アルド・コロンビニ(Aldo Colombini)さんのお二人のカード・マジック界の重鎮が絶賛した、イギリスのポール・ゴードン(Paul Gordon)さんの製作したパケット・トリック「Aurora Borealis」(オーロラ・ボロリアレス)です。これを激賞したお二人とも、今ではすでに故人となっておられますが、今から考えると、その「眼力の確かさ」には敬服します。

「これは素晴らしい。ポールの作品のうちで最高のものの一つで、これからも使い続けるだろう」(ニック・トロスト)

「ポール、これはただただ、素晴らしい。非常に巧妙だ。使える。常にこれを使うつもりだ」(アルド・コロンビニ)

 その昔、2001年に、数量限定で販売されましたが、すぐに売り切れてしまいました。カードの特性からか、再販されることはありませんでした。それが20年の歳月を経て、カードの品質を上げて再販が可能となりました!ポール・ゴードンさん自身がデザインした特別なオリジナル・カード(バイシクルタリホーブランドなどがモチーフとなっている)で演ずることができます。私はゴードンさんの作るパケット・トリックの数々が大好きで、かなりの量を購入しています。期待を裏切られたことはほとんどありません。新作が出る度に、直接案内をいただいているんです。通勤の米子行きの電車の中では、この作品だけでなく、ゴードンさんの「The Great Houdini Escape」「Smack In The Face Royal Flush」「JEEPERS CREEPERS」のハンドリングを何度も練習していました。練習しないと、すぐに手がなまってしまうんです。

 現象はこうです。裏面が黒いデザインの4枚のスペードのエースを使用します。まず4枚のスペードのエースを観客にはっきりと示します。1枚を裏返して数えると、2枚目以降のエースが次々と裏返って(黒色に)いきます。4枚とも黒色に裏返ってしまいました。続いて、今度は1枚を裏返して表向きにすると、2枚目以降のエースが全部表向きに変化してしまいます。ここで観客の観察力を確認するために(ゴードンさんはobservation test”(観察テスト)と呼んでおられました)、裏面の色を観客に尋ねます。観客は当然「黒」と答えますが、何と!カードを一枚ずつ確認すると、すべて異なるカラフルな色の裏面に変化しています。ラフ&スムーズ(r/s)加工などは一切使用していません。観客は、摩訶不思議な現象に驚きを隠せないでしょう!これがポール・ゴードン「オーロラ・ボロリアレス」です。今私はこの作品にはまっていて、1日に数十回練習を繰り返して腕を磨いています。使う技法は、マジックでは基礎的な技法のみで、アンダー・エルムズレイカウント、エルムズレイカウント、ダブルリフトです。私はこの作品をあまりにも気に入ったので、バイシクル製のピンク裏のカードを使って、一層カラフルな構成にして自前󠄂のパケットを構成してみました。♠♣♥♦

【後日談】 昨年、勝田ケ丘志学館のマジック好きの生徒に、上のイモムシの変身マジック「THE EVOLUTION」を披露して驚いてもらった数日後、通勤カバンの中をいくら探してもこれと「オーロラ・ボロリアレス」を入れていた両開きの黒いパケット・ケースが見つかりません。どこかに落としたのでしょうか?それならもう一度購入しようとネットを探してみますが、もうどこにも商品がありません。作者本人のポール・ゴードンさんのネットショップからも消えてしまっています。お気に入りの作品だっただけに「これは困ったぞ!!」もしかしたら電車の中で、他の書類を引っ張り出す際にこぼれ落ちたのかもしれないと思い、ダメ元で「JR西日本落とし物センター」に電話で問い合わせてみました。4月にも大事な書類を見つけてもらって大喜びしたことがありましたから。係の人にお尋ねすると、何と出雲駅の電車の中で見つかって出雲警察署(会計課)に回したとのこと。もう手に入らない貴重なパケット・トリックですので、危ないところでした。無事に帰ってきてひと安心です!!

【後後日談】 またやってしまいました!年末にこのカードを買い物袋にいれて、古志原まで温熱療法の治療に往復しました。お正月にこれを演じようと袋を確認してもどこにも見当たりません。「またか!」途中で立ち寄ったはずの「かつや」「松江市立図書館」「まるごう」で落とし物として届いていないか尋ねてみました。いずれも答えは「NO!」。あー、とうとうなくなってしまったか!あきらめるしかないか。もうこの作品手には入らないしなあ、と思って、明日からの授業の準備をしようと、通勤カバンの中身を全部取りだして整理しようとすると、ポロッと落ちてケースが出てきました。何だ、こんな所にあったのか!?今までに何度も中身を確認したつもりでしたが、底の方に埋もれていたみたいです。年を取ると、こんなポカが多くなってきました〔笑〕。老いるショックです。困ったもんです。♥♥♥

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