ブッククラブ

 米国には、20世紀初期から「ブッククラブ」という読書家たちの団体が存在します。広大な国ならではの悩み「本を読みたいが近所に本屋がない」を解消する画期的なシステムで、有料会員の元には毎月、団体が薦める本が送られてくるものでした。1926年に創業し、“ブッククラブのパイオニア”と呼ばれるのが「ブック・オブ・ザ・マンス・クラブ(Book Of the Month Club)」でした。「アメリカ国民に、最上の新刊書を届けよう」とのミッションに燃えたハリー・シェアマン(Harry Scherman)というコピーライターにより設立され、当初から4,000人以上もいたという会員は、毎月クラブが厳選した新刊本を郵送で受け取っていました。今日の話題は、この「ブッククラブ」です。

 20世紀半ばまで、アメリカ合衆国における本の流通事情は非常に劣悪なものでした。人口と書店との比率を見ると、1914年時点で2万8,000人あたり書店1軒、1930年ではさらに悪化して人口3万人当たり書店1軒でした。1931年時点で、全米の85%の地域には大型書店は存在せず、70%の地域では小型の書店すらなく、66.6%の地域ではいかなる種類の書店もありませんでした。つまりアメリカの総人口の32%が書店とは無縁の生活を強いられていたのです。「本を買って読もうにも、家の近くに本屋がない」という状況だったのでした。

  1887年にモントリオールで生まれ、名門フィラデルフィア高校を卒業、その後1907年に小説家を目指してニューヨークに出てきたものの、ハリー・シェアマン は、己の非才に気づき夢破れて、多少なりとも文才を生かせる職業として「J.Walter Thompson」という広告代理店に就職し、メールオーダーの広告担当者となります。商品を郵送するという手段で顧客に送り届ける仕組みを勉強するにつれ、「本をメールオーダーで販売してみたらどうか?」というアイデアと野心が彼の心の中に芽生えます。シェークスピアなどの袖珍本ビジネスで多少なりとも自信を得た彼は、1926年ニューヨーク市西40番街218にあったエレベーターの無いビルに数部屋を借りて事務所として「Book-of-the Month Club」なる団体を起ち上げ、クラブの会員になった顧客に、毎月1冊、クラブが選定した文学作品の良書を郵送で販売するという形のブッククラブ・ビジネスを開始します。このクラブの会員になれば、家に居ながらにして、最新・最良の本が届くのです。4,750名の顧客に対して優れた文学作品を郵送という手段を使って販売するという画期的な会員制ブッククラブが誕生したのでした。敷地から一歩も出ずに、本を郵便ポストで受け取れる。それだけでも革新的なことでしたが、メールオーダービジネスに付き物のある問題が生じてきました。クラブとしては会員に売ったつもりの本が、後から大量に返本されてきて、目論見通りの販売数が確保できないという問題です。そこで急遽クラブのルールを変更し、ニューズレターを使って翌月の選定本が何であるかを会員に事前通知して、特定の期日までに会員が自発的に断らない限り、その本の購入義務が発生する、という仕組みにしたのです。

 学生時代や教員に成り立ての頃は、私もこのブッククラブを利用していました。アメリカのハードカバー本は日本と比べて格段に高いので(当時、日本のハードカバー本は1,000円程度、アメリカのものはその3倍~5倍くらいしました)、新刊を手に入れるのにこの割安のクラブがとても便利だったんです。ただ当時は海外にお金を送金するのが面倒で(外国為替)、とても苦労はしましたが…。Doubleday Book ClubMystery Guildの会員になって、Ed McBainなどの新作ハードカバーを読んでいました。会員になると、最初に5冊無料で送られてくるといったサービスも付いており、事前に送られてくるリストから選んで最新作品を注文していました。その後、海外会員は認められなくなったということで、利用はできなくなりました。♥♥♥

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